第1,134話 「ジゼルとナディアのサプライズ②」
愛読者の皆様!
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唸り悔しがるナディアを見て、ジゼルは苦笑した。
「おいおい、ナディア。そう悔しがるな。私達があの店へ来たのはほんの偶然だ」
「…………」
「確かあの時はバルバトス殿の店の手伝いが午前番だったから、あの書店へ行く流れになった。そうそう、思い出したぞ! 3人で何か良い魔導書がないかと書店巡りをする予定だったのだ」
「…………」
返事をせず、まだ無言のナディアを見て、今度はジゼルが焦れ、拗ねたような表情を見せる。
「いい加減にしろ、ナディア。お前だって、私の知らないところで旦那様からいろいろ良くして貰ったり、手解きを受けている筈だ」
「う!」
図星を衝かれ「確かにジゼルの言う通りだ」ととナディアは思う。
今迄ジゼルには数え切れないくらいの気遣いをして貰っている。
だが、何より自分が好きな書物を扱う書店を……
それも特別な書店を自分が知らず、ジゼルが知っているという事が素直に納得が出来なかったのだ。
「ということでお互い様だ。それより早く行こう」
「…………」
相変わらず返事をしないナディアを諦めたのか、ジゼルはもう一方的に話して来る。
「おっと、大事な事を忘れていた。事前にあの店がどのような店か、お前に説明しておこう」
「…………」
「店の名は幻想、店主は……悪魔だ」
「えええっ!? て、店主が? あ、悪魔!? そ、そんな!」
「うむ、悪魔だ。名をオロバスという。だが旦那様にしっかりと忠誠を誓っている」
「…………」
「私自身、会ったのは一度きりだが……オロバスは、信用出来ると思う」
「な、何故? 一回会っただけなのに?」
「オロバスは悪魔だが、人の想いを大切にしてくれると分かったからだ」
「人の想いを?」
「ああ……オロバスの持つ不可思議な魔導書により、私は今は亡きカルパンティエのお祖父様、若き日の兄上に会う事が出来た」
※第351話参照
「…………」
「……私がどんなに心癒された事か……あの時は本当に嬉しかった」
「…………」
「私だけではない。オロバスはフラン姉……そして旦那様の旧き記憶を呼び覚まし、癒しを与えてくれたのだ」
「…………」
「それにな……」
「…………」
「ナディア、今日、お前を幻想へ連れて行って欲しいと言ったのは旦那様なのだ」
「え?」
「旦那様がオロバスを信用しているのなら、問題ないと私は思う」
「で、でも……」
「既に旦那様から、私とお前が訪ねるとオロバスへ連絡は行っている。だから私とお前が書店通りに来たら、現世と異界が繋がれたのだ」
「…………」
「さあ、行くぞ!」
ジゼルはそう言うと、まだ迷うナディアの手を掴み、幻想へ足を踏み入れたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「う! うわあっ!!!」
思わずナディアは叫んでしまった。
入り口から店内へ入ると、中は想像を超えた不思議な世界であったから。
高さが10mにも及ぼうかという書架が巨大な城壁のように数え切れないほど立ち並び、中にはぎっしりと新旧様々な本が詰まっている。
床はふっくらとした赤い絨毯が敷かれ、少し向こうには本をゆっくりと読めそうな、いくつかの重厚な木製のテーブルと豪奢な肘掛付き長椅子ソファが置かれていた。
テーブルの上には紅茶のセット一式まで置いてある。
まるで書店と言うよりも、貴族や富裕層が利用するサロンか、大学の大型図書館に近い施設である。
一体、この小さい平屋の建物のどこにこのような内装が造れるのだろう。
フランやジゼルが初めて幻想を訪れた時と同じ驚きを、ナディアも感じていた。
と、ここで。
『いらっしゃいませ、オロバスでございます。ようこそ我が素晴らしき店へ! ジゼル様、ナディア様』
ふたりの心に響いたのは念話である。
ジゼルもナディアもまだ念話は使えない。
但し、ルウのように念話を完璧に使いこなせる術者が上手く波長を合わせれば会話をする事は出来る。
いつのまにか、法衣姿をした中肉中背、壮年の男が立っていた。
ふたりに一礼をする。
異相ともいえる動物的な顔に独特の特徴がある男であった。
『オロバス殿、ジゼルです。ご無沙汰しております。今日は夫ルウの指示通り、同じ妻であり親友であるナディアを連れて来ました』
『はい、ジゼル様! ルウ様からは承っております』
『うむ、宜しくお願い致します』
『はい! 既に私が店内のレイアウトをいじりました』
『レイアウトを?』
『はい! この店の数千万あるうち、おふたりがいらっしゃる目の前の書架100には、ヴァレンタインの言葉で書かれた書物が並んでおります』
到底実施不可能な事を、まるで簡単な片付けをしたかの如く、オロバスはあっさり言い切った。
多分、100の書架も更にオロバスが厳選したものが並べられているに違いない。
当然ジゼルは喜んだ。
破顔し、オロバスへ礼を言う。
『おお、この広大な店内をいちいち探し回らずに済むという事か! それは助かった、お心遣い痛み入る』
『ははは、なんの、なんの。何か御用がありましたらお呼びください。テーブルのお茶もご自由にお飲みください』
オロバスはそう言うと、すっと消えてしまった。
信じられない光景、あまりにも不可思議な世界……
呆気に取られているナディアへ、ジゼルはにこにこして声をかける。
「よし! ナディアの気に入る本が絶対にあると思うぞ。早速探そう」
「え? だ、だけど?」
書架の高さは10m以上ある。
それなのに、この店には梯子ひとつ備えられていないのだ。
一番上の棚にある書物など読むどころか、取れやしない。
「大丈夫、楽勝だ」
ジゼルは何の問題もないというように、晴れやかに笑ったのである。




