第1,095話 「ブレヴァル家の平穏⑮」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』
書籍版『第5巻』が無事、1月25日に発売されました。
こうして続刊出来たのは、読者の皆様の多大なる応援のお陰です!
本当に、本当にありがとうございます!
ご購入された方は、
または事前にご予約済みでお手にされた方は、
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ご一報頂ければ、東導は感謝感激状態となります。
何卒宜しくお願い致します。
そして!
『コミカライズ』連載開始しております。
株式会社スクウェア・エニックス様の刊行雑誌月刊「Gファンタジー」にて、
1月18日発売2月号(既に発売中)より連載が始まっています。
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藤本桜先生の筆致で描かれる華麗な魔法世界を体感してください。
書籍版と共に、存分にお楽しみくださいませ。
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既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
この機会に5巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。
皆様の応援が、次の『第6巻』以降の『続刊』につながります。
ぜひ「ぐいっ!」と後押しして下さい。
何卒宜しくお願い致します。
マティアスの驚いた顔を見て、モーラルは優しく微笑む。
「想像するのよ、マティアス様」
「想像か……」
「ええ、そんなに難しい事ではないわ」
「難しい事ではない……のか?」
「ええ、2代目の方が、今の貴方と全く同じように悩んでいたとしたら? ……偉大なる父ローラン様から受ける、大変な重圧と戦っていたのだとしたら、どのようにお感じになり、お考えになっていたんでしょうね?」
「そ、そうか! モーラル、そういう事なら私だって想像出来るぞ! ジルベール様も! い、今の私と同じだったのかと……ああ、そうだ! そうかもしれない!」
マティアスは遠い目をし、遥か大昔に想いを馳せる……
モーラルに言われ、改めて気付いたが……
父アンドレと自分に置き換えれば、確かに容易に想像出来る。
始祖ローランと、2代目ジルベールの微妙な関係が……
「ええ、2代目の方だって、とても優れた方でしょうけど……」
「ああ、ジルベール様だって絶対にそうだ、素晴らしい方だっただろう」
「でも……ローラン様のように全てにおいて秀でていたわけではないとしたら……何かにつけてお父様と比較され、辛い思いをしていたでしょう」
「う、うむ…………」
「だけど2代目の方は立派に跡を継がれ、ブレヴァル家を更に繁栄させたと記録には残っているのでしょう? では実際にどうされたのかお知りになりたいと思わない?」
「うむ……とても興味があるな……」
「ですよね? ……あくまで私の想像ですけれど……マティアス様、聞いてくださいますか?」
「ああ、ぜひ!」
「ではお話しします……2代目の方は……こうお考えになった……父は父。自分は自分……人からどう言われようと、ないものねだりをしても仕方がない」
「父は父。自分は自分か………」
「はい! ならば、自分の得手を徹底的に磨こう。そしてご自分なりにブレヴァル家を少しでも盛り立てよう、そう決意された……」
「ああ、だな! そうかもしれない、想像出来る! ジルベール様はめげずに前向きにお考えになった筈だ」
「うふふ、もっと想像してみて、マティアス様」
「おお、もっとか?」
「ええ、家を守り盛り立てるのは勿論だけど、たった一度きり、自分の人生……」
「たった一度きり、自分の人生……」
「ブレヴァル家の為だけではなく、自分自身の為に、楽しく人生を全うさせるよう生きなくては! ……って、2代目の方は、お考えになったのかもしれないわ」
「ああ、そうだな……私だってジルベール様と同じだ。創世神様に仕え、父や家族の為に頑張りたいが、自分の為にも与えられた命を一生懸命に生きたい! 己の人生を楽しみ、充実させたいとも思う」
「うふふ、そうよ。2代目のジルベール様は、そうやって気持ちを切り替え、父ローラン様の大きな重圧を乗り越え、立派に邁進されたと、私は思うの……」
「うむ……私もそう思う!」
「だけどマティアス様」
「む?」
「その次の代の……3代目の方は……そのように割り切れなかったとしたら?」
「…………」
「門外漢の私が推測で、このようにここまで言うのは大変失礼ですけど……」
「…………」
「3代目の方は、祖父ローラン様の名声が生み出した重圧に負けたのかもしれない。だから防御魔法と治癒魔法に特化したご自分こそ、ブレヴァル家の象徴だと言い換えてしまった」
「成る程、オーブリー様が……そうなのか……」
「ええ……その為にブレヴァル家始祖ローラン様の仰った、本来のお言葉やお考えは曲げられてしまった……」
「…………」
「こうして4代目以降の方は……3代目の方が作った、防御魔法のみ学べ……という家訓、つまり偽りの鎖に縛られた……」
「…………」
「結果的に……ブレヴァル家の人間に授けられた、無限の可能性への道は閉ざされてしまったのではないかしら?」
無限の可能性への道が閉ざされる!
