第1,092話 「ブレヴァル家の平穏⑫」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』
『第5巻』は無事、1月25日に発売されました。
こうして続刊出来たのは、読者の皆様の多大なる応援のお陰です!
本当に、本当にありがとうございます!
ご購入された方は、
または事前にご予約済みでお手にされた方は、
小説家になろう様の活動報告、もしくはツイッターへ
ご一報頂ければ、東導は感謝感激状態となります。
何卒宜しくお願い致します。
そして!
『コミカライズ』連載開始しております。
株式会社スクウェア・エニックス様の刊行雑誌月刊「Gファンタジー」にて、
1月18日発売2月号(既に発売中)より連載が始まっています。
※来週月曜日、2月18日発売3月号にて『第2話』が掲載となります!
第1話を未読の方は、お早めにチェックを!
その第1話は何と!
カラー1Pを含め、60ページを超える特大ボリューム!
「Gファンタジー」様公式HPで試し読みが出来ますので、ぜひご覧になってください。
そして素敵な誌上企画もご用意しております。
書籍版と共に、存分にお楽しみくださいませ。
既刊第1巻~4巻も好評発売中です。
店頭でお気軽に、お手に取ってくだされば嬉しいです。
既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
この機会に5巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。
皆様の応援が、次の『第6巻』以降の『続刊』につながります。
ぜひ「ぐいっ!」と後押しして下さい。
何卒宜しくお願い致します。
ストレス解消用に使っていた、家族には秘密の居酒屋で……
悪魔アミーに襲われたマティアス・ブレヴァルが気を失ってから……
一体、どれくらいの時間が過ぎたのだろうか……
悪魔の甘い囁きと凄まじい恫喝により、魂に大きなダメージを受け……
失った……マティアスの意識は……
徐々に戻りつつあった。
いかにも、気持ち良さそうに眠るマティアスをそっと起こすのは……
『自然』という名の、きまぐれ且つ、たおやかな女神だ。
彼の頬をそっと優しい風が撫で、ひくひく動く鼻腔へは、爽やかな草の香が、そっと入り込んで来る……
やがて……
閉じていたマティアスの目が、ゆっくりと開けられた。
仰向けになり、横たわっていたマティアスの頭上には、真っ青で広大な空が広がっている。
マティアスが見上げる空には、雲が全く無い。
今にも、吸い込まれそうな紺碧の大空だ。
吹く大気は清々しく、身も心も軽くなる……
ここは……どこだ?
どうして、こんな所に居る?
少し戸惑いながら、マティアスは慎重に起き上がった。
そして……
恐る恐る、周囲を見渡せば……
誰も居らず、動くものさえない。
彼は……たったひとりきりであった。
そして、今居るのは、見渡す限りの緑濃い大草原である。
ところどころに、大小の森が点在していた。
ふとマティアスが目の前の森を見れば……
木々には、色鮮やかな果実が実っていて、この土地がとても豊かである事を示している。
と、その時。
背後で、いきなりマティアスを呼ぶ声がした。
「起きたのね、マティアス様」
この声は……聞き覚えがある。
気を失う前に、耳に入って来た……
やや低めの若い女性の声である。
マティアスが振り向くと……
いつの間にか、ひとりの小柄な少女が立っていた。
シルバープラチナの美しい髪をなびかせた、端麗な顔立ちの少女である。
少女の声はかすかに覚えていた。
だが、彼女の顔に、マティアスは全く見覚えがなかった。
「お、お前は? そして、こ、ここは? ど、どこだ?」
驚いて、少しだけ噛んでしまったが……
マティアスは、はっきりとした口調で尋ねた。
まるで見覚えのない場所に居るというのに、あまり動揺はしてはいなかった。
何故ならば、この土地の、のどかな風景と温暖な気候が、彼をとても穏やかな心持ちにさせていたからである。
