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第1,096話 「ブレヴァル家の平穏⑯」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』

(HJノベルス様刊)

特報!

1月25日に発売された第5巻に続き……

早くも! 『第6巻』の発売が決定しました!

本当にありがとうございます。応援してくださる皆様へ特大感謝です!!!

発売日等、詳細は未定です。


書籍版は既刊第1巻~5巻も好評発売中です。

店頭でお気軽に、お手に取ってくだされば嬉しいです。


既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

この機会に5巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。

ぜひ当作品を「ぐいっ!」と後押しして下さい。

何卒宜しくお願い致します。


ご購入された方は、

または事前にご予約済みでお手にされた方は、

小説家になろう様の活動報告、もしくはツイッターへ

ご一報頂ければ、東導は感謝感激状態となります。

何卒宜しくお願い致します。


そして!

『コミカライズ』連載開始しております。

株式会社スクウェア・エニックス様の刊行雑誌月刊「Gファンタジー」にて、

1月18日発売2月号(既に発売中)より連載が始まっています。

※2月18日発売の3月号にて『第2話』が掲載されております!

藤本桜先生の筆致で描かれる華麗な魔法世界を体感してください。

書籍版と共に、存分にお楽しみくださいませ。

※特報! 次回3月18日発売4月号掲載の第3話は、センターカラー掲載の予定です。

 お楽しみに!

 ステファニーとアニエスの父マティアス・ブレヴァルとモーラルは……

 いまだ、ルウの創りだした異界、楽園エデンに居た……


 楽園の景色は基本的には変わらない。

 現世のように時間の概念が感じられず、燦々と輝く太陽はふたりの真上にあるままだ。

 陽がかげり、夜が訪れる気配はない……


 唯一変わったといえば、  

 いつの間にか……

 真っ青な大空には、千切れ雲がいくつも湧き、全てがゆったりと流れていた。

 

 何もない紺碧の澄み切った青空は気持ちが良い……

 だが……

 こういう雲の点在する青空も、まるで絵画のようであり、趣きがあって素敵だ……

 

 マティアスは心身とも解放されるような心地よさを感じ、ぐっと四肢を伸ばした。


 と、その時。


「マティアス様、申し訳ないけれど、まだ私からお話しする事があるわ」


 モーラルが話し掛けて来た。

 一体、どのような話があるのだろうか?


「まだ、君から話す事?」


 とマティアスが聞けば、


「ええ、とても大事な話なの」


 『とても大事な話』というのに加え、モーラルの口調は更に真剣である。

 マティアスは軽く息を吐き、気持ちを引き締め、話を聞く態勢に入った。

 と、同時にモーラルは遠回りせず、単刀直入に切り出して来る。


「悪魔アミーが言っていた、貴方のお父様の話よ」


「あ!」


 思わず、小さな叫び声をあげたマティアスの脳裏には……

 忌まわしい記憶が甦って来た。


 あの時……

 マティアスの目を見つめ……嫌らしい笑いを浮かべ、悪魔アミーは言った。

 

 創世神教会のトップ、枢機卿である父アンドレは悪魔に憧れている怖ろしい『異端者』だと。

 憧れる対象とは……

 よりによって悪魔達のあるじである、元天使長、『明けの明星』だと……

 

 『明けの明星』とは……すなわち堕天使ルシフェルである。

 元天使長とはいえ、地の底へ堕ちたルシフェルは……

 怖ろしい悪魔王達の中でも、最も強大で冷酷な王と創世神教会では教えられた……


 そのルシフェルを……あの父が!?


 改めて思い出しても、あまりにも衝撃的な内容に、マティアスの身体には激しい悪寒が走った。

 ぶるぶると身体を震わせる。


 そんなマティアスに構わず、モーラルは話を続けて行く。


「大抵の悪魔は……人間に契約を持ちかける際、大嘘を付いて、適当な事を言うけれど……アミーの告げた事は真実でもあり、間違いでもある」


「し、し、真実でもあり、ま、間違いでもあるだと?」


 戸惑い、混乱するマティアスに比べ、モーラルは至極冷静だ。

 感情はあくまでフラット、淡々と話していた。


「そう、ひとつの価値観に囚われ過ぎると、真実は見えなくなるわ……マティアス様」


「真実が……見えなくなるとは?」


「ええ、あの元天使長が、何故、地の底深くへ堕とされたのか?」


「…………」


「貴方のお父様は、隠された真実を知りたいとお考えになっているの」


 悪魔王ルシフェルが何故、天から地へと堕とされたか?

