第1,076話 「息抜き㉒」
愛読者の皆様!
特報です!
『魔法女子学園の助っ人教師』
『第5巻』の発売が決定致しました!
皆様の多大なる応援のお陰です!
本当に、本当にありがとうございます!
発売日は来月1月25日発売予定となりました。
既に予約が開始されております。
ぜひ皆様、予約をお願い致します。
そして!
この度『コミカライズ』が決定致しました。
株式会社スクウェア・エニックス様の刊行雑誌月刊「Gファンタジー」にて、
来月1月18日発売2月号より連載が開始されます。
12月18日付けの、小説家になろう様、活動報告に記載しました。
作画ご担当の藤本桜先生が描かれた特別イラストもアップしています。
ぜひご覧下さいませ。
既刊第1巻~4巻が発売中です。
店頭でぜひ、お手に取ってくだされば嬉しいです。
既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
この機会に4巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。
皆様の応援が、次の第6巻以降の『続刊』につながります。
ぜひ後押しして下さい。
何卒宜しくお願い致します。
ジョルジュから見て、武骨な騎士ジェロームの告白は、いきなり衝撃的な内容から始まった。
「こんな事……父には……絶対言えない」
「…………」
「これまでは……数人を除いて、他人に告げた事はない」
「…………」
「この場で告白する! 皆さん、聞いてくれ……実は俺、騎士になりたくなかったんだ」
ジェロームのとんでもない『告白』を聞き、思わずジョルジュは驚いた。
大きな声を出さないよう、無理やり口の中で唸った。
え?
騎士になりたくない!?
嘘だろう?
ヴァレンタイン王国建国以来の武家の名門、カルパンティエ公爵家の御曹司が?
だって!
見た目からして……筋骨隆々だぞ!
敵を見据えたら、殺気たっぷりな鋭い眼光を飛ばして、相手が震えあがるのは確実だぞ!
騎士になる為、この世に生まれて来た『漢』って感じなのに?
でも、もしも……
彼が言った事が本当なら……
俺と……同じだ!
騎士の家に生まれながら、魔法使いになった俺と!
そして、これから商人になろうとする俺にも!
自分が歩いて来た人生と重なる部分に大きく共感を覚えながら……
ジョルジュは、自分自身の境遇も思い出した。
そう……
ドゥメール伯爵家は元々、開国の祖バートクリード・ヴァレンタインを血を引く名門騎士の家系なのである。
ちなみに本家が今、この場に居るケヴィンの父エドモンが率いる同公爵家だ。
ジョルジュの母アデライドが魔法の才能に開花し、ドゥメール伯爵家は『魔法貴族』と称されるようになった。
そんな家へ『婿養子』として、父フレデリクは来た。
フレデリクとアデライド、ふたりの間に生まれた姉フランシスカも、母に負けじと天才魔法使いの名を欲しいままにした……
ジョルジュは巷の子供同様、ころころ将来への夢が変わった。
最初は母や姉に憧れ、華麗な魔法使いに……
しかし自分に魔法の才能が乏しいと分かると……
次には父のように優しく強い騎士へ憧れた。
だが王国騎士は見栄と虚飾の世界であった。
父に連れられ、会った騎士達は良く言えば誇り高く、悪くいえば傲慢だった。
中には善良で誠実な騎士も居たが……
殆どが出世競争に明け暮れ、騎士の精神を突き詰めようとする者は居なかった。
やがて父が病に倒れ、亡くなると……
ジョルジュは騎士への興味を失った。
そして再び、魔法使いを目指そうとしたのだ。
改めて修行しても、ジョルジュの魔法の才能は花開かなかった。
母からは、魔法使いへの道を諦めるよう何度も諭されたが、却って意地になった。
強引に魔法男子学園に入学し、実家から逃げるように学生寮に入った。
当然、生活は荒れて行った……母からも何かに付けて叱責される日々……
