第1,148話 「専門科目授業②」
特別閑話を楽しんで頂けましたでしょうか?
今回から『本編』へ戻ります。
何卒宜しくお願い致します。
ルウが担当する上級召喚術A組。
この授業に必須の魔道具『ペンタグラム』の説明は終了した。
だが、授業はまだ続いている。
この専門科目・上級召喚術の最終目標は、使い魔を遥かに超える『中級以上の魔族』を召喚し、完全に従える事。
だが術者の実力が召喚対象のレベルに伴わない場合、下手をすれば命をも失いかねない危険な状況に陥る。
かつてナディアが召喚魔法の訓練中、誤って異界へ通じ、魂を糧とする大悪魔ヴィネを呼び出してしまったように……
ここでもまずは基本中の基本から。
ルウの授業スタンスは変わらない。
だから、はっきりと告げる。
生徒の実力をはかる為、各自が呼び出した使い魔とのコミュニケーションを重視すると。
ズバリ!
ルウの言うコミュニケーションとは、使い魔との『心のふれあい』だ。
敢えてドライに言うのなら、使い魔に対する制御力の大幅アップ。
使い魔が術者の指示に素直に従い、迅速に且つ的確な行動をとるかどうか……
このコミュニケーションを見事に実践した暁に、ひとつ上の新たな召喚レベルへ挑める事となっている。
「さあ、一時解散。各自決められた課題クリアに挑んでくれ」
「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」
全員で授業を聞いていた生徒達は、ルウの指示に従い、大きな声で返事を発すると、班ごとに分かれて行く。
使い魔を召喚済みのA班、アンノウンを召喚したB班は制御力アップへ挑む。
しかし召喚魔法未発動のC班は呼吸法、召喚魔法の言霊詠唱の練習を継続しながら、召喚魔法の初歩『使い魔召喚』の成功へ挑む。
オレリー、ジョゼフィーヌ、リーリャ、そしてマノン、ポレットを含めたA班所属の生徒達は……
召喚魔法の言霊を流暢に詠唱し、それぞれの使い魔を呼び出した。
担当のルウと副担当のカサンドラはその様子をじっと見守っていた。
制御力アップの課題とは『使い魔』を呼び出す召喚魔法発動安定の訓練も兼ねているのは言うまでもない。
正確且つ円滑な詠唱で忠実な犬の使い魔ジェシカを呼び出したのはオレリー。
ジョゼフィーヌも同様に美しい白銀の鷹プラティナを空中にはばたかせている。
可憐な栗鼠風の使い魔クッカを肩に乗せているのはリーリャ。
一方、マノンも負けてはいない。
彼女の使い魔は美しい純白のペルシャ猫である。
そして、小型ながら精悍な梟の使い魔を呼び出したのはポレットであった。
まだまだ召喚魔法に不慣れな生徒達は……
熟練の術者とは違い、彼女達の希望にぴったりな使い魔を自在に呼び出す事は出来ない。
従っている使い魔は、ランダムで異界から呼び出された者達なのだ。
しかし中には『わけあり』の使い魔も居る。
ジョゼフィーヌの使い魔プラティナは、ルウの従士・巨大なグリフォンの姿をした鳥の王『ジズ』の眷属なのである。
またリーリャが呼び出した、一見小栗鼠風の使い魔クッカの正体は、召喚した術者に莫大な富と高い名声をもたらすといわれる伝説の魔獣カーバンクルなのである。
既にプラティナとクッカは、主との間に固い心の絆を結んでいる。
今回の授業でルウの与えた制御力アップの課題クリアは容易いといえよう。
数多あるブランデル家、家族だけの秘密……
このプラティナとクッカの件は、ルウの妻であるオレリーだけは承知している。
だが……
マノンを含めた他の受講生徒達が、もしもこの真実を知ったなら……
ジョゼフィーヌとリーリャへ羨望の眼差しを投げかけるのは勿論、激しい嫉妬の炎に身を焦がされるであろう。
しかしこれが突きつけられた厳しい現実。
魔法使いにとっては宿命ともいえる『才能の格差』なのだ。
さてさて!
生徒達は早速、呼び出した使い魔へ指示を出す。
先述したが……
『使い魔』は大きく分ければ、陸上型と飛行型に分けられる。
基礎となる使い魔への指示は、「走れ」、または「飛べ」
「停止」、または「降下」
そして……帰還を指示する、「戻れ」という言霊となる。
「戻れ」には、術者の下へ戻るのと、使い魔が棲む異界へ帰すふた通りの指示があり、使い分ける必要がある。
生徒達は、この3種類を完全に習得し、使い魔へ『基本的な動き』を自在に指示出来るようにするのだ。
そもそも使い魔の役割は、簡単な偵察及び軽量物のお運びである。
例えば小さな装身具程度の荷を指定された相手や場所に運搬する。
また手紙を託す事でメッセンジャーの役目も充分こなす事も出来る。
但し、一度に難解且つ複数の指示を与えたりすれば、使い魔は混乱する。
また意味もなく長時間の使役を行うと好感度が下がる。
混乱や好感度の低下は、術者への忠誠心に影響するので十分な注意が必要なのだ。
「よし! ジェシカよ! 走れ!」
お座りして待機していたジェシカ。
オレリーが鋭い声で命じると、ジェシカは即座に立ち上がり、軽く吠え、矢のように走り出す。
もしも声が届かなくても、使い魔は術者の魔力波に反応する。
術者の能力にもよるが、普通は約200mらいまでなら、離れていても充分指示が出せるのである。
またルウのように念話が使えれば、更に数キロ先の遠隔地に居る使い魔へも指示が出せる。
「よし! 停止!」
オレリーの指示に対し、ジェシカはとても忠実だ。
50mほど走った場所で、間を置かず「ぴたり」と止まる。
命令通りに止まったのを見たオレリーは、満足そうに微笑み、最後にジェシカを呼び戻す。
「良い子ね! ジェシカよ、戻れ!」
瞬間!
ジェシカは飛ぶように地を駆け、オレリーの下へ戻った。
ここまで完璧ならば課題をクリアしているレベルだ。
ルウは拍手し、オレリーを称える。
「オレリー、良くやった」
「ばっちりです、ルウ先生」
「OK! さあ次はジョゼだ」
「はいっ! プラティナよ、飛べ!」
ジョゼフィーヌの指示と共に、美しい白銀の鷹は屋外闘技場から、素晴らしい速度で空高く舞い上がったのである。
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