第1,196話 「学園祭⑥」
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
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魔法男子学園理事長アルバン・ボーヴォワールはねめつけるような眼差しで、
アデライドを見つめる。
「では、ドゥメール伯爵! 今回、対抗戦のルールを我々魔法男子学園側で決めても構いませんな?」
アルバンが発した、挑発とも、念押しとも言える言葉。
多分『宿敵』アデライドの確固たる言質を取るつもりなのだろう。
対して、アデライドはひと言だけ。
「フェアであれば!」
「ははは! 当然だ、私は卑怯な真似などしない」
「そう願います」
「ふふ、疑り深い方だ。ではこちらで決めたルールをお伝えしよう」
「しかとお聞きしましょう」
「従来の魔法学園男女対抗戦は、攻防の魔法の発動の円滑さ、及び精度で競って来た。しかし同じやり方では全然面白くない。だから今回はガラリと趣きを変えたい」
アルバンはそう言うと、「にやり」と面白そうに笑った。
やはり何か、『含み』がありそうだ。
「今回の競技課題は、魔法の種類をガラリと変え、上級召喚術にしようと考えておる」
「え? 上級召喚術? ……ですか?」
「うむ! 私が聞いたところ、この度、新生徒会長となったオレリー・ボウ君も使い魔を召喚済みだとか」
「はい、担任の教師から、報告ではそう聞いております」
と、ここでフランが挙手をする。
「理事長! オレリー・ボウの担任教師として、発言の許可をお願い致します」
「……ボーヴォワール子爵、彼女の担任教師が発言しても宜しいですね?」
「構わんよ、ドゥメール伯爵。ちなみにオレリー君は、君の愛娘のフランシスカ君は勿論、あのフランソワーズ君、ジゼル君以上の才媛なのかな?」
まるで……
値踏みでもするように、前々、前生徒会長の名を引き合いに出すアルバン。
完全に上から目線、含みのある発言である。
しかし……
フランは知っていた。
同じ屋敷に暮らすオレリーの家族ならではの……
また、同じルウの妻として……フランはオレリーの持つ秘密を共有しているのだ。
家族以外誰も知らないが……
オレリーは回復、防御の魔法にとてつもない才を持つ優秀な癒し手……
『邪気を払う清流の乙女』と称される水属性の上級魔法使いなのである。
持つ資質の内容は全く違うのだが……
オレリーの才は、生徒会長を務めたふたりの先輩に勝るとも劣らない。
フランはそう思う。
だがこの場で、その秘密を明かすわけにはいかない。
オレリーが所属する2年C組の担任として、一般的な事実しか言えない。
しかし、この微妙な雰囲気の中では、
『何か』オレリーを擁護するコメントを言わないわけにはいかなかった。
「オレリー・ボウさんは、入学以来、学年首席を続けている優秀な生徒です。魔法学の試験はほぼ満点、実践課題も、召喚魔法を含め初回の機会に軽々とクリアしております」
「成る程、『成績の方』は問題ないようだ」
「成績の方? それはどういう意味ですか、子爵」
「ははは、ドゥメール伯爵。あくまで私見であり、単純な比較という事で構わないのなら申し上げよう」
やはり……
アルバンの物言いに、アデライドは悪意を感じる。
以前から、感じてはいたが、今回は特に酷い。
「子爵の私見で構いません、仰ってください」
当のアデライドは平然と返したが……
フランは勿論、普段は冷静沈着なケルトゥリさえも不快な表情を見せていた。
「ズバリ言おう。オレリー君には華がない! フランソワーズ君やジゼル君は咲き誇る血統書付きの薔薇とすれば、オレリー君は野に咲く名も無き雑草だ」
「雑草? ……子爵、あまりにも失礼ではないですか? もしかして私へ個人的に喧嘩を売っていらっしゃる?」
「ははは、冷静に冷静に。だからあくまで私見だと言ったではないか」
「私見と言っても……限度がありますわ……」
「いやいや、良く私の話を聞いて欲しい。今回の、私からの提案は伯爵にとっても願ってもない良き話なのですぞ」
「どういう意味ですか?」
「従来の魔法学園男女対抗戦は攻防の魔法の発動、正確さで競って来た」
「その通りです」
「でもそれは表向き。実際は美的評価が8割、いや9割だな」
「何が仰りたいのです?」
「ははははは! 対抗戦における魔法女子学園の勝利は、術者の実力以上に『見た目』が評価されていたという事だ」
「見た目? 子爵! あまりにも失礼です」
「伯爵。冷静に冷静に。だから、同じやり方では面白くない。今回はガラリと趣きを変えたいと、貴女へ先ほど申しあげたではないか?」
「もっとはっきりと! 単刀直入に仰ってください」
「分かった! 召喚魔法で呼び出した対象の能力、その優劣を競うなら、今回は術者の美的評価が少ない分、公平に評価され、審議されるだろう?」
今回は術者の美的評価が少ない?
結構、含みのある言葉であった。
どのような意味にせよ、これまでの魔法女子学園の勝利の価値や評価、
そして、オレリーの賛辞につながる言葉ではない。
むしろ逆である。
「それって!」
「本当に失礼ですっ!」
さすがに!
「もう我慢出来ない!」という面持ちで、
フランが、ケルトゥリが勢い良く立ち上がった。
しかしアデライドが素早く手を挙げて水平にし、ふたりを止めた。
「ストップ! まだ子爵の話は終わってないわ。……さあ、子爵、残りをどうぞ」
「ははは! 伯爵は話が良く分かる方のようだ、おい! ユルリッシュ! 続きはお前から説明してやれ!」
「はい! 伯父上!」
「伯父上?」
「ふふふ、実を言うと、ユルリッシュは私の甥だ。妹の息子にあたる。幼い頃からやんちゃで散々手をわずらわしたが、召喚魔法の腕は中々だ」
「ふふ、伯父上。それほどではありませんよ」
謙遜する魔法男子学園生徒会長、ユルリッシュの端整な顔には、
「ぞっ」とするような冷たい笑みが浮かんでいたのである。
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最後に、連載中である
「帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者」
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