第1,168話 「教育実習⑭」
ヴァレンタイン王立魔法女子学園天才ＯＧ、教師志望の実習生フランソワーズ・グリモール……
彼女が特別なカウンセリングを開始してから早や2週間……
既にカウンセリングを受けた者は勿論の事、全生徒の間では既にその話題で持ちきりであった。
更にフランソワーズが上級職員会へ上申した企画第二弾。
それは何の前触れもなく、突然発表された。
学園内に設置された数か所の掲示板に、いきなり貼り出された書面には、その詳細が記されていた。
⛤ヴァレンタイン王立魔法女子学園生徒限定
特別イベント『マスクドチャリティバザー』のお知らせ。
魔法女子学園生徒の皆々様、いつもお世話になっております。
この度、当学園から皆様に日頃の感謝を込め、
来たる10月第4週土曜の休日に『マスクドチャリティバザー』を行います。
※なおこの日は、普段活動を行う学園公式の課外活動部、私的な同好会なども全て臨時休みとなります。
開催名の通り、出品される商品には適正な価格を示す値札が一切付いてはおりません。
全ての商品ひとつにつき、購入に必要な金額は金貨1枚均一となっております。
今回は各方面、様々な方のご協力により、掘り出し物や珍品と呼べる数多の商品が集まりました。
出品商品の出元及びクオリティはヴァレンタイン王国商業ギルドが保証済みです。
また1品につき、鑑定価値は倍額の金貨2枚以上も同ギルドが保証致します。
乞うご期待！
また王都内の有力大手商会も参加予定です。
今回のバザーは貴女の優れた審美眼は勿論、
日ごろ学園で研鑽した鑑定魔法と商品知識により、
とてもリーズナブルな価格で、貴重な魔道具等お宝ゲットのチャンスです。
また、大切な仲間と共に素晴らしい掘り出し物を探し出す事で、
魔法女子学園における素敵な想い出作りをし、
購入された商品を貴重な『青春の記念』としてください。
この『マスクドチャリティバザー』は王国公認のチャリティ企画です。
総売り上げの10％は創世神教会運営の孤児院等へ寄付されます。
ご注意：当日の入場には当学園の学生証、教職員証が必要です。
なお当学園の生徒、教職員以外の一般の方のご入場はお断りとさせて頂きます。
また、一旦ご購入された商品は返品、交換等は不可とさせて頂きます。
主催：ヴァレンタイン王立魔法女子学園
運営：ヴァレンタイン王立魔法女子学園上級職員会、同職員会、同生徒会
特別協賛：ヴァレンタイン王国王家有志、ヴァレンタイン王国創世神教会、
ヴァレンタイン王国貴族会、魔法女子学園ＯＧ会、魔法女子学園父兄会
協賛：ヴァレンタイン王国文化省、同商業ギルド、同冒険者ギルド
……フランソワーズの提案した第二の企画は、
まだ『いち学生』である少女の考えるレベルではなかった。
魔法女子学園のみならず、王家有志までも巻き込んだ壮大な企画であった。
しかもこのバザーはチャリティだ。
魔法女子学園主導で行われる事により……
学園が、多大な社会貢献をする実績にもなる。
会場や臨時店舗の設営も学園の備品を使用したり、参加者の自己負担。
なので、開催費用もさしてかからない。
一番懸念したのは各組織、または個人へ協力を仰ぐ事であったが……
これとて難度は高くなかった。
事前の打合せにより、アデライド、ルウが中心となって動いたが……
ふたりが培った人脈を使い、バザー実施の趣旨を告げると、
フランソワーズの読み通り、
誰もが「ぜひ協力する」と前向きに応じてくれた。
初めてこの企画を聞いた時、
アデライド達上級職員会は大いに期待し、楽しみとした。
そして段取りを進めるうちに、バザー成功を確信したのだ。
バザー開催の発表後、
一番盛り上がったのは、やはり参加資格を持つ生徒達であった。
これまたフランソワーズの予想通りである。
何せ、最低でも倍額の価値がある商品を……
まるで宝物探しのように、楽しみながら購入出来るチャンスなのである。
己の魔法、審美眼、そして積み重ねた知識次第……
それらを駆使した結果として、とんでもない魔道具を手に入れられるかもしれない。
そう考えたら、期待でわくわく感が止まらないと言っても過言ではなかったのだ。
加えて……
親しい同級生、友人、先輩、後輩……
気の置けない 仲間達と楽しくじっくり買い物が出来る。
学園のキャッチフレーズ通り、
