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第1,098話 「ブレヴァル家の平穏⑱」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』

(HJノベルス様刊)

特報!

1月25日に発売された第5巻に続き……

早くも! 『第6巻』の発売が決定しました!

本当にありがとうございます。応援してくださる皆様へ特大感謝です!!!

発売日等、詳細は未定です。


書籍版は既刊第1巻~5巻も好評発売中です。

店頭でお気軽に、お手に取ってくだされば嬉しいです。


既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

この機会に5巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。

ぜひ当作品を「ぐいっ!」と後押しして下さい。

何卒宜しくお願い致します。


既刊をご購入された方は、

小説家になろう様の活動報告、もしくはツイッターへご一報をください!

東導は感謝感激状態となります。

何卒宜しくお願い致します。


そして!

『コミカライズ』連載開始しております。

株式会社スクウェア・エニックス様の刊行雑誌、

月刊「Gファンタジー」にて、

1月18日発売2月号(既に発売中)より連載が始まっています。

※2月18日発売の3月号にて『第2話』が掲載されております!

藤本桜先生の筆致で描かれる華麗な魔法世界を体感してください。

書籍版と共に、存分にお楽しみくださいませ。

※特報! 次回3月18日発売4月号掲載の第3話は、

センターカラー掲載の予定です。お楽しみに!

 『覚悟』が要るという重い言葉を受け……

 マティアスは大きく息を吐くと、真剣な眼差しを投げかけた。

 彼のまっすぐな視線を正面から受け止め……

 ゆっくりと、モーラルは話し始める。


「今から……8年と少し前……ヴァレンタイン王国ではない国の、とある小さな村に……ひとりの幼い少女が暮らしていました」


「…………」


「少女の両親は人間……だけどふたりから生まれた少女は、人間ではなかったのです……」


「え!?」


 モーラルの告げた話を聞き、マティアスは驚いた。

 よりによって、人間から魔族が生まれる忌まわしい事を……


 マティアスも古文書の事例を読んだり、いくつかの神話や伝承で聞いた事はある。

 それらが真実か、どうかは不明だ。

 もし実際にあれば、関係者は隠し通すだろう。

 生まれた子は……一体どうなるのか?

