第1,102話 「ブレヴァル家の平穏㉒」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』
(HJノベルス様刊)
特報!
1月25日に発売された第5巻に続き……
早くも! 『第6巻』の発売が決定しました!
本当にありがとうございます。応援してくださる皆様へ特大感謝です!!!
発売日等、詳細は未定です。
書籍版は既刊第1巻~5巻も好評発売中です。
店頭でお気軽に、お手に取ってくだされば嬉しいです。
既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
この機会に5巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。
ぜひ当作品を「ぐいっ!」と後押しして下さい。
何卒宜しくお願い致します。
既刊をご購入された方は、
小説家になろう様の活動報告、もしくはツイッターへご一報をください!
東導は感謝感激状態となります。
何卒宜しくお願い致します。
そして!
『コミカライズ』連載開始しております。
株式会社スクウェア・エニックス様の刊行雑誌、
月刊「Gファンタジー」にて、
1月18日発売2月号(既に発売中)より連載が始まっています。
藤本桜先生の筆致で描かれる華麗な魔法世界を体感してください。
※本日! 3月18日発売『4月号』掲載の『第3話』は、
第1話同様、『センターカラー掲載』です。
書籍版と共に、存分にお楽しみくださいませ。
普段の動作からは信じられないくらい、脱兎の如く駆けだしたステファニー達姉妹の後を追い……
マティアスとパトリシア夫婦、そしてエクトル達テンプル騎士も孤児院本館へと足を向けた。
何故か、本館の周囲には、普段は遊んでいる院の子供達の姿が一切見当たらない……
代わりにというか、数人の男達がまめまめしく、本館周辺の清掃作業をしている。
だが、男達は孤児院の職員ではないらしい。
服装が、創世神教会が定めた既定の法衣ではないからだ。
王都市民が好む一般的なブリオーを着ていた。
マティアスがさりげなく顔を見れば、掃除をしている男達は、皆いかつい。
目付きも鋭く、射貫くような視線を送っていた。
彼等とは、あまり……関わり合いにならない方が良さそうだ。
後に続くパトリシアを目で促し、マティアスは足早に通り過ぎようとした。
と、その時。
「あの……」
背後から、低い声がかかった。
マティアスが振り返れば……
清掃をしていた男のうちの、ひとりが立っている。
「失礼ですが……マティアス・ブレヴァル様ですかね?」
掃除をしていた男は、意外にも、いかつい顔に柔らかな笑みを浮かべていた。
どうやら、マティアスを知っているようだ。
だが、マティアスには全く見覚えがない男である。
当然、対応は決まっている。
「いきなり聞かれても、……君に名乗る必要はあるのかね?」
相手の無作法さに、表情をけわしくしたマティアスは、本能的に背後のパトリシアを庇うように立ちふさがった。
パトリシアも身を固くしているのが、気配で分かる。
愛しい妻を守らなければ! という思いが強くなる。
すわ、主の危機!?
エクトル達テンプル騎士も急ぎ駆け付け、マティアス夫婦を守るように囲み、相手の男を見据えた。
すると、清掃をしていた他の男達も駆け寄って来た。
双方が、一触即発!?
とマティアスは危惧した。
しかし……
「や! 何か、申し訳ないです。俺、人相が悪いから」
頭を掻き、屈託のない笑顔を浮かべ、最初の男が再び話しかけて来た。
だが、マティアスは緊張を解かない。
主の前に、テンプル騎士団長のエクトルが立ちふさがり、男を見据える。
「貴様、何用だ?」
「いやね、ルウ様から、枢機卿のご子息様がいらっしゃるとお聞きしていたので」
「何? ルウだと? もしやルウとは、ルウ・ブランデルか?」
男の言葉を聞き、エクトルが怪訝な顔をする。
ルウと聞いてピンと来たようだ。
そう、主から『身辺調査』を頼まれていた男だから。
この孤児院とルウの繋がり、そして主が来訪するのを何故知っているのか、腑に落ちない。
「どうして、ルウが……知っているのだ?」
ここまでやりとりをしても……
エクトルは警護する主の名と身分を明かさない。
守護者としては当然の事である。
しかし……マティアスはすぐに気付いた。
この男達へ、自分の孤児院訪問を告げた事に、何か意味がある。
詳しい事情はまだ分からないが、また何か、ルウに考えがあるのだと。
そして、マティアスは自分自身が変わった事に気が付いていない。
これまでは、目の前のやくざな男など、真っ先に避けるタイプなのに。
護衛役のエクトルに全てを任せ……
絶対に関わり合いにならない下賤な者と見下していたのに。
あの異界でモーラルと話してみて、彼女の本質に触れたのと同様、
ルウの意図ならば、この男と話してみたいと興味も持った。
いかつい顔に似合わない、男の澄んだ目と笑顔を見て……
危険を感じない、根っからの悪人ではないと、感じたのも後押しした。
「エクトル! 大丈夫だ」
「え?」
驚くエクトルの前に、マティアスは「ずいっ」と出た。
そしてはっきりと名乗った。
「確かに、私はマティアス・ブレヴァルだ。そういう君は誰だ?」
「ああ! 名乗らず失礼致しました! 俺はリベルト・アルディーニって、ケチな野郎です。この王都で鋼商会というちっぽけな店の会頭をやらせて頂いておりやす。今後とも宜しくお願い致します」
マティアスは、見た目に似合わないリベルトの丁寧な挨拶に驚いた。
やはり……見た目とは違う。
驚いて、思わず噛んでしまう。
「ほ、ほう、き、君は……リベルトというのか? それでルウとはどのような知り合いなのかね?」
「いやいや、知り合いどころか……ルウ様は大の恩人でさぁ!」
「え? ルウが大の恩人?」
「はい! 大恩人っす。足を向けて寝れません」
目の前のいかつい男と、魔法女子学園教師ルウの繋がり……
戸惑うマティアスではあったが、何となく……心が温かくなる。
男が大の恩人だと、ルウを慕う理由は全く分からないが……
リベルトという男を、つい自分に重ねたからである。
「そうか……」
思わず微笑んだマティアス。
と、そこへ、この孤児院の院長を務める司祭がやって来た。
以前この司祭には創世神教会で何回も会った事があり、マティアスとは顔見知りである。
院長は満面の笑みを見せ、お辞儀をする。
「マティアス様! お忙しいところ申し訳ありません。ようこそ、いらっしゃいました」
そして、何と!