 世界の誰もが知る事実を、マティアスは「ここぞ!」とばかりに言い放つ。


「隠された真実? そんなものはない!」


「隠された真実が、ない?」


「ああ、そうだ! 堕とされたのは簡単明瞭。奴が愚かにも、創世神様に逆らったからだろう?」


 しかしモーラルは、一転笑顔となり、可愛らしく首を傾げる。


「へぇ、逆らうって? どういう事?」


「それは……あいつが傲慢な考えを持ち、創世神様の偉大なる御心に背いたからだ……奴のせいで、人の子は原罪を背負う事となった」


 そう……

 ルシフェルとはすなわち『傲慢』の象徴。

 おごり高ぶり、相手を見下す。

 つまり、創世神様さえも見下し、背いた不届き者……


 その傲慢さ故、創世神様になり代わり、人を自分の思いのままにしようとし……

 畏れ多くも、エデンにある禁断の知恵の実を食べるよう仕向けた……


 だがモーラルは、まだ笑顔のままだ。


「創世神様の偉大なる御心って……例えば……人の子よ、限りなく無垢であれって事?」


「そ、そうだ!」


 マティアスが、更に自信を持って断定しても……

 モーラルは終いに声を出して笑い出す。


「うふふふふ……」


「な、何が可笑しい?」


「だって! 限りなく無垢であれとは、純粋過ぎる事じゃない?」


「おお、結構な事だ。何故なら純粋とは……なにものにも染まらない。清らかで、とても貴い、違うか?」


「ええ、確かにマティアス様の仰る通りね。純粋って素敵な響き……でも……」


「でも?」


「反面、言い換えれば、無垢であれとは、純粋過ぎるままで良い、何も感じず、学ばずに無知のままで良し、……だとも考えられないかしら?」


「え? む、無知だと……」


「そう、無垢な人間とは何か? 解釈や考え方はいろいろあるかもしれない……あくまで私の個人的な見解よ」


「君の個人的見解……」


「ええ、あくまで私見だけど……私は無垢、純粋過ぎるって、ある意味、無知だとも思うわ」


「…………」


「もしも無垢が、何も考えない無知なのであれば、それは果たして良い事なの?」


「う、むむむ……」


「無知のままで良いとは……生まれ持った折角の素養、素質を活かさず、知識を得る事、経験する事を放棄し、進歩や成長を一切やめる事じゃない? 苦しみが無い代わりに、感動する喜びもない」


「素養、素質を活かさず、進歩や成長を、一切やめる……苦しみが無い代わりに、感動する喜びもない……か……」


「ええ、貴方が……現状のままでも良いと考え、何もせず受け入れる事も……同じね」


「う……」


 思わず、マティアスは唸った。

 

 これほど苦しいなら、辛いなら……現状のままで良い……

 何度、そう思った事だろう。

 何度、歩く事を諦めようとしただろう。

 

 父という目標は……見えないくらいに遠かった。

 父という壁は……絶対に越えられない、そびえる切り立った高山のようだった……

  

「安心して、マティアス様」


「え? 安心?」


「もし無知のままで良いとお考えになったなら……マティアス様、貴方は悩まないし、私とこうした話さえしない筈……」


「…………」


「毎日が苦しくて、辛くて、たまらないままで、周囲の誰からも蔑まれたままで……自分の存在価値を見出せないままでも……何も感じず、このままで良しとして、全てを受け入れ、満足する筈なんだもの」


「…………」


「でも、貴方は違う、大丈夫よ! 自信を持って!」


「…………」


「何故ならば……人として少しでも成長したいと、お父様に追いつき追い越したいと、長い間もがき苦しみながらも、全力で邁進して来たから」


「…………」


「そんなマティアス様を素敵だと、私は思う」


「…………」


 無言となったマティアスは、拳を握りしめた。

 モーラルの言う通りだと。

 

 常に父と比べられ……どんなに馬鹿にされようと……

 マティアスは諦めず、挫けず……

 愚痴を吐きながらも、休みながらも、歩む事だけはやめなかったから……


 自分の心の内を、しっかり分かってくれるモーラルを、

 マティアスは慈愛を籠め、じっと見つめたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます!


東導 号作品、愛読者の皆様へ!

別作品も宜しくお願い致します。


☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


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遥か遠き心のふるさとで初恋の人と巡り会いたい!

都会に疲れ帰郷目前の青年が、突如異世界の田舎村に少年として転生。

失われた心の絆を取り戻そうと奮闘する!

連載再開!新パート『狙われた白鳥編』開始!

本日2月25日、最新話が更新されております。

ぜひお楽しみください。


☆『隠れ勇者と押しかけエルフ』


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異世界に召喚された人間族の隠れ勇者ダンと、ふたりのエルフ、エリン&ヴィリヤの熱く儚い恋物語。

無双、魔法バトル、地下ダンジョン探索もあり。

※1月27日更新分で、無事完結致しました。

長らくのご愛読、ありがとうございました。


☆『真☆信長に学べ! 俺の異世界生き残りライフ』


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歴史オタクで、さえない少年雷同太郎は邪神ロキの力により転生、中世西洋風異世界で魔王信長と化す!

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人間の両親から森に捨てられた夢魔の少女ツェツィリア。

孤児院へ捨てられ、懸命に生きて来た魔法使いの少年アルセーヌ。 傷ついたふたつの魂は邂逅、触れ合い結ばれる。

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東導 号の各作品を、ぜひぜひお楽しみ下さい。

応援宜しくお願い致します!

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