マティアスは思い出す。
先日、アンドレと口論した際に、諭された事を。
「ち、父上は……その事を見抜き、私へ言っていたのか!」
「ええ……多分、そうでしょう」
「う~む…………」
「マティアス様、貴方は聡明な方……だけど物事をご理解されるまで、少しだけ時間がかかる」
「…………」
「対して、お父様は……アンドレ様は打てばすぐ響く方……その差が、貴方とお父様にすれ違いを生じさせていった……埋めにくい溝を作ってしまった」
「…………」
「貴方のお父様、アンドレ様は……いろいろな面で凄い方だと思う。でも、貴方には……お父様以上のものがあるわ」
父アンドレ以上のものが自分に?
あの一分の隙も無い、完璧な父よりも?
モーラルの言葉を聞き、マティアスは目を見開く。
全く想定外の話だったからだ。
「私にある? 父上以上のものが? モーラル、ほ、本当か!」
「ええ、確かにあるわ」
「…………」
自分が父より優れたもの……
到底思い浮かばず、無言となったマティアスへ……
モーラルは教えてくれる。
「それはね、他者を理解しようと努力し、深く慈しもうとする心……適切な言葉ではないかもしれませんが……敢えて申し上げるなら、寛容さよ」
「寛容さ?」
「ええ、貴方のように、自分の心の痛みを知り、乗り越えよう、優しくなろうとする者は他者の痛みを思い遣れる……たとえ相手が持つ真の痛みを理解出来ずとも……自分なりにイメージし、そっと傍らに寄り添う事が出来るのよ……」
「…………」
「具体的に申し上げましょう……」
「…………」
「貴方は、幼馴染エクトル・ブルダリアス様の心にそっと寄り添っていらっしゃるわ……自分と同じように父と比較され、長きに亘って悩み苦しむ心にね」
「エ、エクトルの……」
確かに、エクトルは……自分と同じ境遇だった。
だから彼の気持ちは、痛いほど良く分かる。
そんなマティアスの気持ちを見通すかのように、モーラルは言う。
「そうです。だからこそ、エクトル様も貴方をご理解し、あれだけ尽くされている。主君と家臣の枠を遥かに超えて……強い心の絆を結んでいる」
「あ、ああ……そうだ、エクトル! 私だって! あいつの為なら何でもやる!」
「マティアス様……ならば、その寛容さを……他の方にも向けましょう。お父上、ご家族は当たり前ですが、貴方の会った事がない人達へも……」
「私の、会った事がない人にも……か?」
「ええ、マティアス様は、これまで……あまりにも狭い世界で生きて来たわ」
「狭い世界……」
「ご自宅と創世神教会……ただそれだけ」
「そうか……私は、あまりにも世間知らずという事なのか……」
「ええ、世の中には数多の人が居て、マティアス様がご存知ない、様々な考え方、生き方……そして現実がある」
「…………」
「マティアス様、この異界を出たら……もっと、いろいろな人に会いましょう」
「え? もっと? いろいろな人にか?」
「はい、この世界のどこかに……ご家族とご親友以外にも、マティアス様を必要としている人が、待っている人が必ず居ます」
こんなに孤独で疎外される自分を、必要としている人が……
待っている人が……必ず居る。
きっぱり告げるモーラルの言葉に、未知への期待、そして不安もマティアスの心に生まれて来たのであった。
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