第1,227話 「大破壊①」
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ブランデル邸深夜ルウの私室……
ルウとモーラルは、ふたりきりで話し合っていた。
先日、大悪魔ネビロスがたくらみ、麾下の悪魔グラシャボラスを使い、
巻き起こした『学園祭騒動』があったからだ。
ちなみに、ルウの私室という邸内のきわめてプライベートな空間で話しているのではあるが、
他者は勿論、家族にさえ知られたら宜しくない内容もあり、
ふたりは魂と魂の会話、『念話』を使用していた。
学園祭終盤、魔法学園対抗戦に現れた魔獣ブラッドドッグ、すなわちグラシャボラス。
そして異界に潜んでいた黒幕ネビロスが倒された後……
いち早く、目を覚ましたアデライド、そして観客達を目を覚まし、改めて闘技場の対抗戦を見守った。
ブラッドドッグが出現した際、ルウが同時発動した、
身体強化、鎮静、睡眠、忘却、以上4つの魔法が、観客達の無事と安全を確保していた。
過ぎ去った時間も、まるで巻き戻されたかのように……
一切何も起こらなかったという趣きで、見事に魔法により再現された。
オレリーはジェシカを、そしてユルリッシュも自分の使い魔である本来の『犬』を召喚。
結果、対抗戦は健全に正々堂々と行われたのだ。
試合は特別な技法を使わず、シンプルな使い魔の能力、術者との絆を競った勝負に徹したものであった。
結果は、やはりオレリーの圧勝。
全力を出し切った素のユルリッシュは笑顔で潔く敗戦を認め、
オレリーと、がっつり握手。
アデライドもルウとの話通り、本来の誠実な性格に戻った素のアルバンと、
互いに晴れやかな表情で握手。
これまで通り、仲良く交流し、魔法習得上達に切磋琢磨して行く事を誓い合ったのである……
さてさて!
このような特別な案件がなくとも、ルウとモーラルは様々な事を話し合う。
新たな悪魔達の来訪、悪魔従士から入る諸情報、
アッピニアンを始めとした正体不明な輩共の不穏な動き、
ロドニアを含めた全世界、全種族の国際情勢という硬く重要な話。
果ては日常生活、家族や仲間の話題を含めた王都の噂話まで……
何でも忌憚なく話し合う。
その上で、随時、必要な案件は時間を置かず検討し、それなりの対処を行う。
モーラルのアドバイスを全面的に取り入れる事も多い。
ルウにとって8年以上暮らしを共にし、全てを分かり合ったモーラルは、
自分の分身の如き存在なのである。
ひと通り話してから……
モーラルは表情を曇らせる。
まだ何かあるようだ。
『旦那様、話は戻りますが……』
『ああ、俺も凄く気になっていた』
『はい、旦那様の出生に関する大いなる秘密。口外出来ぬ禁断の理……ネビロスはやはり気付いていました。……私も初めて内容を具体的に、認識致しましたが』
『……確かにあの異界に俺達が赴いた時、奴の思念がはっきり伝わって来た』
『はい……』
間違いない!
奴は、いずれ天使長……否、ルシフェル様の力をも軽く超える!
創世神に限りなく近い完全なるアダムとなる!
ルウが『完全なるアダム』となるのが、創世神の意思だとしたら……
人間を餌とする、儂等悪魔はどうなる!?
今更、ルウにしっぽなどふれぬ!
降伏は絶対に出来ぬ!
その前に……ルウが完全覚醒する前に……
奴を潰すしかない!
おお、そうだ!
良き手がある!
あ奴を!
バエルを使う!
あの悪魔王を……上手く使えば!
完全覚醒前の『今のルウ』ならば、潰せる!
消滅させる事が出来る!
創世神の理……破壊と再生の輪廻を儂が潰す!
理を潰せば、いかなる魔族も儂を褒め称える!
理を曲げた悪魔として称賛する!!
儂の名を上げ、悪魔王となる日がやって来るのだ!
は~はははははははっ!!!
高笑いしたネビロスは……
『ルウの正体』をはっきりと見抜いていた。
ルウも身の上に起こった様々な変化と事象を踏まえ、
自身を「特異な存在だ」と認識はしていたのである。
『しかしけして、口にする事は出来ません。知りはしても口にしたら滅びの裁きを受けるからです』
『ああ、そんな理の為に、死す者が出てはいけない。そんな悲劇は……爺ちゃんだけで十分だ』
『はい、仰る通りです』
何と!