そして入学して2年が経ち、鬱々として過ごしていたある日、ルウと出会ったのだ。
ジョルジュはそれまで運命論者ではなかったが……
姉の命、そして自分の人生を救ってくれたルウとの出会いは宿命としかいえなかった。
考え続けるジョルジュの耳へ、ジェロームの声がまたも飛び込んで来る。
「俺は、他に目指したい道があった!」
英雄亭の会場は「しん!」と静まり返っている。
皆が、黙ってジェロームの独白を聞いていた。
そんな中……ジェロームの声だけが響いている。
「だが俺は……騎士を必ず継がねばならぬ家に、それも嫡男として生まれてしまった……」
「…………」
「忠誠、公正、勇気、武芸、慈愛、寛容、礼節、そして奉仕……こういった騎士の精神、また人々に害を及ぼす敵との戦いが……俺はけして嫌いではない」
「…………」
「現に……剣は幼少の頃から祖父による手ほどきを受け、以降は厳しい訓練に明け暮れて来た。騎士になってからは……難儀する人々を救う事に大きな意義と底知れぬ喜びを感じるから」
「…………」
「しかし俺は幼き頃……素晴らしいものと出会ってしまった。開けてしまったのだ。運命の扉を……」
「…………」
「ある日の事……母に連れられ行った、レストランでとんでもない味の焼き菓子を食べた」
「…………」
「食べた瞬間の俺は……まるで、雷撃の魔法をかけられたように、感動で全身がびりびりと震えてしまった」
「…………」
「そんな俺の様子を見た母に、当時は散々、訝しがられたものさ……」
ジェロームは、少し遠い目をして苦笑した。
「…………」
そんなジェロームへ……
誰もが、彼にかける言葉がないのか、話を聞くべきと思っているのか……
部屋は、沈黙のままだ。
ここでジェロームは軽く息を吐いた。
更に話を続けて行く。
「慌てて、周囲を見たら……客全員が、俺の食べた焼き菓子と同じものを美味そうに食べていた。まさに楽園に居るような面持ちで……」
「…………」
「それからだ……俺は両親に隠れ、密かに菓子を作るようになった」
「…………」
「きつく辛い騎士の修行をしながら……屋敷では料理長に内緒で頼み、菓子作りのイロハを習っていた」
「…………」
「そして暇を見つけては、王都は勿論……旅先でもその地で評判の菓子店を訪れ、様々な菓子の味に親しんだ」
「…………」
「結果として理解し、実感した。どこの国でも町でも美味い菓子は素晴らしい! 食べた者、誰をも幸福にすると……国も何も全く関係なく!」
「…………」
「そして改めて思った!」
「…………」
「俺は! やはり菓子職人になりたかったんだと!」
「…………」
「目を閉じれば、いつも遠い記憶が甦る。あの幼き日の事は一生忘れられない! 繰り返しになるが……人々が楽園に居るような表情で、素敵な笑顔で食べてくれるような菓子……それを自分の手で作りたかった!」
「…………」
「だが……俺はカルパンティエ家の嫡男として、父の跡を継がねばならない! 家の名に恥じぬ立派な騎士にならねばならない!」
「…………」
「そして今や俺は、家の期待に応え王国騎士となった! 王都騎士隊にも入った! この年になっても、まだまだ未熟者で隊に迷惑ばかりかけているが……」
「…………」
「しかし! 実は菓子職人への道も諦めきれなかった!」
「…………」
「騎士隊に入って、寮暮らしを始め、親の目に触れなくなったのをきっかけに……」
「…………」
「実は俺、……誰にも内緒で……これ迄、騎士隊の休日だけを使い、王都にある延べ3店の菓子店で下積みから修行している……入隊以来、もう6年にもなる」
「え? 菓子店で6年修行?」
「な! なに?」
「おおっ!」
ジェロームは騎士になると同時に、菓子職人の修行もしていた!?
さすがに……
今迄沈黙をしていたその場の者達から、思わず大きな声が出たのであった。
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