第1,224話 「学園祭㉞」
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『魔法女子学園の助っ人教師』
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『出来損ないのボロ人形如きがぁ! よ、よくも! やってくれたなぁ! 絶対に潰してやるぅ!!』
想定外なテオドラの奇襲により……
呆気なく倒れ伏したユルリッシュ。
動かなくなったその身体から、口汚く言葉を吐き捨てたのは、もはやユルリッシュではなかった……
実体を持たない、精神体らしき者が抜け出したのだ。
『もうこの依り代に用はない! 魔力無き、カスの骸など、醜く朽ち果てるが良いっ!』
呪詛の言葉を吐く精神体は闘技場を「ぐるり」と一瞥し、
『うむう! こうなったら! オレリーの小娘だけでは物足りないっ! この闘技場に居る者、全てを殺戮し、真っ赤な血の海へ沈めてくれようぞ!』
抜け出た精神体は……
何と!
ユルリッシュの魂の奥底に隠れ巣食っていた大悪魔グラシャボラスの『本体』であった。
『ふははははっ! これだけの魂が手に入れば、悪くはない!』
テオドラの有する特技、魔力吸引能力により、
活動に必要な魔力量を失った宿主をあっさり捨て……
グラシャボラスは、次の依り代へと向かったのだ。
次の依り代……
グラシャボラスの精神体は、
ユルリッシュが呼び出したブラッドドッグへ突き進んだ。
『ブラッドドッ~ッグ! 起て! 我が忠実なる眷属よ! 我の力を求めよ! さすれば我は応えたり!』
対して、憑依を受け入れる意思を示したらしきブラッドドッグ。
凄まじき咆哮を発する。
がおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~~っっ!!
これで勝てる!
超パワーアップした奴に、偉大なる我の力が加われば!!
精神体のグラシャボラスは歓喜の波動をまき散らし、ブラッドドッグの肉体へ突入した。
すると、更にブラッドドッグの『体格』がふたまわりほど大きくなった。
大型の牛ほどもあった体格が更に大きくなったのである。
更に背からは、漆黒の大翼が不気味に「にゅっ!」と突き出した。
ぎゃううううううううううううううううおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
『完全体』となったブラッドドッグ……
否!
パワーアップした悪魔グラシャボラスは、静まり返った闘技場中に響き渡るほど、殺意のこもった怖ろしい声で、咆哮した。
このままでは、オレリーとジェシカが危ない!!
アルバンを、そしてユルリッシュを活動不能としたミンミとテオドラは、ただ傍観していたわけではない。
素早く、そして高速で飛翔し、『演舞台』上のオレリーとジェシカを守るよう、
軽々と着地したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
グラシャボラスから守るように立ちふさがったふたり。
オレリーはジェシカを抱き、思わず叫ぶ。
『ミンミ姉! テオドラ!』
『オレリー! 話は後! 良い? しっかり認識して! 攻め寄せる敵は悪魔グラシャボラス! ブラッドドッグと合体して向かって来るわ!』
『は、はい! ミンミ姉!』
『オレリー奥様! しっかりしてください! ミンミ奥様の仰る通りです!』
『テオドラ!』
『パワーアップした奴に対抗し、退ける為には、オレリー様が発する破邪の光! 行使する完全なる魔法陣しかありませんっ!』
しかし!
先ほど、オレリーはアリトンの加護を受けた水の魔法が上手く使えなかった。
上手く制御出来なかったのだ。
やはり訓練と実戦は違う。
著しく異なる。
まだまだオレリーは経験不足なのだ。
そんなオレリーの気持ちを見抜いたかのようにミンミは言う。
不安を払しょくするように、テオドラが叫ぶ。
『オレリー、私達と3人でグラシャボラスを倒すのよ!』
『3人とジェシカの魔力、4つを合わせれば! グラシャボラス如き、敵ではありません!』
『は、はい!』
『怖がらないでオレリー! 大丈夫! 私達が貴女へ魔力を渡す!』
『ノープロブレム! オレリー奥様! 私達と! 手をつないでくださいっ! 固く! しっかりと!』
『はいっ! ジェシカも宜しくねっ!』
『わう!』
ぴたりと寄り添うジェシカの返事を聞き、
頷いたオレリーの右手がミンミへ、
そしてオレリーの左手がテオドラへ、
しっかりと結ばれた。
これは家族の絆。
助け合って行く愛の力だ。
同時に!
膨大な魔力が流れ込んで来る!
どこからともなく声も聞こえて来る。
これは……ルウの声だ。
『オレリー、ここまで良く頑張ったな! さあ、ジェシカを入れ、4人で学園祭の仕上げをしてやれ! 俺も異界から魔力で援護する』
『はいっ! 旦那様!!』
愛するルウの声!
オレリーの精神は完全な愛に支えられ、至高の境地に在った。
だが既に!
グラシャボラスは大翼を羽ばたかせ、宙を滑空し、
オレリー達3人へ突っ込んで来る。
噛み殺そうと巨大な口を開けている。
20m! 10m! 5m!
距離がぐんぐん縮まる。
グラシャボラスの口から洩れる生臭く熱い息がまさに届こうとした時。
光っていたオレリーの身体が更に眩く煌いた。
数段強い破邪の光である。
邪な存在を消し去る!
という強い意思を込めた聖なる光である。
『畜生!!!』
だが、ここまで来たら退けない!
オレリーをかみ殺すまでは退けない!
グラシャボラスは無理やり、進もうとした。
しかし!
『ああ!? ば、バカな!? わ、我の! 我の身体がき、消えて行くぅ!!』
そう!
グラシャボラスの身体は急速に消えていた。
な!?
何だ、あれはぁ!?
破邪の光とは違う、強烈強大な魔力!?
つい下方を凝視したグラシャボラスは驚愕した。
オレリーを中心に、巨大な魔法陣がどんどん広がっていたのである。
『あ、あれはぁ!? か、か、完全なる魔法陣んん!? ば、ば、バカなぁ!? こ、こんな小娘がぁぁぁ!! ふっ、ふざけるなぁっっ~~!!!』
今やグラシャボラスの魂と肉体は、
破邪の光に完全に包まれ、完全なる魔法陣にも呑み込まれていた。
『ぎゃあああああああああああああああ~~っ!!!』
断末魔の叫びとともに、グラシャボラスは完全に消滅。
闘技場も全てが、眩い光により真っ白に塗りつぶされたのである。
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一見超ドライですが、本当は優しいルウ、可憐なヒロイン達の新たな魅力をどうぞお楽しみください。
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毎週月曜日更新予定です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、連載中である
「帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者」《完結!》
「絶縁した幼馴染! 追放された導き継ぐ者ディーノの不思議な冒険譚」
◎新作「元ジャンク屋追放勇者のんびり辺境開拓記。魔族と仲良くなって、いつのまにか賢者魔王と呼ばれてた?」も宜しくお願い致します。




