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第1,161話 「教育実習⑦」

 魔法女子学園の『実習生』フランソワーズから、

 「まだ内緒」と、ルウへ告げられたふたつの『企画』が……

 数日後、同学園の『上級職員会』へ上申された。


 外部には絶対音が漏れないよう、施錠と防音魔法で閉ざされた応接室で……

 アデライド達メンバーはフランソワーズの説明を聞き、即座に採用のOKを出した。


 理事長以外、校長代理のフラン、教頭のケルトゥリも全然反対などしなかった。

 結局、上級職員会のメンバーは3名全員が「異議なし」とあっさりOKを出したのである。


 果たして……

 教育実習生フランソワーズが温めていた企画の内容とは、一体どのようなものであろうか?


 だがアデライド達、上級職員会からOKが出ても、生徒達へはすぐに公表されなかった。

 

 もしかしたら……

 いきなり発表して、生徒達にサプライズという学園側の洒落た意図かもしれない。


 そもそも、類稀たぐいまれな天才と皆から称えられるとはいえ……

 たかが『いち実習生』の企画がどうしてすんなりと通ったのか?


 実のところ答えは簡単だった。

 

 何故ならば……

 これらの企画は『生徒ファースト』ともいうべき、生徒が喜ぶ事を第一に考えた素敵な内容であったから。

 また実施した場合、さして費用が掛からない事も追い風となった。

 

 企画が実施され、生徒が喜び、モチベーションが上がれば……

 魔法の習得成績にも反映されよう。

 

 生徒達の成績が総体的に上がれば……

 魔法女子学園の評判はとても上がるだろう。

 優秀な指導力を持つ教師陣、考え抜かれた効率的な授業カリキュラム、魔法習得に最適な施設等々……

 

 ただでさえ人気の高い魔法女子学園ではあるが、フランソワーズの企画が更に評判になれば、入学希望者の著しい増加につながるのは間違いない。

 

 アデライド達が即座にOKを出したのは、学園のメリットがはっきりしているからである。


 まだまだ理由はあった。

 『裏事情』といえるモノかもしれない。


 今回のフランソワーズの企画を了承し、実施すれば……

 彼女に対し、心情的に揺さぶりをかける事が出来る。

 すなわち学園側が『貸し』を作るという事。

 元々強い就職希望を持つ彼女は、より一層、魔法女子学園教師赴任へ傾くと。


 引く手あまたの『ゴールデンルーキー』フランソワーズを、

 魔法女子学園教師として確実に囲い込めるというアデライド達の思惑もあったのだ。


 以上の要因から、アデライド達が断る理由などない。

 通常の行事に比べ、フランソワーズの企画実施の費用がさほどかからないのも追い風となる。


 アデライドは言う。

 満足そうに柔らかい笑みを浮かべながら。


「宜しいですか、フランソワーズ。貴女の画期的な企画は、様々な要因により悩む生徒達の良き手助けとなる事でしょう。生徒達はとても多感な年頃ですから」


「はい、理事長、そう確信しております」


「それから……もうひとつの企画も凄く素敵です」


「お褒め頂き、ありがとうございます」


「いいえ、お礼を言うのはこちらの方です。生徒達が良い勉強、楽しい経験をすると同時に、当学園が社会貢献する公的機関として認識される良い機会となります。さすがフランソワーズです。素晴らしい企画であり、提案です」


 さすがにアデライドは老練である。

 ここまで来ると、最早囲い込みの為の『褒め殺し』である。


 対して、フランソワーズの表情は変わらない。


「そこまで仰って頂けるとは恐縮です」


 フランソワーズがへりくだると……

 アデライドは笑顔のまま、フランへ視線を向ける。


「フランシスカ校長代理、貴女からはフランソワーズ実習生の授業振り、勤務態度等に関して極めて良好という報告を貰っています」


 アデライドの言葉を聞き、フランも満面の笑みを浮かべる。

 返事をする声にも張りがある。


「はい! 仰る通りです、理事長」


「では改めて、フランソワーズさんご本人が居るこの場で私へ報告して貰えますか」


「はい、報告致します」


 アデライドから指示された通り……

 フランは先日からの、フランソワーズの授業振りを本人の前で報告して行く。


 ……フランソワーズの教え方はとても分かり易く、進行も円滑だという事が説明される。

 『生徒受け』が抜群だという事も合わせて……


 ホームルームと通常授業は「万全」とフランは言い、

 ルウから報告を受けた、魔道具研究の授業も盛り上がったという話も加えた。


 真面目な勤務態度も含め、いずれも申し分ない結果であり、フランソワーズにとって幸先の良い滑り出しである。


 やがてフランの報告が終わり……

 アデライドは礼を言うと満足そうに頷いた。


 そして改めて、フランソワーズへと向き直る。


「我々は元々、貴女に高評価をしております。今回の企画提案といい、実習の結果といい、やはり素晴らしいですね」


「ありがとうございます」


「フランソワーズ、貴女はこれからの魔法女子学園になくてはならない貴重な人材です」


「恐縮です」


「私の言葉が持つ意味を真摯しんしに受け止め、引き続き、自覚を持って教育実習に臨んでください」


「はい! 一生懸命に頑張ります」


 アデライドの励ましに対し、大きな声で返事を戻したフランソワーズは、

 まるで「我が意を得たり」とばかりに微笑んだのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 フランソワーズが『上級職員会』へ自分の『企画』を上申し、数日後の夕方。

 彼女の姿は生徒会室に現れた。


「皆さん、ごきげんよう」


 その時、生徒会は定例会議を行った直後であった。

 新たに生徒会長となったオレリーを始めとして、副会長のマノン、書記のリーリャ、会計担当のジョゼフィーヌ等々……

 メンバーは全員揃っていた。


 いきなり何の前触れもなく現れた美しき先輩にオレリー達は驚いた。


「あ、フランソワーズ先生」

「どうしたのですか、一体?」

「何か、生徒会にご用でしょうか?」


「うふふ……懐かしいわね、この部屋」


 フランソワーズは見慣れた室内を見回し、ふっと微笑んだ。

 オレリーの先代生徒会長がジゼル、その前の生徒会長はこのフランソワーズなのである。


「定例会議が終わった直後、お疲れのところを申しわけないのですが、少しお時間を頂けますか? 皆さんにご相談があります」


 相談とは……

 何だろう?

 オレリー達の視線が集中する中、フランソワーズはきっぱりと言い放つ。


「ちなみに『上級職員会』の許可は取ってありますので宜しければ、ご協力をお願い致します」


 フランソワーズは強い口調でそういうと、まるで大輪の花が咲いたように笑ったのである。

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