第1,205話 「学園祭⑮」
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
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魔法女子学園を出発し、ブランデルの屋敷へ戻る馬車の車内で、
ルウは目を閉じ、モーラルからの報告を念話で聞いている。
報告とは、彼女がウッラ、パウラと共に、魔法男子学園理事長と生徒会長の、
身辺調査をした結果だ。
目を閉じ、集中している為、フラン達はルウが大事な考え事をしていると見て、
話しかけては来ない。
『お疲れ様』
『ルウ様もお疲れ様です。そちらに何か変わった事はありませんか?』
モーラルは任務を命じられた時には、ルウを『想い人』として、
つまり旦那様とはほとんど呼ばない。
任務を命じられた時、また報告の際には「ルウ様」と敬称で呼ぶのだ。
愛し愛される妻ではなく、忠実な従士と振る舞い、しっかりと公私の一線を画していた。
『うん、今のところ異常なしだ。テオドラも良くやってくれたよ』
『それは何よりです』
『ああ、で、そちらはどうだった?』
『ええ、まずまずです。いろいろと新たな情報を得る事が出来ました』
『報告は可能かな?』
『はい、問題ありません! 魔法男子学園の生徒、都合10名から話を聞く事が出来ましたから』
軽く息を吐く気配が……
念話越しに伝わって来て、モーラルの報告は始まった。
『まずは魔法男子学園理事長アルバン・ボーヴォワールですが……アデライド様に私怨があるようです』
『成る程、アルバンは昔、魔法大学でアデライド母さんと同級生とは聞いている』
ルウは記憶を手繰り、言葉を戻した。
『はい、ルウ様の仰る通りです』
モーラルは同意し、話を続ける。
『私の推測も入れ、報告を続けます』
『了解、頼むよ』
『はい! アルバンは何かにつけてアデライド様を引き合いに出し、貶めているそうです』
『それは、以前からずっとか?』
『はい、以前からそのような傾向は若干あったらしいのですが……少し前……夏へ入る前から、言動が極端に変わったそうです。完全に容赦のない言い方になったと』
『そうか……』
学生時代……
アデライドとアルバンはまともに会話をする事はなかったと、アデライドから聞いている。
アルバンに対し、単にボーヴォワール子爵家の嫡男という認識しかなかった。
大学内では殆ど顔を合わさず、たまにすれ違えば軽い会釈レベル。
面と向かって挨拶するのは、年に一回開かれる王宮の晩さん会くらい。
それもごきげんようとひと言告げる程度。
当時のアデライドは誉れ高き名門ドゥメール伯爵家のひとり娘、
その上、ヴァレンタイン王国では『舞姫』と呼ばれる高名な魔法の達人という立ち位置。
アデライドが認識していないのであれば、
アルバンは目立たないその他大勢、つまり普通の一般学生だっただろう。
例えれば太陽と、月よりも小さな惑星……
このふたりの間にどのような『因縁』があったのか……
そう考えながら、ルウはモーラルからの報告を待った。
『ルウ様、ここからは私の推測が入った報告となりますが……構いませんか?』
『ああ、構わない』
『はい、かしこまりました』
『私はルウ様以外愛した事がありません。だから男女間の機微や気持ちを全て知っているわけではありません』
『そ、そうか』
『はい! ですが、私のシミュレーションで話の辻褄がだいぶ合って来ます』
『辻褄か、分かった、頼む。とりあえず、最後まで聞こう』
『はい、ありがとうございます』
と、モーラルは礼を言い、再び軽く息を吐く。
『生徒達から聞いた話により、私が考え推測しますと……アルバンは、高名なアデライド様に憧れていたと思われます』
『…………』
『アルバンは多分、大学に入学する前、だいぶ幼い頃からアデライド様に憧れていたと……』
『…………』
『男と女というよりは、同じ魔法使いとして……王宮の晩さん会で、アデライド様と年一回会うのを、アルバンはとても楽しみにしていたと思うのです』
『…………』
『やがてアルバンは成長し、魔法男子学園へ入学。更にアデライド様を意識するようになった。彼は初めて気付いたのです。今まで持ち続けたこの感情が初恋であったと』
『…………』
『大学に入学後……アルバンの初恋はほのかな想いから、狂おしいくらい切なく辛いものに変わった』
『…………』
『でもアルバンから見れば、華やかな美貌の天才【舞姫】は違う世界に住まう住人に見えた。想いや愛を伝えるなど全く考えられず、挨拶や会釈が関の山。ただ遠くから見守るしか出来なかった』
『…………』
『そのまま時間だけが過ぎ……アデライド様がたった2年で大学を卒業。その後、結婚が伝えられると、アルバンの想いは失恋のショックから、極端に変わりました』
『…………』
『可愛さ余って憎さ百倍ということわざ通り……何故か、いつか見返してやるというライバル的な感情に変わってしまったと思われるのです』
『…………』
『それでも、地道に努力していたアルバンは大学卒業後、魔法省へ入省。そしていくつかの職を経て、遂に魔法男子学園理事長となりました』
『…………』
『とうとう真っ向から『舞姫』と勝負が出来る。そうアルバンは意気込みました。当然、直接戦うとか子供じみた争いではなく、生徒の実績や今回の対抗戦などです』
『…………』
『しかしいくらアルバンがはっぱをかけても、頑張っても、魔法女子学園には勝てず、連戦連敗。悔しさと嫉妬、憎悪の感情だけが益々、強くなって行きました』
『…………』
『ルウ様』
『ん? 何だい?』
『ここでナディアの事例を思い出してください』
『ナディア……そうか、成る程』
モーラルの指摘に、ルウはピンと来た。
いつも『2番目』だったナディアは心の隙を衝かれ、悪魔ヴィネと、
魂を代償とする契約を結んでしまった。
『はい! ヴィネ同様、闇に住まう悪しき者が、誘惑の手をアルバンへ伸ばしたとしたら……ナディア同様に、心の隙を衝かれ、簡単に取り込まれてしまうでしょう』
『……モーラル、お前の言う通りだ。どんなに強固な意思を持つ者も心の隙を衝かれれば弱い……それが人間たる証でもある』
『はい! 生徒会長ユルリッシュ・ビガールが召喚した使い魔の変貌も私の推測を裏付けるものだと確信致しました』
『そうか』
『ビガールの使い魔は至極普通の犬だった。それが少し前から、赤銅色の巨犬へ著しく変わったと生徒達からは聞きました』
『赤銅色の巨犬……もしかしたら魔犬ブラッドドッグかもしれないな』
『うふふ、魔犬ブラッドドッグ……を眷属とする悪魔が居ますよね、ルウ様』
『ああ、犬型をした底意地の悪い奴がな。更にそいつの主……しつこい悪魔も絡んでいる……となれば今回のパズルはピースが揃い、一気に完成ってところか?』
『はい! 絶対とは言えませんが、用心するに越したことはないかと!』
『だな! オレリーだけではなく学園全体の安否の問題もある。早めに手を打って、確認し、対応した方が良いだろう』
『ルウ様、私は引き続き調査を続けます。悪魔従士達を含めての対応を宜しくお願い致します』
『了解!』
話が見えて来た。
イフの前提ではあるが、モーラルの言う通り用心するに越したことはない。
ルウは目を閉じたまま、小さく頷いたのである。
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