謎めいた少女は優しく微笑みかけ、マティアスの問いに答える。
「私は、モーラル」
「モ、モーラル?」
「そう……ルウ・ブランデル様の妻のひとり……」
「ルウ……ブランデルの妻……」
ルウ・ブランデル……
マティアスの心の片隅にあった記憶が甦る。
父アンドレが……妻パトリシアが、そして愛娘のステファニーとアニエスが口にしていた名前だ。
確か、ステファニーが通う魔法女子学園の教師だった。
平民の男なのに……貴族ではないのに……
素敵だと、素晴らしいと……賛辞の言葉を家族から何度も聞いた。
とても悔しかった……
自分はそんな誉め言葉を言われた事がない……
何かにつけ、父と比べられ、尊敬された事も皆無だ……
だからエクトルに命じ、ルウの事を調べさせた。
正体を暴いてやろうと……化けの皮を剝いでやろうと……
しかし……
マティアスが感情を乱す事はなかった。
あれだけルウを嫉妬し、憎悪していた筈なのに……
そして気を失う寸前に聞いた筈の、モーラルの『正体』も忘却されているらしい……
穏やかな表情のマティアスを見て、モーラルは軽く息を吐いた。
「ここは旦那様が魔法で創りし異界……第3界オーラムイエツィラー、すなわちエデンを模した異界なの……」
「え? ルウ・ブランデルが魔法で創った!? 楽園を模した世界だってぇ!」
モーラルの言葉を聞き、初めてマティアスは驚いた。
このような異界を創る魔法など、見た事は勿論、聞いた事がないからだ。
防御魔法の専門家であるマティアスにさえも、「とんでもない魔法なのだ」
と、はっきり分かる。
「うふふ、その様子なら大丈夫そうね……上手く行ったみたい……」
「上手く? 行った?」
「ええ、あの悪魔アミーの言う通り、貴方の心には、蓄積された負の感情が澱んだ滓のように、たくさん溜まっていたわ」
「負の感情……たくさん……」
モーラルに負の感情と言われ……
マティアスは、悪魔アミーの言葉を思い出した。
穏やかだった気持ちが、辛い現実に立ち帰り、表情がどんどん暗くなって行く……
しかしモーラルは優しい笑顔のまま、ゆっくり首を横に振った。
「でも、貴方の置かれた立場なら、環境ならば、そうなるのは仕方がないと思います」
「私の置かれた立場、環境……そうなるのは……仕方がない……のか?」
「ええ、貴方の持つ辛さが……苦しみが……重圧が……ほんの少しだけど、私には、分かるから……」
「な? わ、分かるって……お前が? どうして分かる!」
苦しみが……分かる?
思わずマティアスは尋ねたが……
微笑んだモーラルは、何故か答えなかった……
「それより……マティアス様……貴方は幼き頃から……良く頑張ったわ」
「え?」
「尊敬するお父様、優しいお父様……貴方が一番大好きなお父様に、少しでも少しでも……近付こうと頑張って来たわ」
「…………」
「ブレヴァル家の名を、地位を、何とか高めようと、ご自分なりに、一生懸命頑張って来たわ」
「…………」
「とても……立派ですよ……」
「…………」
「卑下せず、堂々と、胸を張ってください」
自分を労わるのは、見ず知らずの少女の筈なのに……
今迄……
誰にも言われた事のない、優しい言葉を掛けられて、マティアスの心が打ち震える……
思わず、目の奥がじんと熱くなり……
涙が、とめどなく……流れて来る。
「あ、あう……」
「大丈夫……ここでは、思いっきり泣いて構いません。今は私以外、誰も居ませんから……」
「あう、ああああああっ……」
「貴方は……孤独だった。家族の誰もが、貴方の気持ちを汲み取ろうとしなかった」
「ああああああああっ…………」
「心を許せる友は、たったひとりきり……そんな貴方には……こうして泣く場所さえなかったのですから」
度重なるモーラルの労りの言葉に……
とうとうマティアスの心の堰が切れた……
「うわぅ、うわあああああああああああん」
青々とした広大な草原の真ん中で……モーラルに見守られながら……
マティアスは、子供のように号泣していたのである。
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