第1,187話 「戦女神の遺産⑲」
ルウ達は神殿全体を護る守護者『英雄』の魂を倒し、その結果封印が解け、
『最後の通路』が開いた。
この通路を無事クリアし、行き着く先はこの神殿の最も聖なる場所、
戦女神が祀られた『至聖所』だ。
ちなみに至聖所とは……
宗教的建築物、すなわち神殿などの要を為す最も神聖な場所の呼称である。
その至聖所のどこかに……
アラクネ同様、哀しき運命に陥った少女メドゥーサの首がはめ込まれた、
呪われし神具『伝説の盾』が納められているはずだ。
ルウ達3人は、力強く最後の一歩を踏み出した。
最後の通路も今迄と周囲の様相は全く変わらない。
真っすぐで真っ白、一点の曇りもない……
まるで「これが私よ!」と謂わんばかりの純白な直線が長く長く延びていた。
ルウ達は、通路を慎重に進んで行くが……
罠や仕掛けらしきものは、全く無い。
そして『至聖所』への通路はそう長くはなかった。
ほんの10分ほど歩くと、大気が急速に重くのしかかるようなモノへと変わって来た。
元々、神殿内の大気は張り詰めたものではあった。
だが、今迄とは比べものにならないくらい重圧がかかって来たのだ。
まるで……
背に巨大な岩石を背負わされているような重圧感があり、少しでも気を抜けば、たちどころに潰されてしまう……
そんな緊張があっという間に心身へ満ちて行く。
ルウ達3人は無言である。
念話すら交わさない。
いよいよ大詰めの時が近付いているのを、全員が認識しているからである。
やがて……
前方にぽっかりと入り口らしきものが開いているのが見て取れた。
間違いない。
『至聖所』への入り口である。
と、その時!
一層3人が受ける圧力が一層強くなる。
ルウは何も言わず手を左右に広げ、傍らに付き従うモーラルとテオドラを制止した。
『ルウ様、かしこまりました』
『!!!』
即座に服従し、歩みを止めたモーラルに比べ、ルウの盾となりたいテオドラは少々不満気味である。
しかし何度も諭されているせいか、さすがに無謀な物言いや振る舞いはしなかった。
ふたりの忠実な従士を通路へ残し……
ルウは単身、『至聖所』の中へ入って行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
予想通り至聖所はやはりというか、著しく無機質な部屋であった。
真っ白で置かれているものもなく、装飾さえされてはいない。
また面積も、これまでの大広間と比べると極端に狭く、半分くらいしかない。
改めて見回しても、件の盾が納められていそうな収納スペースは見当たらない。
ルウの口元が僅かに歪んだ。
盾を探し出す自体、一筋縄ではいかぬという事なのだろう。
戦女神の魂の残滓か、何かを封印のカギとなる対象を倒さないと、収納スペースは現れない。
ルウは改めて、そう認識した。
びしゃん!
いきなりルウの足元が光り、火花も散り、床に軽い衝撃が走った。
ごく小さな威力の雷撃がいずこからか放たれたのだ。
多分、本気の攻撃ではなく『脅し』であろう。
『戦女神……だな?』
ルウのつぶやきに近い問いかけに対し、肯定の意思を告げるが如く、
今度はより強い雷撃が放たれる。
しかし!
何故かルウは避けようとはしなかった。
戦女神が放った雷撃をまともに受けたのである。
びしゃ~~ん!!!
ずし~~んん!!!
凄まじい衝撃が神殿全体を揺らした。
何かが焦げる臭いがする。
しかしルウ本人は何事もなかったかのように立っていた。
否、立っているだけではなかった。
不敵な笑みを浮かべている。
そんなルウをしっかり見ているのか、どこからともなく声が聞こえて来る。
『ふむ……さすがだ。我がしもべ達をあっさり倒しただけはある』
声は……やはり女性である。
その声に応えるかのようにルウも言う。
『成る程……俺が受けたのは父親譲りの雷撃か……誰もが怖れる無敵の御業と信じたいだろう』
『…………』
『しかし……残念だな、俺には効かぬ』
『ぬうう……おかしい!』
『ははっ、おかしいって、何がだ?』
『私には分かる! ……お前は例の翼をたたんでいるはず。他に私の御業を防ぐ手立ては持ちえていないはずだ』
魂の残滓となったとはいえ、さすがに神である。
どうやら戦女神には、ルウの持つ見えない『翼』が見えていたようだ。
そして翼の果たす役割さえも知っていた……
しかし何故ルウが雷を受けても平気なのかまでは、理解が及ばぬようである。
戦女神の疑問に対する、ルウの答えは簡潔である。
『ははっ、論より証拠だ。見ろ、この通り俺は平気でぴんぴんしている』
『ぬうう……』
唸る戦女神に対し、ルウは教師然として言い放つ。
『戦女神よ、何故、お前の雷が平気なのかは、俺と戦えば分かるぞ』
『ぶ、無礼者め!』
戦女神は自らを貶める存在には容赦ない報復を行う主義である。
神殿に侵入し、配下を倒した上、ぞんざいな物言いをするルウを到底許せるものではない。
突如、『至聖所』に何かが現れる気配がする。
ルウは腕組みをし、何もない空間を見やった。
すると、もやもやした正体不明の物体が固まり、徐々に人型となって行く。
やがて、人型は鎧姿をしたひとりの女性を造り出したのであった。
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