 誰も知る者は居ない……

 ……ちなみに、現代に至るまで、原因は判明していない。


 目を大きく見開いたマティアスの顔を見据え、モーラルは淡々と話し続ける。 


「創世神様のきまぐれ、酷い悪戯としか思えない………あまりにも残酷な運命……本来、人間として生まれるべき少女は、人々から忌み嫌われる夢魔として生まれました」


「…………」


「母親は……父親には娘である少女の正体を隠して育てていたのです……魔力を糧とする夢魔の少女は、魔法使いである母親の魔力を貰って成長して行きました……」


「…………」


「しかしある日、父親にその秘密がばれたのです……」


「お、おお……」


「……驚愕した父親は、落ち着くと、愛する妻や娘を捨て去り、己だけ助かろうと保身を図りました」


「…………」


「父親は村の司祭に真っ赤な嘘を告げたのです……自分は絶対に潔白だと。妻である少女の母親が密かに不貞を働き、怖ろしい悪魔に身を任せた不埒な結果であると」


「…………」


「しかしそんな事は……あるわけがなかったのです」


「…………」


「母親は……後に、少女へ告げました。父親だけを愛していたと……」


「…………」


「そう……全て父親のでっちあげ……夢魔の少女は父親の実の娘でした」


「…………」


「母親は魔法使い特有の勘から……村に漂う不穏な空気を察し、少女を連れ、着の身着のまま、逃げ出しました」


「…………」


「背後から……父親と司祭が、村の者を引き連れ、追って来ました。全員が手に得物を持って……母娘を不浄なる者として、むごたらしく殺そうとしたのです」


「…………」


「必死に走った母娘は……何とか追っ手から逃げのび、人が住まぬ未開の森で暮らし始めました」


「…………」


「母親は、腹を空かした少女に魔力を与え、自分は水と薬草で飢えをしのいでいました」


「…………」


「しかし……慣れない森での暮らし、母は満足に食事も摂る事が出来ず、徐々に衰弱して行きました……」


「…………」


「やがて母親は栄養不足と厳しい暮らしから重い病にかかり、あっさりと死にました……」


「…………」


「……残された幼い少女は、たったひとりぼっちになってしまったのです」


「…………」


「母との悲しい別離と、いいようのないの孤独……散々泣いた少女は、寂しさに耐え、小さな動物を捕まえ、魔力を吸い、何とか生きながらえていました……」


「…………」


「ときたま……少女を餌として、喰らおうという魔物や獣が来たら、彼女は身軽さを活かし、木に登ってやり過ごしていました」


「…………」


「しかし少女の成長に必要な、膨大な魔力が上手く取れず……少女もすぐ弱って行きました」


「…………」


「そして遂に衰弱から、動けなくなりました……魔力が殆ど失われ、倒れて動けなくなってしまったのです……」


「…………」


「瀕死の少女を……森に棲むオークの群れは放ってはおかず、捕え、凌辱し……喰らおうとしました」


「…………」


「迫って来る夥しい数のオーク共……倒れて動けない少女は……奴らを見つめながら、既に死ぬ覚悟をしていました。これから大好きな母親の下へ行くのだと……」


「…………」


「しかし、少女に、救いの手が差し伸べられたのです」


「…………」


「虚無ともいえる死に……身も心も囚われた少女を助けてくれたのは……ある人間の少年でした」


「…………」


「その魔法使いの少年は、一緒に居た師匠であるアールヴの猛反対を押し切り、少女を助けました。襲って来たオーク共をあっさり倒し、自身の魔力を少女へ与えたのです……」


「…………」


「そして……自分が暮らしていたアールヴの里に連れ帰り、何から何まで面倒を見てくれました」


「…………」


「当然ながら、アールヴ達も夢魔である少女を激しく忌み嫌いました。だけど少年は身体を張って盾となり、少女を完全に守りました。その上、実の妹のように可愛がってくれたのです」


「…………」


「……父親の信じられない裏切り、母親の悲惨な死、度重なる厳しい迫害……人の心を失い、完全な夢魔になりかけていた少女は……」


「…………」


「少年の献身と慈しみにより、心までは完全な夢魔にはならず、何とか、『人間』として踏みとどまる事が出来ました」


「…………」


 そう言うと、モーラルはにっこり笑った。

 マティアスは……さすがに、少女がもう誰なのかに気が付いていた。


 モーラルは軽く息を吐くと、また話し始める。


「少女は……いつしか……救ってくれた少年を深く深く愛していました……」


「…………」


「だけど……自分は人外の夢魔。相手は人間の少年……想いが……愛が叶うとは思いませんでした」


「…………」


「少女は愛を心の奥底へ封印し、命尽きるまで、少年の忠実な従士として仕えると決めました」


「…………」


「だけど簡単には割り切れない……少女は何度も苦しみました。本当は! 私は! 人間の筈なのに……何故! 何故、夢魔になど生まれてしまったのかと……」


「…………」


「だけど……こうも考えました」


「…………」


「もしも……夢魔として生まれなかったら……少年に出会う事もなかった。運命の人に巡り会えなかったとも!」


「…………」


「そんな少女は……他にも様々な苦しみを抱え、生きて来ました。そして、夢魔である事が辛い……今でも苦しみ、大声で叫びたくなる時があります」


「…………」


「でも出会いと同様、苦しんだからこそ! ……他者の辛さも理解出来る。寄り添う事だけでも出来ると……思えるようになりました」


「…………」


「……だから私はマティアス様、……貴方の持つ辛さが……ほんの、少しだけですが……分かると申し上げたのです」


「モ、モーラル!」


 無言だったマティアスは、思わず叫んでいた。

 叫ばずにはいられなかった。

 

 こんなに理知的なのに……

 こんなに優しいのに……

 こんなにも愛情豊かなのに! 

 自分を気遣い何度も励ましてくれたのに!

 何故! この子は魔族になど生まれた?

 

 モーラルの辛く哀し過ぎる人生に対し、自分がそっと寄り添ってやりたい……

 そう思ったからだ。

 

 魔族の全てが忌まわしい! 

 ……などという今迄の常識や考え方は、既にマティアスの心から完全に消え去っていた。

 

「はい、他者を……親友のエクトル様を、深く思い遣れる貴方ならば……私は、いろいろお話したいと思ったのです」


「モーラル、き、君は!」


「はい! 私は人間ではありません……」


「あ、う、うう……」


「マティアス様、貴方は……目の前に居る夢魔の女を……どう思われますか?」


「あ、ああ……あああ……あぐう……ああああああああ~~っ」


 マティアスは……

 この楽園に来た時のように泣いていた。


 込み上げる激しい思いが、堰を切ったように熱く押し寄せ、止まらなかったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます!


東導 号作品、愛読者の皆様へ!

別作品も宜しくお願い致します。


☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


遥か遠き心のふるさとで初恋の人と巡り会いたい!

都会に疲れ帰郷目前の青年が、突如異世界の田舎村に少年として転生。

失われた心の絆を取り戻そうと奮闘する!

連載再開!新パート『狙われた白鳥編』開始!

本日3月4日、最新話が更新されております。

ぜひお楽しみください。


☆『隠れ勇者と押しかけエルフ』


https://ncode.syosetu.com/n2876dv/


異世界に召喚された人間族の隠れ勇者ダンと、ふたりのエルフ、エリン&ヴィリヤの熱くも儚い恋物語。

無双、魔法バトル、地下ダンジョン探索もあり。

※1月27日更新分で、無事完結致しました。

長らくのご愛読、ありがとうございました。


☆『真☆信長に学べ! 俺の異世界生き残りライフ』


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歴史オタクで、さえない少年雷同太郎は邪神ロキの力により転生、中世西洋風異世界で魔王信長と化す!

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☆『最強魔族の私を……あなたの愛で人間にしてくれますか?』


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人間の両親から森に捨てられた夢魔の少女ツェツィリア。

孤児院へ捨てられ、懸命に生きて来た魔法使いの少年アルセーヌ。 傷ついたふたつの魂は邂逅、触れ合い結ばれる。

※好評連載中です。


東導 号の各作品を、ぜひぜひお楽しみ下さい。

応援宜しくお願い致します!

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