第1,104話 「ブレヴァル家の平穏㉔」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』
(HJノベルス様刊)
特報!
1月25日に発売された第5巻に続き……
早くも! 『第6巻』の発売が決定しました!
本当にありがとうございます。応援してくださる皆様へ特大感謝です!!!
発売日等、詳細は未定です。
書籍版は既刊第1巻~5巻も好評発売中です。
店頭でお気軽に、お手に取ってくだされば嬉しいです。
既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
この機会に5巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。
ぜひ当作品を「ぐいっ!」と後押しして下さい。
何卒宜しくお願い致します。
既刊をご購入された方は、
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東導は感謝感激状態となります。
何卒宜しくお願い致します。
そして!
『コミカライズ』連載開始しております。
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月刊「Gファンタジー」にて、
1月18日発売2月号より連載が始まっています。
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第1話同様、『センターカラー掲載』です。
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WEB版、小説書籍版と共に、存分にお楽しみくださいませ。
ルウに促され、マティアスも治癒士として、子供達のケアに参加した。
……孤児院で治療にあたるのは、これで二度目だった。
最初は二十代の若かりし頃、創世神教会の業務の一環として参加した。
はっきり言って、「全く気乗りがしなかった」という記憶がある。
縁もゆかりもない子供の相手など、ただただ面倒なだけであったから。
単に課題のひとつとして、事務的にこなしたのである。
当時の院の子供達も、あまり喋らず、マティアスに恐る恐る接していた気がする……
しかし今回は違っていた。
自然と、優しい笑顔が満ち溢れるマティアスに子供達も懐いてくれた。
無邪気な笑顔で、いろいろ話しかけて来る。
子供達が話す内容は様々である。
昨日あった楽しい事、好きな食べ物の事など、たくさんたくさん……
マティアスは愛娘達の幼い頃を思い出し、懐かしくてたまらない。
目の中に入れても痛くないくらい、可愛がっていた……
と記憶を手繰る……
結果、来る子供、来る子供の話を全て聞いてしまうので……
マティアスの治療は ひとりの子供に時間がかかり過ぎ、後がつまってしまいがちであった。
だが妻パトリシアが、そして愛娘ステファニーとアニエスの姉妹が上手くサポート。
マティアスに代わって、はしゃぐ子供達の話相手となり、次の子の順番が『ほどよいタイミング』で来るようにしてくれた。
妻はともかく、何故、娘達が?
驚いたマティアスが聞けば……
ステファニー達へ、
「両親をしっかり手伝うように」と、ルウが指示を出したという。
暫くして……
子供達全員の治療が終わり、中庭でお昼となった。
ルウの妻達が料理を作って持参してくれたので、芝生の上に敷物を広げ……
エクトル達テンプル騎士団員、リベルト達鋼商会の者も含め、全員でピクニックのような楽しい食事となった。
意外にもと言ったら、失礼かもしれないが……
ルウの妻達の料理の腕は見事なものであった。
どこかで誰かが、「モーラル姉の料理は最高!」というのを聞き……
マティアスは食べながら、調理するモーラルの姿をイメージし、思わずにっこりしてしまう。
今度は、自分が得意な卵料理を院の調理場で作り、子供達へふるまおうかとも思う……
楽しい食事、そして食後の落ち着いたお茶の時間も終わり……
慰問に来た者達は、院の子供達と遊ぶ事となる。
一体、何をして遊ぶのか?
マティアスが興味津々で注目していると……
ルウが用意していたのは、布製の球体であった。
大きさは、人の拳より少し大きい程度。
色はといえば、目にも鮮やかな赤。
今迄にマティアスは見た事もないものである。
材質は……何だろうか?
僅かに魔力を感じるから、魔道具なのだろう。
思わずルウに聞いた。
「ルウ君、それは?」
「はい、魔球です」
「魔球? 一体どうやって使うのかね?」
「簡単です、投げ合うだけですから」
「な、投げ合うだけ?」
「そうです。本来学園で授業用に使っていますが、子供用に材質も、極めて柔らかいもので作り直しました。だから怪我もしません。念の為、顔だけには投げないよう指導してくれますか?」
「指導? あ、ああ……まあ、構わないが……」
こんな球を、ただ投げ合うだけ?
何が楽しいのだろう?
