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第1,241話 「受験生3人」

「今日も良い天気だ」

「本当に」

「全くだね」


 3人の若く美しい女子が復興の槌音があちこちで響く王都の街中を歩いていた。

 ルウの妻達、ジゼル、ナディア、そしてラウラの3人である。

 王都の書店通りへ、勉強用の魔導書を探しに行った帰り道であった。


 ジゼル、ナディアは親友同士だから分かるとして、もうひとりは少しだけ意外な人物である。

 

 そのひとりとは、ラウラ・ブランデル……旧姓ラウラ・ハンゼルカ。

 かつてのリーリャの師で、元ロドニア王国王宮魔法使いである。


 しかし!

 3人が一緒に居るのは、意外でも不思議でもなかった。

 実は……全員が魔法大学の受験生なのである。


 未曽有の災厄『大破壊』が発生したが、既に王都は復興へ向かっていた。

 普段の生活も落着き、3人は受験勉強を再開したのである。


 但し、受験勉強とはいっても3人は一般試験を受けない。


 学年首席のジゼルと次席のナディアは魔法女子学園から成績優秀者として、

 またラウラもロドニア王宮魔法使いという前職が認められ、魔法大学への推薦入学が決まっていた。


 それゆえに各自が将来を見据え、専門分野へ特化した勉強に重きを置いて学んでいる。


 ジゼルは幼い頃からの夢、王都騎士からの大転換、教師の道を歩む。

 ルウに憧れているうちに自分の本質、人の面倒を見て育てるのが好きだと気付いたからである。

 ナディアは希望を変えず、考古学者への道を目指す。

 ルウとの出会い、バルバトスの魔道具店記憶 ( メモリア )でのアルバイト、

 加えて、エドモン・ドゥメールの三男ケヴィンへの師事で幼い頃からの夢はますます加速した。

 そしてラウラは、故国ロドニアに創設される魔法学校のトップを目指す目標を立てている。


 と、その時。

 ジゼルが「はいっ」と手を挙げた。


「ラウラ姉、ナディア、時間はあるか」


「何?」

「何だい、ジゼル」


「うむ、たまには3人でお茶でも飲んでいかないか? 金糸雀キャネーリで」


「大が付く賛成!」

「でも 金糸雀キャネーリなら、お茶だけじゃすまないでしょ?」


 念の為、金糸雀キャネーリは菓子好きの間では、王都ナンバーワンと言われる菓子店である。

 特に焼き菓子が美味しいと評判。

 小さいながらカフェも併設されている。

 幸い大破壊の害を受けていなかった。


「はははは、見抜いてたか、ナディア」


「当たり前! 君の性癖なんてお見通し!」


 良くケンカはするが、ぴったり息の合ったジゼルとナディア。

 そんなふたりを、ラウラは羨ましそうに見つめていた。


 このような時、良く気が利くのがナディアである。

 ちょっとだけたそがれているラウラの手を掴む。


「ほら! ラウラ姉、行こ!」


「うわ、何、ナディア」


 驚いたラウラだが、顔は笑っていた。

 そして返す手で? ナディアはジゼルの手も掴む。


「ははは、ジゼルも!」


 対して、しかめっ面のジゼルだが、こちらも嬉しそうである。


「むう、子供みたいな女だ」


「ふふ、君にだけは言われたくないよ。さあ行こう」


「うふふふ」

「にゃにおう!」


 ナディアの物言いに思わず笑うラウラ、怒るジゼル。

 手をつないだ好対照のふたりを引っ張り、ナディアは歩きだしたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 金糸雀キャネーリカフェ……

 ジゼル、ナディア、そしてラウラの3人は、大きな窓から通りが見える特等席に座っていた。

 カフェでも一番人気の席である。


「ジゼル、この席……」


「ああ、私の名で予約済みだ」


「え? 予約?」


「当たり前だ。こんなベスポジ席、予約なしで座れるわけがなかろう」


「君って、最初から?」


「ははは、どうして予約をしたか、すぐに分かる」


 ジゼルの言葉通りであった。

 実は……

 セットメニューのオーダーを任せろと主張したジゼルにOKを出した為、

 どのような焼き菓子が運ばれて来るのか、ナディアとラウラは知らなかったのだ。


 はたして、運ばれて来たのは……


「わお!」

「これは!」


「ふふふふふ、どうだ! 今日から限定発売の新作焼き菓子だ。兄上から聞いて前評判が高いというマル秘情報を得たから、席ごと予約しておいたのだ」


 ナディアもラウラも甘いモノには目がない女子である。

 名店金糸雀(キャネーリ)の新作なら、尚更だ。


 熱い紅茶をすすり、新作の焼き菓子を食べたら、女子3人は破顔する。


「美味しい!」

「美味いよ!」


「最高……だな」


 ……やがて、焼き菓子を食べ終わり、紅茶のお代わりが運ばれて来た。


「美味かったか、ラウラ姉」


「ジゼル、ありがとう!」


「うむ、ところでねぇにひと言言いたい」


「何?」


「いろいろ事情やしがらみはあると思う。だが自分の人生だ。アドバイスは参考になるが、最後に決めるのは自分だ。以上」


 ジゼルは教師を志すにあたり、武家たる実家のカルパンティエ家から、反対があったという。

 何故、騎士にならないのかと。


 そんなジゼルはラウラの本音を見抜いていた。


 もしもロドニア魔法学校へ赴任する為に帰国すれば……

 ギルドマスターを務め、官舎に住むミンミのように、確実に別居婚となる。

 それもひとつの生き方ではある。


 しかしラウラの本音は……

 愛するルウと、大切な家族、仲間と離れたくないのだ。


「……そうね。その通りだわ」


「うん、ラウラ姉。ジゼルの言う通りさ。じっくり考えると良いよ。まだ時間はあるから」


 ナディアもふたりの気持ちを察し、フォローしてくれた。

 そんなふたりの気遣いが嬉しい。


 笑顔のラウラは、手を挙げ、更に3人分の焼き菓子お代わりも頼んだのであった。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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