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第1,249話 「専門科目授業再び⑤」

 ルウとアルヴィトル、そしてオレリー、マノン、ジョゼフィーヌ、リーリャの4人は真っ向から対峙した。


 『万が一』の可能性は皆無ではなかった。

 受講する生徒達の身に及ぶリスクはゼロとはいえないのだ。

 それゆえ、アルヴィトルを召喚したルウは、念の為、彼女の傍らに立つ。


 だが、ルウに心配や懸念の色はない。

 いつものように穏やかに微笑んでいた。

 そんなルウを見て、アルヴィトルは顔をしかめ、肩をすくめた。


「ふん、ルウよ。お前ならばともかく、未熟なひな鳥どもの相手などつまらん。だが約束は約束だ。私は一旦交わした取り決めを理由もなく反故になどしない」


 鼻を鳴らしたアルヴィトルは、改めてオレリー達を注視する。


「ふむ……誰から来る。私は誰でも構わぬぞ」


 オレリー、マノン、ジョゼフィーヌ、リーリャへ凄まじい圧力が襲う。

 マノン以外の4人はアルヴィトルと同じくらいの魔族と相対した事はある。

 実際、ジョゼフィーヌとリーリャの使い魔プラティナとクッカは、使い魔には不適格なほど、真逆の存在である。

 ふたりが臆せず接する事が可能なのは、しっかりと結ばれた心の絆が高位の魔族に対する怖れを凌駕していたからだ。


 しかし、アルヴィトルとは4人の誰もが心を通わせた事など無い。

 ルウが召喚したのを遠目で見ただけだ。

 それも、随分時間が経っている。


 さてさて!

 このような時、猛烈なライバル意識を持つマノンが進み出ると思われた。

 彼女は常にオレリーに先んじようとしているのだから。


 だが、マノンは両こぶしを握り締めたまま、動かない。

 良く見れば彼女の拳は「ぶるぶる」震えていた。

 どうやら、恐怖から身体がすくみ動けないようだ。


 マノンだけではなかった。

 ジョゼフィーヌもリーリャも身体が強張っていた。

 無言で拳を握りしめ、ただただアルヴィトルを見つめている。


「ふむ、どうやらまず、リーダーのお前と話す事となりそうだ」


 アルヴィトルがそう言い、視線を向けたのは……

 やはりオレリーであった。


 念の為、ルウは生徒達の相手をする了解をアルヴィトルから得ているが、生徒各自の詳しい説明はしていない。

 しかしアルヴィトルはひと目でオレリーの術者としての『格』を見抜いたのだ。


 一方、指名されたオレリーの顔は少し蒼ざめていた。

 だが、オレリーは軽く息を吐いた後、柔らかく微笑み、ゆっくりと更に一歩を踏み出したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 オレリーが改めて見ても、アルヴィトルは美しい。

 さらさらの金髪、そして宝石のように輝く碧眼を持っている。


「おい、ひな鳥。まずは名乗れ。話はそれからだ」


「オ、オレリー・ボウです」


「成る程……現在の名は違うと思うが……まあ良い。お前は中々の術者だ」


「ありがとうございます」


 アルヴィトルは「ちら」とルウを見た。

 オレリーの『素性』や『ルウとの関係』を瞬時に見抜いたようだ。


 しかしここで明かすのは野暮だと思ったらしい。

 何も追及しなかった。

 と、ここでアルヴィトルは、いきなり無遠慮にオレリーの顔を見た。

 少し不快の色が射している。


「おい、何故、意味もなく笑っている? いや、……意味がある笑いだな? 何故だ?」


 低くドスの利いたアルヴィトルの声だが、オレリーは臆さなかった。

 軽く頭を下げ、微笑む理由を告げる。


「申しわけありません。アルヴィトル、貴女がとても近しく感じたのです」


 オレリーの答えを聞いたアルヴィトルはいぶかしげな顔付きである。


「ふむ、近しく感じただと? 何故だ? オレリーとやら。私とお前は2度しか会っていない。それも言葉を交わすのは初めてのはずだ」


「ええ、仰る通り、お会いするのは2度目、お話しするのは初めてです」


「うむ、……分かったぞ。どうやらお前の近しい者を、私に重ねているな?」


 アルヴィトルは魂から発する魔力波オーラに含まれる心の波動を読む。

 ルウから同じく魔導拳による心の波動を読む技を教授されているオレリーは、

 そう確信した。


「はい、その人は私の大好きな人で、良き先輩でもあります」


「大好きな人か……ふむ……それはルウではないな」


「はい! ルウ先生は大好きです。でもその人は別人です」

 

 マノンだけは、首を傾げていた。

 

 だが同じく、魔導拳を教授されているジョゼフィーヌもリーリャも……

 オレリーとアルヴィトルの会話を聞き、様子を見て、同じ事を気付いていた。


 そしてオレリーがアルヴィトルを近しい誰に重ねているかも見当がついていたのだ。

 アルヴィトルは、再び顔をしかめる。


「ふむ、誰かに似ているという話など、私には不快だ」


「申しわけありません。……つい」


「ふむ、私には分かる。お前がその者を敬い慕う気持ちに偽りはない。だから……今回に限り、失言を許そう」


「ありがとうございます」


「うむ、その者に良く言っておけ。畏れ多くもこの戦乙女アルヴィトルに似ているとお前に思われたのだ、心から喜べ……とな」


「はい! 良く伝えておきます!」


 オレリーが元気良く返事をした瞬間。

 学園の図書室で勉強をしていた『金髪碧眼』の戦乙女ジゼルは、大きなくしゃみをしていたのであった。

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