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第1,231話 「大破壊⑤」

東導 号 書籍化作品⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

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 宰相フィリップの謁見におけるルウの重大な進言で……

 王都、そしてバートランドが警戒態勢に入ってから1週間が過ぎた。

 幸い、未だに『大破壊』は起こってはいなかった。


 そもそも大破壊には、決まった形がない。

 

 ちまたで聞けば、一般的には、魔物の大群襲来というイメージが強いだろう。

 だが、大嵐、洪水、日照りなどの自然災害、疫病の流行、害虫の大発生による農作物の壊滅など枚挙にいとまがない。


 但し、ヴァレンタイン王国王都市民にとって大破壊といえば、

 直近の10年前に発生した二足竜ワイバーン襲撃の印象が強いのである。

 

 なので王国宰相フィリップ・ヴァレンタインより警戒宣言が出された際、王都市民の誰もが竜を含めた魔物の襲撃を予想していた。

 だが自然災害その他のケースも、発生の可能性は考えられた。

 その為、フィリップは街壁の修理や保有物資の再確認をし、不足していた物は備蓄も急ぎ手配していた。


 王国軍を統括するレオナール・カルパンティエ公爵も、部下のキャルヴィン・ライアン伯爵に命じ、

 王都騎士隊を中心に据え、王国軍の軍事訓練を行った。

 また王国軍にサポートさせた王都市民の避難や救助も想定した訓練も念入りに行っていた。


 冒険者ギルド王都支部のマスターであり、ルウの妻たるミンミも多忙であった。

 ルウと念話で相談しながら、ブランデル邸へ還る事無く、支部とギルド官舎の往復であった。

 ミンミは、ランクB以上の『ランカー』を有志として数多募り、 

 王都防衛特別ミッションを発令、王国軍をフォローする態勢を整えたのである。


 直接大破壊が起こらないバートランドも、万が一の場合を想定し、

 エドモン・ドゥメール公爵自らが陣頭指揮を執り、訓練や対応を徹底させている。


 一方、ヴァレンタイン王立魔法女子学園も理事長アデライド指揮の下、校長代理のフランと教頭ケルトゥリが中心となり……

 教職員生徒を含め、数回にわたり避難訓練を行っていた。

 

 本校舎の地下には防御魔法で強化された巨大なシェルターが備えられており、

 2週間分の水、食料が備蓄されている。

 

 ひとたび大破壊が起これば、在校の全員がシェルターへ避難する事となっていた。

 また休日の際、自宅等での避難対応も徹底的に指示が為されたのである。


 そして当然ながら……

 ブランデル邸もこれまた第一夫人のフラン、

 そして檄を飛ばしたジゼルが中心となり、通常の訓練と共に災害訓練も合わせて行っている。


 所詮は訓練。

 いくらやっても10年前の大破壊同様、犠牲者は出るだろう。

 だが少しでも心構えがあれば、全く無防備の状態で突如起こるのと比べれば、

 助かる確率は雲泥の差といえるだろう。


 ……更に数日が過ぎた。


 しかし王都は到って平和である。

 いつもと変わらない日常が過ぎて行く。

 

 ルウのもたらした怖ろしい予感が、『単なる胸騒ぎ』で終われば良い、

 フィリップやレオナールがそう思い始めた頃……異変が起こった。


 ヴァレンタイン王国の遥か西……

 雲ひとつない快晴の空に不気味な雷鳴が轟いたのである。

 雷鳴に続き、空はバリバリと異様な音を立て、軋み、大きく割れた。

 何と!

