第1,197話 「学園祭⑦」
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
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「ははは、ドゥメール伯爵。あくまで私見であり、単純な比較という事で構わないのなら申し上げよう」
やはり……
アルバンの物言いに、アデライドは悪意を感じる。
以前から、感じてはいたが、今回は特に酷い。
「子爵の私見で構いません、仰ってください」
当のアデライドは平然と返したが……
フランは勿論、普段は冷静沈着なケルトゥリさえも不快な表情を見せていた。
「ズバリ言おう。オレリー君には華がない! フランソワーズ君やジゼル君は咲き誇る血統書付きの薔薇とすれば、オレリー君は野に咲く名も無き雑草だ」
「雑草? ……子爵、あまりにも失礼ではないですか? もしかして私へ個人的に喧嘩を売っていらっしゃる?」
「ははは、冷静に冷静に。だからあくまで私見だと言ったではないか」
「私見と言っても……限度がありますわ……」
「いやいや、良く私の話を聞いて欲しい。今回の、私からの提案は伯爵にとっても願ってもない良き話なのですぞ」
「どういう意味ですか?」
「従来の魔法学園男女対抗戦は攻防の魔法の発動、正確さで競って来た」
「その通りです」
「でもそれは表向き。実際は美的評価が8割、いや9割だな」
「何が仰りたいのです?」
「ははははは! 対抗戦における魔法女子学園の勝利は、術者の実力以上に『見た目』が評価されていたという事だ」
「見た目? 子爵! あまりにも失礼です」
「伯爵。冷静に冷静に。だから、同じやり方では面白くない。今回はガラリと趣きを変えたいと、貴女へ先ほど申しあげたではないか?」
「もっとはっきりと! 単刀直入に仰ってください」
「分かった! 召喚魔法で呼び出した対象の能力、その優劣を競うなら、今回は術者の美的評価が少ない分、公平に評価され、審議されるだろう?」
今回は術者の美的評価が少ない?
結構、含みのある言葉であった。
どのような意味にせよ、これまでの魔法女子学園の勝利の価値や評価、
そして、オレリーの賛辞につながる言葉ではない。
むしろ逆である。
「それって!」
「本当に失礼ですっ!」
さすがに!
「もう我慢出来ない!」という面持ちで、
フランが、ケルトゥリが勢い良く立ち上がった。
しかしアデライドが素早く手を挙げて水平にし、ふたりを止めた。
「ストップ! まだ子爵の話は終わってないわ。……さあ、子爵、残りをどうぞ」
「ははは! 伯爵は話が良く分かる方のようだ、おい! ユルリッシュ! 続きはお前から説明してやれ!」
「はい! 伯父上!」
「伯父上?」
「ふふふ、実を言うと、ユルリッシュは私の甥だ。妹の息子にあたる。幼い頃からやんちゃで散々手をわずらわしたが、召喚魔法の腕は中々だ」
「ふふ、伯父上。それほどではありませんよ」
謙遜する魔法男子学園生徒会長、ユルリッシュの端整な顔には、
「ぞっ」とするような冷たい笑みが浮かんでいた。
ユルリッシュを見て、アデライドは何故か、身体が強張った。
「ではドゥメール伯爵、伯父の指名ですので、若輩ながら、僕、ユルリッシュからご説明させて頂きます」
「……よ、宜しくね、ユルリッシュさん」
「はい! ……先に伯父が申し上げました通り、今回の対抗戦の種目は当学園の決定にて、召喚魔法と致します。念の為……問題ないですよね?」
「ええ、異存はないわ」
「では話を続けます」
ユルリッシュはそう言うと、またもニヤリと笑った。
何度見ても嫌らしい、品の無い下卑た笑いである。
「…………」
「他の魔法と同様、評価されるのは術者の発動の迅速さ正確さは勿論ですが……」
「…………」
「召喚魔法は召喚対象への制御、命令内容に対する理解の正確さ、遂行までの迅速さを競うものとします」
「成る程……ではズバリ聞きますけど、ユルリッシュさんが呼ぶ使い魔はどのような存在なの?」
「あはは、伯爵に存在とまで呼んで頂ける、大仰な奴ではないのですが……犬ですよ」
「犬?」
「ええ、魔法女子学園の新生徒会長オレリー・ボウさんと同じくね」
ユルリッシュは、勝ち誇ったように告げた。
傍らでは伯父のアルバンが甥と同じような品のない笑みを浮かべていた。
どうやら、予想以上にオレリーの身辺は調べられ……
今度こそ対抗戦に必勝を期す為、魔法男子学園側は様々な策を講じているらしい。
「…………」
アデライドは何か思案しているのか、無言であった。
しかし、ユルリッシュは話を続ける。
話というよりも、召喚対象の自慢のようだ。
「犬にしてはとても大きくて、全身が赤銅色に輝く犬なんです。」
「とても大きくて赤銅色に輝く……犬……」
「ふふふ、そうです。強靭で全身がばねのように敏捷な自慢の犬なんですよ」
「…………」
「伯爵! 召喚対象が同じ犬同士なら、僕とオレリーさん、双方が比較評価し易いでしょう? どちらが優れた術者なのか」
「ユルリッシュさん」
「はい」
「……ウチの生徒会長オレリー・ボウさん、彼女の使い魔が犬だとご存じとは……良く調べていらっしゃるのね?」
「ははは、当然です。確か、ジェシカという名の使い魔……毛色は白くてそこそこ大きな犬ですよね」
「…………」
「伯爵も同じだと思いますけど……相手を全く知らずに戦いを挑むなど、愚か者のする事ですよ」
「…………」
「古の言葉にもあるじゃないですか? 彼を知り己を知れば百戦殆からずとね。僕は勝つ為には万全を期してますから」
「……そのような故事までもご存じとは……博学なのね」
「はい、オレリーさん以上に勉強していますから……当然、魔法の才能も遥かに上です!」
「…………」
「伯爵」
「はい」
「何度も申し上げますが、今回こそはウチが……魔法男子学園が勝ちます。先輩方の無念を晴らす為にもね」
「ええ……お互いにベストを尽くしましょう」
最後まで、礼を尽くしたアデライドではあったが……
流石にアルバン達へ握手を求めなかった。
失礼と言う怒りの感情以上に、底の知れぬ不気味さを、
ユルリッシュに感じていたからである。
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