表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1239/1391

第1,239話 「今度は私達が!」

 未曽有の災厄、『大破壊』の収束後……

 ヴァレンタイン王国王都セントヘレナは早くも復興への道を歩み始めた。

 

 収束直後のある日、王都商業ギルドのマスター、マチルド・ブイクスから、

 任意で緊急招集がかかった。

 

 招集を受けたのは王都で売り上げ100位までの事業主達である。


 店舗や従業員が大きな被害を受け、営業不可能な商会、商店の主は参加出来なかったが……キングスレー商会、ブシェ商会はマチルドの招集に応えた。


 キングスレー商会王都支店長マルコ・フォンティは、先日婚約したばかりの魔法女子学園教師リリアーヌ・ブリュレを伴い……

 またブシェ商会会頭アルマン・ブシェに同行した愛娘のアンナも、これまた婚約したジョルジュ・ドゥメールと共に会合に臨んでいた。


 マルコとリリアーヌも、アンナとジョルジュも、『商人』として人生の新たな道へ踏み出そうとしていたのである。


 さてさて!

 商会会頭や幹部、商店主達参加者の集合場所は商業ギルドの大会議室だ。


 マスターのマチルドは参集した事業主達の前で、高らかに言い放つ。


「10年前の大破壊と同じく……今回も起こった邪竜襲来という未曽有の災厄において王国の騎士、兵士の皆様が王都防衛の為、命を懸けました。今度は我々商人が身体を張る番です」


 マチルドの話は、王都セントヘレナ復興に向けての様々な指示、

 及びそれに伴う情報提供であった。


 一般的に事業主達の経営規模、取り扱い商品は多岐にわたる。


 キングスレー商会のようにオールラウンドで数多な商品を取り扱う大手の商会とは違い、一般の中小の商会、商店は、何かに特化した商品展開を生業なりわいとしていた。


 しかし、今回は非常時である。

 得手の商品だけではなく、普段扱わない商品も対応し、王都市民の支えとなるようにと、マチルドから話が出ていた。


 また、市民が必要とする食料品を主にした指定物資の取り引きに関しては、税金にて補填されるので、必ず廉価にて販売するようにとの指示も出されたのである。


 ……1時間後、マチルドの話が終わった。


「あれ? リリアーヌ先生じゃないですか?」


 マルコと共に立ち上がり、退出しようとしたリリアーヌを、

 聞き覚えのある声が呼び止めた。


 声のした方をリリアーヌが見やれば、2年C組のアンナ・ブシェが恰幅の良い中年紳士、そしてアンナと同年代らしき少年と立っていた。


「えっと、アンナさん、貴女はアンナ・ブシェさんよね?」


 リリアーヌは2年B組、つまりステファニー・ブレヴァル達の担任である。

 直接受け持ってはいないが、リリアーヌはアンナを見知っていた。


「はい、2年C組のアンナ・ブシェです。今日は父のお供です。だけどリリアーヌ先生。商人の会合とは珍しい場所でお会いしましたね。魔法女子学園の先生が、今日はどうされたのですか?」


 アンナが尋ねれば、少しリリアーヌは、はにかんだ。

 顔が赤くなっていた。


「ええ、アンナさん。実は……婚約者と一緒なのよ」


 アンナはリリアーヌの傍らに立つマルコを見知っていた。

 商人達の会合に出席する父にお供して、何度か挨拶していたからだ。


「ええっ? こ、婚約者! という事は! マルコさんがリリアーヌ先生の?」


「そうなの。先日婚約したばかりなの」


「うわ! おめでとうございます!」


「ありがとう! でもアンナさんのお父様は学園でお見かけした事があるけれど……そちらの方は?」


 リリアーヌは少年を見つめた。

 アンナに兄や弟は居ない。

 ひとり娘のはずである。


 でも少年の顔立ちには何となく見覚えがある。

 

 ええっと、誰かに似ているんだけど……


 つらつら考えたリリアーヌであったが、疑問はすぐ解けた。

 少年が、はきはきと自己紹介したからである。


「はい、初めまして! アンナの婚約者ジョルジュ・ドゥメールです。いつも母と姉がお世話になってます」


「ドゥメール!! あら! じゃ、じゃあドゥメールって! もしかしてウチの理事長? そして校長?の!」


「はい、俺の母と姉です。そしてルウ・ブランデルが兄になります」


「そ、それはおめでとうございます! あ、失礼しました! ジョルジュさん、私リリアーヌ・ブリュレです。マルコ・フォンティの婚約者です。魔法女子学園の教師をしています」


「リリアーヌさん、おめでとうございます。俺はマルコさんにはいろいろ良くして貰ってます。ルウ兄上に勝るとも劣らない兄貴みたいな存在です」


 ジョルジュの物言いを聞き、マルコが照れる。


「ははは、ジョルジュ様、それは、ほめ過ぎですよ」


「いえ、マルコさんには、魔法使いならではの商売に関しても相談に乗って貰ってます」


 魔法使いならでは?

 気になったリリアーヌが、ジョルジュに尋ねる。


「魔法使いならではの商売?」


「はい、リリアーヌさん。アンナと結婚して、俺は商人になりますけど、魔法使いの職も捨てませんから」


「え? 魔法使いを捨てない?」


「はい! 俺、欲張りなんです。一流の商人を目指しつつ、必ず上級魔法鑑定士にもなります」


「一流の商人を目指しつつ……必ず上級魔法鑑定士にも……」


「はい! その強みを生かして、絶対にブシェ商会を大きくします」


 ジョルジュの決意を聞き、リリアーヌも強い決意が湧いて来る。

 魔法使いならではの強み、それを活かしてマルコと共に商人として生きて行こうと思う。


 話は更に盛り上がりそうな気配だが、

 この場では落ち着いてじっくりとは話せない。


 という事で、ここでマルコがひとつ提案。


「皆さん、宜しければ、これからウチの商会でゆっくりお茶でも飲みませんか?」


「おっと、私は用事があるから、失礼するよ。後は若い人同士で話せば良い」


 気を利かせたのか、本当に用事があるのか、笑顔のアルマンは辞去を申し出た。


「残念です。ブシェ会頭」


「いや、何の! マルコさん、貴方とはまたすぐ会って仕事をする事となるだろうから」


「ですね!」


「うむ! 禍を転じて福と為すという。ヴィクスマスターの仰るように、この大破壊で我々商人は一層団結するに違いない。更に親交を深めるいい機会だ」


「仰る通りです。今度は私達が! 私達商人が戦う番ですよ」


「はははは、共に戦おう。王都を復興……いや、大破壊前の何倍も栄えさせてみせる!」


 アルマンとマルコのやりとりを見て聞いて……

 アンナとジョルジュ、そしてリリアーヌはますます商人として生きる決意を新たにしたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説版第1巻~7巻

(ホビージャパン様HJノベルス)

大好評発売中!


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆最新刊『第3巻』大好評発売中!!

第1巻、第3巻重版!

※月刊Gファンタジー大好評連載中《作画;藤本桜先生》

☆11月18日発売の月刊Gファンタジー12月号に『最新話』が掲載されます。

一見超ドライですが、本当は優しいルウ、可憐なヒロイン達の新たな魅力をどうぞお楽しみください。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。

WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。

毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、連載中である

「帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者」《完結!》

「絶縁した幼馴染! 追放された導き継ぐ者ディーノの不思議な冒険譚」

◎新作「辺境へ追放された勇者は、銀髪美少女と新たな国を創る。気が付いたら魔王と呼ばれていた?」も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