購入した商品が『青春の記念』となる事は間違いない。
また今回の売り主は全てが安心出来る相手である。
脅されてぼられたり、騙されて盗品を掴まされる心配は皆無だ。
当然、忌まわしい呪われた商品など出るはずもない。
安心して楽しく買い物が出来る事が、
生徒達にとっては最大のメリットかもしれなかった。
それに生徒以外のモチベーションも大いに上がっている。
フランソワーズの『生徒ファースト』と言い切れる画期的な提案を聞き、
学園の明るい未来に想いを馳せるアデライドは勿論、
生徒達と一体になって、このバザーを成功させようとする教師達の意気込みは半端なものではない。
上手く成功すれば、秋の……
否、春秋年2回の特別企画になる可能性もあったから。
そしてこのバザーを実施し、成功させる事で間違いなく……
教師と生徒の心の距離は縮まる。
そうなれば、普段の授業にも好影響を与える事は必至だ。
『マスクドチャリティバザー』実施が発表された日の授業終了後……
立案者のフランソワーズはルウの研究室に居た。
今日も……ルウとふたりきりである。
彼がひとりになるタイミングを見計らって、フランソワーズが押しかけたのだ。
『親友』へあいさつ代わりの熱いハグをした後、
フランソワーズは改めて頭を差し出した。
そう、ジョゼフィーヌがいつもして貰っているように、
フランソワーズも今回のご褒美として、ルウに頭を優しく愛撫して欲しいのだ。
ルウはそんなフランソワーズの気持ちを分かっている。
自身が……
報われないルシフェルへの熱い恋心を抱えている悩みや葛藤を、少しでもルウに癒して貰いたい。
『友達以上恋人未満』であるルウとの関係を存分に味わう。
そうする事で……
自暴自棄となり、取り乱し、暴走しないよう気持ちのバランスを保っている。
フランソワーズが『悩める乙女達の守護者』月の女神レヴェナであるのと同様に、
ルウは今や、フランソワーズの『心の守護者』なのだ。
希望通り、頭を撫でて貰った後、フランソワーズは再びルウへ抱き着いた。
そしてルウの耳下へ熱く囁く。
「ルウ、私も中々、やるでしょ？」
「ああ、凄いよ、レヴェナ。大したものさ」
答えたルウの顔をフランソワーズ、否、レヴェナは熱く見つめる。
それはルウへの愛情だけではない、
『乙女の守護者』として、使命感に裏打ちされた強い意志の眼差しでもある。
「うふふ、私頑張る。生徒達が喜ぶ笑顔を見るのは凄く嬉しい。それに来年、貴方と一緒に働きたいから」
「おう！」
「ふふ、それに、教師は私の天職だもの！」
「分かった、レヴェナ。待ってるぞ」
「じゃあ、ルウ！ 今日もカウンセリングがあるから、もう行くね」
勢い良くルウとの抱擁を解き、
にっこり笑ったフランソワーズは大きく手を打ち振ったのであった。
いつもお読み頂きありがとうございます。
皆様へお知らせです！
『魔法女子学園の助っ人教師』
（小説版：ＨＪノベルス様刊）
最新刊第7巻が12月21日に発売されました！！
王都でデートするルウ、フラン、ジゼルの素敵な表紙が目印です。
またジゼルの兄・王都騎士ジェローム、高貴なる4界王・火界王パイモンがイラストで初登場！
ぜひご覧になってください。
小説書籍版は既刊第1巻～6巻も好評発売中です。
店頭でお気軽に、お手に取ってくだされば嬉しいです。
『新刊＆既刊』が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
この機会に7巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。
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何卒宜しくお願い致します。
ご購入された方は、
小説家になろう様の活動報告、もしくはツイッターへ、ぜひご一報をください！
東導は感謝感激状態となります。
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WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
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