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第1,153話 「専門科目授業⑥」

 ヴァレンタイン王立魔法女子学園実習棟……

 この校舎は通常授業以外に、特別な指導が行われる場所である。


 今、行われているのは2年生の専門科目授業、魔道具研究B組。

 この授業もルウが担当を務めている。

 補佐する副担当は、1年A組の副担任アドリーヌ・コレット。

 ルウと同期で学園の教職に就いた新人ルーキーである。


 魔道具研究の授業もルウは受講する生徒達を3班に分けていた。


 A班は既に魔法鑑定士の資格を取得済みの者。

 B班は鑑定魔法発動に必要な魔力が足りており、同魔法の習得を目指す者。

 C班は例によって、呼吸法を中心に基礎訓練を徹底的に行う者。


 しかし鑑定魔法は上級召喚術、魔法攻撃術ほどの魔力量を必要とはしない。

 その為、授業が開始されてから僅かな期間で、C班所属の生徒達は目標値をクリア。

 全員がB班へ昇格していた。


 但し、この専門科目がルウの担当する授業において、最も格差があるかもしれない。

 この授業の受講生徒の中では、トップの地位を張るのが、マノン・カルリエである。

 オレリー、ジョゼフィーヌ、リーリャを含め、せいぜいランクCのライセンス所持者しか居ないA班において、何とランクBの資格を所持。

 宝石に関する知識も豊富であり、実力では抜きん出ている。


 当初、授業は呼吸法と商品知識取得の為の読書が基礎訓練として行われていた。

 しかしここで断固抗議したのがマノンであった。


 マノンは以前、主張した事があった。

 仮に鑑定魔法の才能が極めて平凡だったとしても、豊富な知識と現場経験で一人前の魔法鑑定士になれると。

 それ故、僅か50分しかない授業のうち、20分以上を読書に費やす事の『無駄』を説いたのである。

 その分、ルウとアドリーヌによる鑑定魔法の訓練や授業を希望した。

 代案として……

 自分の経験を踏まえ、生徒各自が自宅や寮で読書を行う事を推奨したのである。


 実際マノンが目標とするのは宝石鑑定に特化した魔法鑑定士だ。

 彼女の宝石に関する知識は豊富で、底知れないものがあった。

 その知識は有言実行ともいえる、彼女がプライベートの時間を使い、しっかり身につけたらしいのだ。


 結局、担当のルウと副担当アドリーヌ、マノンの3人で協議した結果……

 読書の時間は大幅に削られ、推奨書籍紹介の内容に落ち着いたのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 と、いうわけで……