傍に居たリベルトが、頭を下げた。
そして、気安げに院長へ声をかけたのである。
「お疲れ様です、院長先生!」
すると!
意外にも、院長も晴れやかな笑顔で応える。
そして、本館の周囲をぐるりと見渡す。
「おお、リベルト、完璧だな。すっかり綺麗になった。みんな、いつもすまない、ご苦労様」
院長の言う通り……
リベルト達の働きで、孤児院本館周辺の清掃は完璧。
ゴミひとつ落ちていない。
「え?」
マティアスはまたも驚いた。
どうやら院長とリベルトは旧知の仲らしいのだ。
「失礼致しました、マティアス様。実はここに居るリベルト達は、当院の出身でして、最近は良く慰問に来てくれるのですよ」
「はい! ガキの頃、先生だけには庇って貰いましたよね? ……俺、当時の院長を思いっきりぶん殴って、飛びだしちまいましたから」
リベルトの目が遠くなる。
どうやら遠い記憶を手繰っているようだ。
院長も同様で、懐かしそうな面持ちで、目が遠くなっていた……
「ああ、……私はその時、一番下っ端だった。お前が辛くあたられるの見て、何とか助けたかったが……結局、何も出来ず、傍観していただけだった。本当にすまなかった」
「いや、謝らないでくださいよ。先生はとても優しかったですから……あの院長に内緒で、良くお菓子を貰って、慰めて貰いましたっけ……」
「ああ、そうだったな。だがリベルト……お前は辛い生活に耐え切れず、大きな事件を起こし、この院を飛び出して、そのままずっと音沙汰がなかった」
「……先生はとても良くしてくださったのに……裏切ってしまって、本当にすんません」
「ああ、お前はまだ幼かったし、あの酷い扱いなら無理もない……でも私はとても心配した。暫くして……お前が悪辣な愚連隊に入って、暴れているという悪い噂も……相当聞いた……辛かった」
「うう、それを言われると俺も辛いですね」
「だが、良く更生したな。もう大丈夫さ! リベルト! 今やお前は立派な男だ! 自信を持て!」
「うっす! そう言われると凄くこそばゆいですけど、今は何とか、真っ当に生きてますぜ!」
「いや、真っ当どころではない! とても良い噂をあちこちで聞く。会う者誰もが言うのさ! 王都市民の為に、リベルト達が一生懸命働いているとな。私はとても誇らしい!」
やはり院長とリベルトは昔からの知り合いで、且つ仲がとても良いらしい。
熱い昔話が更に盛り上がりそうになり、ハッと気が付いた院長は苦笑……
マティアスへ深々と頭を下げた。
「つい……昔話をしてしまって……度々、申し訳ありません。本当に失礼致しました。ではマティアス様! 皆様! こちらへどうぞ。まずは事務所へ」
どうやら、リベルト達はこの孤児院の出身者で、昔はともかく、今は害のない男達らしい……
となれば、安心したマティアス夫婦が気になるのは、ステファニー達、愛娘の行方だ。
「分かった……ところで、院長。私の娘達は今どこに?」
「はい! 本館事務所で、お元気よくご挨拶された後、ルウ殿の事をお聞きになりましたので、ウチの職員に案内をさせました」
「案内を? ルウのところに?」
「ええ、現在ルウ殿は当院の救護室にいます。お嬢様達も多分、救護室でしょう」
「救護室……」
「はい! ルウ殿には治癒士として、お手伝いして頂いております」
「ふうむ、ルウが、治癒士として手伝いか……」
「はい! そんなに頻繁ではありませんが、……いらっしゃる時は、いつも奥様達とご一緒に、院の子供達の健康診断と、治療にご尽力をして頂いております」
「そ、そうなのか……むう」
ルウは……この孤児院へ治癒士として、自分の妻を連れ、慰問に来ていた。
まるで今日の自分達夫婦と一緒だ。
先ほどのリベルトといい、マティアスには、だんだん……ルウの意図が分かって来た。
そして、モーラルが言っていた事が、現実となりつつあるのを感じている。
大きく頷いたマティアスは、妻とエクトル達を促し、院長の後に続いたのである。
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