 現世と未知の異界がつながってしまったのである。


 異変は現世と異界がつながっただけで終わらなかった。

 割れた空からは更に無数の邪竜が出現したのだ。

 

 異界から続々と邪竜達は出現し、やがて空の一画を埋め尽くした。

 現れた邪竜の数は楽に数百頭を超えていた。

 これは……10年前の大破壊、約100頭現れた二足竜ワイバーンの比ではない。

 

 邪竜の大群は不気味な声で咆哮すると……

 まるで確たる意思があるかのように東の方向、

 王都セントヘレナへ向かって飛んで行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 不気味な異変が起きた瞬間、王都のブランデル邸……

 数多の邪な気配を感じ、ルウは目を覚ました。

 すかさず念話でモーラルへ呼びかける。


『モーラル、感じたか?』


 対して、打てば響けとモーラルから言葉が戻る。


『はい、旦那様。王都より遥か西、突如おぞましい気配がたくさん!』


 モーラルは邪悪な気配を感じたようである。

 だが、ルウは既に正体も見抜いていた。


『そうだ! 多分、邪竜の群れだ!』


『邪竜!? では二足竜ワイバーンなどよりずっとずっと強敵ですね』


『ああ、そうだ。俺はフランとジゼルを念話で起こして状況を伝え、ふたりから妻達へ周知させる。ミンミには防衛ミッション発動を指示し、悪魔従士達にも念話で緊急招集を伝える! お前は使用人達へ同じく伝え、家族全員の避難対応をしてくれるか』


 できぱきと指示を出すルウ。

 頼もしいと感じながら、モーラルも気合を入れる。


『了解しました! では妻達へは急ぎ地下室へ避難の用意をさせます! 赤帽子は勿論、テオドラ、ウッラ、パウラなど戦闘可能な者達には家族の警護を! ケルベロスには中庭で屋敷の防衛にあたらせます』


『よし、すぐ対応してくれ。フランにはオルトロスも召喚させ、ケルベロスと両名で合わせて屋敷の防衛にあたって貰う。悪魔従士達への招集連絡後、エドモン爺ちゃん、フィリップ殿下、アデライド母さんにも俺から連絡する』


『はい! 宜しくお願い致します』


 モーラルとの会話が終わると、ルウはすかさずフランとジゼルへ緊急事態を告げた。

 無論念話である。

 ふたりとも『大破壊』発生に驚いたが、事前に覚悟を決め、訓練をしていた為、パニックにはならなかった。


 フランは、ルウの指示に了解し、アドリーヌ、ラウラ、そしてオレリー達2年C組トリオをすぐ起こし、オルトロスを召喚すると言葉を戻した。


 ジゼルはナディアとアリスを起こす事を、一旦OKしたが、すぐ尋ねて来る。

 武者震いなのか声が上ずり、興奮しているのが分かる。


『だ、旦那様、私達は避難するだけで良いのだろうか? 少しでも王都防衛の役に立ちたい!』


 愛する故郷の王都を守る為、今持てる力で戦いたい!

 血気盛んなジゼルなら当然の気持ちであろう。

 しかしルウは承知しなかった。


『襲来するのは邪竜、数百頭だ。訓練した通り、まずは自分の身と家族を守る事を考えてくれ』


『……分かりました』


 10年前の大破壊は、二足竜が約100頭強襲来したものである。

 何とか撃退したものの、その時でさえ王都は甚大な被害を出し、王都騎士隊や王国軍に戦死者が多数出た。


 だが……

 10年前とは違い心強い存在が居る。

 そう、底知れぬ力を持つルウとモーラル、そして頼もしい悪魔従士達が王都を守ってくれる。

 ルウとモーラルは勿論、『泥の池』で見せた悪魔従士達の圧倒的な力を思い出し、ジゼルは納得し、身を引いたのだ。

 

 それにジゼルは信じている。

 ルウはジゼルの前向きな気持ちを頭から無視したりはしない。

 妻達の実力もしっかり把握しているだろう。

 共に戦えるのなら、遠慮なく出撃を要請する筈だと。


 一方……

 ルウは感じていた。

 覚醒し、成長したはずのフランからは、わずかだが怯えの波動が出ている事を……

 過去の悲惨な体験が生み出したトラウマから早く抜け出して欲しい。

 そう思いながら、ルウはフランへ立ち直りの強制はしない。

 それに克服させる為の特別な魔法なども使うつもりもない。


 深い悩みや辛い苦しみに対し、他人の助言こそ受けられるが、

 人は最終的に自分自身で克服しなければならないのだから。


 ルウは軽く息を吐くと、悪魔従士達へ『変事』を告げる為、

 早速念話で話しかけたのであった。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


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