マティアスは甚だ疑問であったが……
と、そこへ彼の袖を引く者が居た。
「し、しきょうさま、あそぼ……」
……小さな声で告げ、マティアスの袖を掴んでいたのは、まだ7歳くらいの幼い女の子だ。
先ほど救護室で、彼と一番話し込んだ院の子供であった。
名はリュシーといった筈だ。
「貴方、この子と……リュシーと遊びましょう」
パトリシアが、すかさず声をかけてくれた。
夫婦とリュシー、3人で、この球を投げ合おうというのだ。
「あ、ああ、やろう」
妻のフォローが嬉しく、マティアスは笑顔で頷き、立ち上がったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
とても意外であった。
何が意外かといえば……
この魔道具『魔球』を投げ合うのが、楽しいのだ。
つい童心へと帰ってしまう。
マティアスが投げても、パトリシアが投げても、幼いリュシーが投げても……
不思議な仕掛けがあるらしく……
柔らかい布のような材質で作られた魔球はふわふわと弧を描き、投げた相手の胸にそっと収まる。
また飛び方も決まっておらず、高く上がったり、地を這うように低く飛んだり、様々で予想がつかなかった。
魔球が、ルウの自作だと聞き、マティアスは感心すると同時に……
無心で投げ合っていると、愛する妻は勿論、今日初対面の筈のリュシーまで……
心と心の距離が、どんどん近くなって行く気がする。
ふと見やれば、妻も子供のように無邪気な雰囲気を醸し出している。
マティアス夫婦とリュシーは、まるで実の親子のように仲睦まじい。
その姿を見て、何と!
ステファニーとアニエスが、ルウとの投げ合いを中断し、参加を申し出て来たのだ。
こうして……
マティアス夫婦、ステファニー、アニエス、リュシーの5人は輪になって、無心にひとつの球を投げ合う。
リュシーは勿論、妻も愛娘達も満面の笑みを浮かべている。
ささやかな幸せかもしれないが……
マティアスは、満足して、大きく息を吐く。
ふと、気が付けば……
リュシーが魔球をぎゅっと抱え、立ち尽くし、じっと自分を見つめている。
顔を見れば、何故か、リュシーの目は潤み、今にも泣きそうだ……
マティアスはとても気になって尋ねてみる。
楽しく魔球を投げ合って、悲しい理由など無い筈なのに……
「ん? リュシー、どうした?」
「ねぇ……しきょうさまは、またきてくれるの?」
どうやらリュシーは、この後に訪れるマティアスとの別れを察し、寂しくなったようだ。
マティアスは、即座に笑顔で頷いた。
そう遠くない日、再び慰問に来ると、もう決めたから。
「ああ、また来る」
リュシーの願いに応え、マティアスは、再訪を約束してくれた。
だが、リュシーの目には、大粒の涙があふれていた。
「おいおい、リュシー、何故泣く?」
「だ、だって……しきょうさまとおくさまは……リュシーの、し、しんだパパとママみたいなの……やさしいの……」
自分と妻が……死んだパパとママみたいだから……
切ない眼差しをなげかけるリュシーの言葉を聞き、マティアスは、心が「じん」と熱くなる。
確か、この子は……去年、両親が病で亡くなり、他に身寄りがなく、ひとりぼっちとなり……
やむなく孤児院へ引き取られたと、院長から聞いた……
リュシーのとても不幸な身の上に、心から同情したと同時に……
マティアスは、異界で告げられたモーラルの言葉を実感している。
この世界には、家族以外にも自分を必要としている人が居る。
確かに、目の前に居るのだと……
そしてマティアスは、予感がする。
リュシーだけではないと。
彼女のように『自分を必要としてくれる人』が、これからもたくさん現れると……
「ああ、リュシー! 私と妻は、必ず来るよ! すぐお前に会いに来る、そしてまた美味しいものを食べたり、こうして楽しく遊ぼう! 約束だぞ!」
「そうよ、リュシー、私は夫と来ますよ。約束するわ!」
「私も来ます」
「私だって!」
パトリシアもマティアス同様、幼いリュシーへ慈しみの笑顔を向けた。
ステファニーとアニエスの姉妹も優しく微笑んでいる。
「しきょうさま、おくさま、おねえちゃん、あ、ありがとう!」
再会の希望が叶い、心の底から嬉しそうに微笑むリュシーへ……
マティアス夫婦と愛娘達は、それ以上の笑顔で応える事が出来たのであった。
いつもご愛読頂きありがとうございます!
長らくご愛読頂いた『ブレヴァル家の平穏』パートは、今回の話で終了です。
次回からは、新パートが始まります。
『魔法女子』の連載はまだまだ続きますよ。
そして、東導 号作品、愛読者の皆様へ!
別作品も宜しくお願い致します。
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ぜひお楽しみください。
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※1月27日更新分で、無事完結致しました。
長らくのご愛読、ありがとうございました。
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応援宜しくお願い致します!