 現在はルウの講義が行われている。

 鑑定魔法の基礎教授は充分行ったので、次いでルウが重要だと力説する解呪魔法ディスペルの発動方法と効用の解説が行われていた。


 魔法鑑定士に解呪魔法が必要だという根拠は、鑑定する商品が万が一、呪われていた場合、鑑定士は勿論、周囲の関係者まで巻き込み、大事故につながる可能性があるからだ。


 特に迷宮から発見される古代の遺物や宝物には、魔法や呪術による呪いがかかっている場合も多々ある。

 また商品に強く執着した者が、命を落とした無念さから、人間に害を為す怨霊と化したり、己の魂の残滓を取り憑かせる場合もある。


 但し……

 各自の才能にもよるので、世の魔法鑑定士の全員が解呪魔法ディスペルを習得してはいない。


 だが冒険者ギルドや商業ギルド、大手や中堅の商会など……

 様々な商品の買い上げや仕入れを行う機関や店は解呪魔法ディスペルを習得した上級魔法鑑定士を超が付くほど優遇するメリットもある。


 解呪魔法ディスペルの根源となる葬送魔法とは、基本的に迷える魂を浄化し、解放する魔法である。

 主に創世神に仕える司祭や僧侶が行使する魔法だ。


 そもそも解呪魔法ディスペルは葬送魔法から派生、発展したものである。

 ここで……

 少し補足しておこう。


 おおやけにはしていないが、葬送魔法はルウが得意とする数多の魔法の中のひとつなのだ。


 ルウが初めてフランと深い森で出会い、生命の危機に彼女を救った時……

 異形の魔物からフランを守り、命を失った騎士達の崇高な行為に心を打たれ、彼等の魂を遥か天へ送った。

 またルウの葬送魔法の威力は殉死した人間に止まらなかった。

 生きた人間に害を為す夥しい数の不死者アンデッドは勿論、北の大神の妻であった大女神の魂の残滓ざんしをも屠ったのである。


 閑話休題。


「皆、良いか? 解呪魔法ディスペルを習得するのにはまず葬送魔法の基本を身につける事が必要だ」


 ルウの言葉を聞き、大きな反応をした生徒がひとり……

 やはりというか、マノンであった。

 またも大きな声で挙手をし、質問を求める。


「ルウ先生!」


「何だ、マノン」


解呪魔法ディスペルを習得する為には葬送魔法が必要不可欠なんですよね?」


「絶対というわけではないが、習得していた方が解呪魔法ディスペルの効果が大きいんだ」


「成る程! 解呪魔法ディスペルを行使出来れば、人に害為す呪いの蔓延を阻止する魔法鑑定士になれるのですか」


「だな!」


「ああ、なんて素敵なのでしょう。世の中の為にはなるし、雇われる待遇だって一般魔法鑑定士の条件と比べれば段違いなんですよね?」


「ああ、そうだな。解呪魔法ディスペルを習得した魔法鑑定士は引く手あまたになると思う」


「ルウ先生! 決めました!」


「何だ、マノン」


「私、必ず解呪魔法ディスペルを習得致します。ここではっきりと全員へ宣言しますわ」


「おお、その意気だぞ。皆も聞いていた通りだ。意欲がある者はマノンを見習い、解呪魔法ディスペル習得を目指すように」


「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」


 オレリー、ジョゼフィーヌ、リーリャも元気に返事をした。

 ルウの話は尤もだし、マノンの主張にも強く共感出来たからだ。


 一方……

 マノンの脳裏にはひとりの人物が浮かんでいた。

 

 葬送魔法といえば、創世神教会。

 創世神教会といえば、ブレヴァル枢機卿。

 ブレヴァル枢機卿の孫娘といえば、防御魔法オタクのアニエス・ブレヴァル……

 

 ……じゃないわ!

 違う!

 同じ防御魔法オタク、姉のステファニーよ!


 マノンは以前、おしゃまなアニエスに酷くいじられた事を思い出し、慌てて首を振った。

 

 違う。

 アニエスは来年、魔法女子学園へ入学予定の年下の子。

 親友ステファニー・ブレヴァルの妹なのである。


 そう、今、学園に居るのは同学年で私の親友ステファニー・ブレヴァル。

 ルウ先生だけではなく、ステファニーからも葬送魔法の手解ほどきを受ける。

 そうすれば万全。

 

 スムーズに短期間で葬送魔法を学ぶ。

 作戦が上手く行けば、解呪魔法ディスペルの習得も万全に!!


 専業の魔法鑑定士にならない場合……

 将来の進路を切り替えても行ける。

 専門科目として生徒へ指導する魔法女子学園の教師希望にする!

 

 否、行けるどころじゃない!

 アデライド理事長に私の実力がしっかりと認められ、学園の教師に就職出来る可能性がぐんと上がる。


 と、なれば!

 宿命のライバル、オレリーさんに勝てる!

 教師志望の就職競争に、必ず勝てるわ!


 ぎゅっと!

 想像して『勝利』の手応えを感じ、固く拳を握ったマノンは……

 遥かなる希望に心躍こころおどらせていたのである。

いつもお読み頂きありがとうございます。


皆様へお知らせです!


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