第1,258話 「夢の発覚⑥」
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「くそっ! くそっ! くそっ!」
ヴァレンタイン王国の要のひとり、カルパンティエ公爵家当主レオナールは、さっさと夕食を済ませると、再び自分の書斎に閉じこもってしまった。
心配した妻レティシアが声をかけたが全く言葉を戻さなかった。
無性に、ひとりになりたかった。
家族も含め、誰とも話したくなかった。
先ほど娘婿のルウが訪ねて来たが追い返した。
どうやら妻が相手をしていたようであり、近々愛娘ジゼルと共に、再訪すると告げて来た。
しかしジゼルも兄ジェロームの味方をしているようだ。
どうせルウを巻き込んだ上で、自分を諫め、説得しに来るつもりだろう。
だから、ふたりが再訪して来ても絶対に会うつもりはない。
こんなに「いらいら」するのは、次期当主の自覚ゼロ、わがまま勝手な息子の行動が原因だ。
当然、厳しく詰問した。
にらみつけた。
しかし息子は反省するどころか、完全に開き直った。
「父上! 義務を果たさず、権利のみを主張するのは愚か者です。しかし私は王都騎士となり、カルパンティエの当主となるべく様々なスキルも習得すべく、日々研鑽を積んで来ました」
「何ぃ!」
「私は職務を勝手に放り出すと言っておりません! 騎士生活を全うし、跡を継ぐ良き後輩を育てた上で引退すると申し上げているのです! それが自分の息子であれば尚更良い。どこがいけないと言うのですか」
「ふざけるな! お前は王国軍を率いて行く立場なのだ! 未来永劫、それは死ぬまで変わらん!」
「未来永劫、死ぬまで? 冗談じゃない! 心が燃え尽き、身体が錆びついてもですか!」
「ああ、心身がボロボロになっても騎士を全うする! 他は知らぬ! だが! それがカルパンティエ家に生まれた者の定めだ! 生き様だ!」
「父上! そういうのは下手をすれば老害と呼ばれるのです」
「へらず口を叩くな! 馬鹿者ぉ!!!」
くそ生意気な物言いに……
凄まじい怒りの感情がとめどなく湧いて来る。
ふざけるなと思い、口の中での罵りも止まらない。
上級貴族らしからぬ下品な言葉の連発である。
……ジェロームは初めて生まれた子供だった。
妻よりも自分に顔立ちが似ていて嬉しかった。
幼い頃は武道にひたむきで、且つ従順。
とても可愛かった。
だから愛をいっぱい注いだ。
やれる事は全てしてやった。
不自由はさせていないはずだ。
シモーヌという、美しく健康な良き伴侶も得た。
きっとシモーヌは、元気で丈夫な子を産んでくれるだろう。
全てが順風満帆のはずだった。
それなのに……騎士を引退!?
菓子職人になるだとぉ!?
そんな事はさせない。
絶対にさせない!!
カルパンティエ家嫡男として、ジェロームには決定済みの行くべき道がある。
騎士を引退したら?
最前線には立たないまでも、責任ある王国軍統括として、10万余の大軍を動かす大将となるのに決まっている。
今の自分の立場でもある。
それでこそ名門、誇り高き貴族武家カルパンティエの名を継ぐ者なのだ。
歴代の当主が歩んで来た道なのだ!
ジェロームめ!
お前にはそれがどうして分らんのだ!
今日はもう寝る!
ベッドへ入ったレオナールだが……
中々、寝付けなかった。
しかし精神的に消耗していたのか、やがて眠りへ落ちたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
レオナールは夢を見ていた。
久々に見る夢である。
今、自分が居るのは、見渡す限りの緑濃い大草原である。
ところどころに、大小の森が点在していた。
周囲には誰も居ない。
たったひとりのようだ。
夢の中でもひとりか……
まあ、ちょうど良いだろう。
苦笑したレオナールが、目の前の森を見れば……
木々には、色鮮やかな果実が実っていて、この土地がとても豊かである事を示している。
見上げる空には、雲が全く無い。
今にも、吸い込まれそうな紺碧の大空だ。
吹く大気は清々しく、身も心も軽くなる……
何というリアルな夢だろう。
これは楽園と呼んでも過言ではない地だ。
そして、このように夢だと自分で分かる夢……
自覚する夢、これが明晰夢か……
まあ、良い。
息子のせいで心が荒んでいた。
夢の中でもひとりとは幸い。
心癒され、休まるこの場所ならば……
興奮し、高まる気持ちを静め、落ち着いて考える事が可能だろう。
…………………
レオナールはしばらく深呼吸する。
ようやく心が安らかになって来た。
まずジェロームの処遇だが……
奴は勘当する。
このまま考えを曲げぬならば。
家から放り出してやる。
それは変わらない。
おっ!
そうだ!
レオナールは、はたと手を叩いた。
良い事を思いついた。
ジェロームの代わりに娘婿のルウを!
大破壊を収束させたルウを騎士に仕立て、カルパンティエ家の跡を継がせるというのはどうか。
ジゼルともども一生懸命に説得すれば、応じてくれるかもしれない。
加えて、ルウに好意的な宰相のフィリップ様にもお力添えして頂こう。
うんうん、他にも何か妙案がないか、じっくりと検討しようか。
ここでレオナールは改めて思い出す。
今夜は妻は傍に居ない。
自分は執務室隣接の仮眠部屋にたったひとりで寝ているはず。
部屋の扉には鍵をかけた。
誰も入っては来れない。
部屋は防音もばっちりだ。
だから……気分転換だ。
リフレッシュもするとしよう。
良い機会だ。
誰にも秘密にしている大好きな歌を……
この世界で思い切り、歌ってやれ!
もしも寝言となっても、誰にも聞かれないだろう。
「にやっ」と笑ったレオナールは大きく深呼吸をした。
そして……歌い出した。
歌っているのは、ヴァレンタイン王国に古くから伝わる勇ましい軍歌である。
意外と言ったら失礼だが……
結構な美声であった。
レティシアの言った通りである。
「気持ちいいな!」
思わず気持ちが口に出た。
次は……
一度も人前で歌った事がない歌。
屋敷に呼んだ吟遊詩人が歌っていた建国の祖バートクリード様の英雄叙事詩だ。
一発で気に入った歌だ。
レオナールは再び、歌い始めた。
そして気持ち良く歌い切った。
「ああ、本当に気持ち良いな!」
レオナールが再び気持ちを吐露した瞬間。
誰も居ないはずの背後で「ぱちぱちぱち」と拍手が響いた。
そして誰かの声も。
「おお、素晴らしい歌声だ!」
聞き覚えのある声である。
振り向いたレオナールの視界には、拍手をしたらしい声の主たるひとりの老齢の男が捉えられた。
見覚えのある相手であった。
いつもよりずっと簡素な法衣姿で草原に立っている。
レオナールは仰天した。
思い切り言葉を噛んでしまう。
「あ、あ、貴方はぁっ!? す、す、枢機卿様っ!!」
そう……
レオナールのリアルな夢、明晰夢に現れたのは……
枢機卿のアンドレ・ブレヴァルであったのだ。
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