ルウは師シュルヴェステル・エイルトヴァーラが亡くなった秘密を知っていた。
シュルヴェステルがルウの秘密を知った事で『裁き』を受けた事を知っていたのだ。
『それとネビロスの奴、滅ぶ前に、気になる事を言っていた』
『はい! 確かに!』
……ルウとモーラルは記憶を手繰った。
深き異界で、ネビロスは滅する前、
ひどく気になる事を言い残したのである。
『ネビロス、お前に明日はない。未来もない……もう終わりにしよう』
『はっ、もう儂が終わりだと? 笑わせる! 終わりなのはお前だ!』
『何?』
『先に、お前が儂の結界を破る前に! 念話でバエルに伝えた! 世界を破壊しつくせとな!』
『ふっ、バエルか! 奴とも決着をつけねばならんな』
『ははは、バカめ! お前はバエルには勝てぬ!』
『どういう意味だ?』
『意味は世界が破滅するまで、ゆっくり考えろ! この儂を殺した後でな!』
『……分かった。お前を消してから、ゆっくり考えよう。但し、世界は破滅しない』
『ははははは、愚かな!! 大破壊など児戯にしか思えない、怖ろしい災厄が来る! 冥界から来るのだぁ!!』
大破壊を遥かに超える大きな災厄……
それは謎めいた暗躍する魔法使いイクリプス、
そして大魔王バエルによりもとらされるという。
『まあ、いつどこで何が起こるか予想はつかない。しかし逐一、情報を収集し、備えておいた方が良い事は確かだ』
『はい、旦那様、私、大きな懸念があります』
『大きな懸念?』
『はい! 裏付けや確たる証拠はありませんが……とても嫌な予感が致します。ネビロスの告げた世界全体を滅ぼすような大災厄ではありませんが……ええっと』
モーラルは言い難そうに口ごもったが、ルウが続きを話すように促す。
『構わない、続けてくれ、モーラル』
『はい! では申し上げます! 近いうちに、大破壊が起こります。ほぼ確実に!』
『おお! 本当か、モーラル? 実は俺もさ』
『え? 旦那様もそうなのですか?』
『ああ、俺は予知の魔法を使えない。だが……とんでもなく嫌な災厄が起こる予感がする……多分ほぼ大破壊だ』
『私もです。とても危険だから王都をすぐ離れるようにとの本能的な内なる声の警告です』
『分かるよ。俺達に予感させたのは、そうか……動物が生命の危険を察して事前に逃げるような危機回避の能力かもしれないな』
モーラルの言う『大破壊』とは……
アールヴの国では『神の怒り』と呼ばれていた。
具体的に言えば、それは突然、理由も無くやって来る大災害である。
堅牢な建物もなぎ倒す激しい大嵐であったり、この世界で力の頂点を象徴する竜の襲来であったり、害を為す魔物の大量発生だったり内容は様々だ。
『信じたくはないが、しっかり備えておくに越したことはない。ネビロスの遺言も含め、悪魔従士達へ、もしもの際の対応を指示しておこう』
遂に遂に!
大破壊が起こる。
そしてネビロスの告げた大破壊を遥かに上回るという大災厄も……
『すぐにウチの家族、仲間にしっかり周知し、万全な対策を立て備えよう』
『確証がないので、高難度です。しかし精一杯やりましょう』
ルウとモーラルは互いに見つめ合うと、大きく頷いていたのである。
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※月刊Gファンタジー大好評連載中《作画;藤本桜先生》
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一見超ドライですが、本当は優しいルウ、可憐なヒロイン達の新たな魅力をどうぞお楽しみください。
また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。
コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
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毎週月曜日更新予定です。
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最後に、連載中である
「帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者」《完結!》
「絶縁した幼馴染! 追放された導き継ぐ者ディーノの不思議な冒険譚」
◎新作「元ジャンク屋追放勇者のんびり辺境開拓記。魔族と仲良くなって、いつのまにか賢者魔王と呼ばれてた?」も宜しくお願い致します。




