第1,250話 「専門科目授業再び⑥」
ルウが召喚した古の戦乙女アルヴィトルは、オレリーと真っすぐに対峙していた。
「ふむ……オレリー、私が見るに、お前は中々の術者だ。気に入ったぞ」
「ありがとうございます! つきましては、アルヴィトル様にひとつお願いがございます」
「何? 私にひとつ願いとな……申すが良い」
「はい、今は私が代表として、アルヴィトル様とやりとりをしていますが、本来私達は4名で、ひとつのチームです」
「チーム? それはどういう意味なのだ? オレリー、お前は何が言いたい?」
「はい、アルヴィトル様。チームとは協調的な集団、グループです。全員で力を合わせ、目標完遂を目指します」
「ふむ……全員が合力して目標を完遂か」
「はい! おっしゃる通りです。それゆえ、私以外にも、アルヴィトル様と会話のやりとりを希望致します。私同様、不慣れな者達ですが、素質は素晴らしいものがあります」
「成る程。お前以外にも……私がそのひな鳥達3名の相手をしろという事か?」
「はい、ぜひお願い致します」
「ふむ」
「いかがでしょう? それがアルヴィトル様と、我が師ルウとの約定だとお聞きしておりましたが」
オレリーは大人しい性格だが芯も強い。
実は押しも強い。
このアルヴィトルとのやりとりも、一見、丁寧に頼んでいるように見えて、
強引さも兼ね備えていたのだ。
アルヴィトルは「ふっ」と笑う。
苦笑という趣きだが、肯定の波動も感じられた。
ここが勝負どころ!
と見たオレリーは、きっぱりと押し迫る。
「ぜひ! ぜひお願い致します!」
「良い! オレリーが望むのならば、その3名とも話そう。前に一歩出るが良い」
追い詰められ、行き場のない自分へ、ライバルたるオレリーが「橋を架けて」くれた。
マノンはふと東方のことわざを思い出す。
敵に塩を送る……か。
オレリーさん、ひとつ借り、ですわね!
そして、貴女とアルヴィトルのやりとり、しっかり見せて貰いました。
参考にさせて頂きますわ。
マノンは「ごくり」と唾を呑み込むと、一歩前に出た。
一礼する。
「マノン・カルリエです。……アルヴィトル様! 宜しくお願い致します」
続いて、ジョゼフィーヌも一歩踏み出した。
一礼する。
彼女もマノンと同じ事を考えているようだ。
「ジョゼフィーヌ・ギャロワです。アルヴィトル様! 宜しくお願い致します」
そしてリーリャも踏み出し、一礼する。
「リーリャ・アレフィエフです。アルヴィトル様! 宜しくお願い致します」
オレリーの導きにより、3名も同じポジションに着く事が出来た。
その様子を他の受講生は息を呑んで、見守っていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一歩出て、名乗ったマノン達3名を加えた、魔法女子学園の生徒都合4名……
アルヴィトルはオレリー達を改めて見回した。
「ふむ……オレリー、マノン、ジョゼフィーヌ、そしてリーリャ。4名のひな鳥達よ。お前達は、このアルヴィトルに何を望む」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
唐突に聞かれ、4名は言葉に詰まってしまった。
何を望むとは?
何とはどういえば良いのか?
いつも用事を頼む使い魔であれば、気軽に雑用を頼む事が出来る。
しかし高位たる存在のアルヴィトルへ、お使いやメッセンジャーなど頼めない。
もしもそんな事を願えば、「無礼者」と一喝されるだろう。
また上級魔法使いとしての巨大な魔力とか、
王宮魔法使いの地位とか……
おとぎばなしに出て来るような望みなど言えるわけもない。
ちなみに「素敵な彼氏が欲しい」というのもナシ。
既に4名はルウ以外、他の男性など眼中になく、望みもしない。
このままではまずい。
それだけは、はっきりしていた。
ルウが出した
「まだまだアルヴィトルは不機嫌だ。そこでお前達がいくつかの班に分かれ、彼女が上機嫌になるよう説得して欲しい」
という課題もクリアー不可能が確定してしまう。
どうしたら、どうしたら良い!?
かと言って、どこかのゲームのように『パス』も出来ない。
相変わらず言葉を発さず、無言のオレリー達。
焦燥感がにじみ出ていた。
答えに詰まったオレリー達4名を見て、アルヴィトルの表情がどんどん険しくなっていったからだ。
案の定、突き放すようなコメントが飛び出した。
「ひな鳥ども、どうした? 私に何も望まぬなら、次のひな鳥達と交代せよ。私はそこまで暇ではない!」
何かが、何かが出かかっている。
オレリーは必死に記憶を手繰った。
確か、以前ルウが言っていた。
召喚魔法の意義に、鍵がある!
そんな気がするのだ。
しかし無情にも時間は刻一刻と過ぎて行く。
いくらオレリーを気に入ったからといい、マノン達を参加させる以上のわがままはきかなかった。
「タイムリミットだ! これ以上ノーコメントならば、即刻他のひな鳥と交代せよ!」
きっぱりと言い放つアルヴィトルの前で……
オレリーは心の片隅に埋もれた記憶を呼び覚まそうと、必死になっていたのであった。
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