第1,069話 「息抜き⑮」
愛読者の皆様!
特報です!
『魔法女子学園の助っ人教師』
『第5巻』の発売が決定致しました!
皆様の多大なる応援のお陰です!
本当に、本当にありがとうございます!
発売日等、詳細は未定です。
◎そして!
この度『コミカライズ』が決定致しました。
宜しければ、11月12日付けの活動報告をご覧下さいませ。
既刊第1巻~4巻が発売中です。
店頭でぜひ、お手に取ってくだされば嬉しいです。
既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
この機会に4巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。
皆様の応援が、次の第6巻以降の『続刊』につながります。
何卒宜しくお願い致します。
キングスレー商会の王都支店長マルコ・フォンティは、ジョルジュの『父』アルマン・ブシェから、商人として『息子』を鍛えてくれと懇願されていた。
「ぜひ手解きを!」と、父の優しさと思い遣りに感動したジョルジュにせがまれ……
マルコは、商人の心得を少しだけ話す事にした。
「良いですか、ジョルジュ様。元々、我々商会というのは、何でも屋です。アルマン会頭のブシェ商会は一応扱う商品を特化させてはいますけど……結局、顧客から求められたら、全てを手配せざるを得ません」
「そ、そうなんですか?」
商会が何でも屋?
そう聞いて、ジョルジュは吃驚した。
中央広場にある簡易な露店や、街中の中小規模的な個人商店とは違う。
商会とは、規模が大きくて格式が高い。
扱う商品も選び抜かれたこだわりの商品に限られる。
そう思っていたから。
「はい! 基本、お客様のお求めになった商品は現時点で取り扱いがなくとも、何らかの対応を致しますし、絶対に放置は致しません。出来れば手配して直接そのお客様へ売るのが望ましいですね」
「でも商品の扱いがない場合、それって……どうしたら」
「はい、やはり商人仲間における横の繋がりです」
「商人仲間における横の繋がり……」
「はい、当商会と取引のある仕入れ先は勿論ですが、手配が出来ない場合は、別の商会にも依頼し、何としてでも取り寄せます」
「そこまでして……何故? 値段の問題もありますよね、却って高くなりませんか?」
「はい、当然高くなります! でもあまり高く売るのはいけません、常識外の値段になりますからね。だからお客様へは利益度外視で売る場合もあります」
「それって! わ、分からないです。だってこちらが損をするじゃありませんか?」
ジョルジュの考えは尤もである。
商人は利益を追求する。
利益が出なければ商売にならず、経営する店は潰れてしまう。
しかし、マルコは笑顔で首を横に振った。
「まあ確かにケースバイケースなのですが……ジョルジュ様、良くお考え下さい。もし当商会で手配出来なければどうなります?」
「まあ、その人がどうしても必要なら、他の店で買うと思いますけど」
「仰る通りです! その時、他の店はどう思いますかね?」
「どうって……全く新規の客だったら、凄くラッキーだって思う……ああ!」
「お気付きになりましたか? どんなに一生懸命営業しても、または普段は縁もゆかりもなく、見向きもしなかったお客様が、あちらからぜひ買いたいとやって来た。ライバル店にとっては千載一遇の大チャンスですよ」
「うう、確かに……」
「もしかして、他店の方が、私達の店より値段やサービスが遥かに上だったら……あっさり乗り換えてしまう可能性だって大ありです」
「…………」
「現に……論より証拠。ルウ様とのご縁で、私は貴族家の新規顧客を随分開拓致しました」
「…………」
「ジョルジュ様はご存知の筈です。基本貴族家は御用達の店を滅多に代えない。私どもキングスレー商会も、ドゥメール家様とのお付き合いはもう150年以上となりますが、唯一の取り引き店としていつもご贔屓にして頂いております」
「確かに……」
ジョルジュは大きく頷いた。
本家の公爵家を含め、分家は全てキングスレー商会を使っている。
他の商会は……滅多に使わない。
何故ならば、意思疎通が簡単で、ドゥメール家の好みを良く理解しているから。
統領エドモンの意向もあるのも勿論である。
「それが、ルウ様の奥様方とお知り合いになれた。ルウ様とのご縁でお買物をして頂いたというきっかけから、幸いにも各家と、お取引き出来る間柄とならせて頂きました」
「…………」
「もし、このチャンスを逃したら、私は解雇されるくらいの失策を犯した事となります……」
「げ! か、解雇って!? それは大袈裟では?」
「いいえ! 超が付く、それくらいのビッグチャンスなのです。奥様達のご実家を考えて頂ければ、お分かりでしょう?」
「……納得します」
ジゼルのカルパンティエ家を始めとして、ルウの妻達の実家は、そうそうたる名家揃いだ。
リーリャの実家アレフィエフ家に至っては、他国の王家だ。
確かに……マルコの言う通り、超ビッグチャンスだろう。
「はい! という事で……時にはウチで扱わない商品の問い合わせや値段の問題もありましたが……ウチは新参の店ですから何とか手配致しました」
「おお、手配したんですね?」
「はい! 手配してお売りしました。努力した結果として、お陰様で信頼関係が深まりましたよ。現状、新規個々の売り上げはドゥメール家様には全く及びませんが、順調に伸びております。当然利益もですよ」
「す、凄い!」
「はい! どこの世界でもそうでしょうが……全ては戦いです。貴族家間の出世競争だけではない。私達商人だって日々戦いなのです。ジョルジュ様がお考えになっているよりも遥かに厳しい世界ですよ」
「戦い……遥かに厳しい世界……」
「はい! ここで大事な事をひとつお教えします。戦いに勝ち抜くのは当然ですが、バランス感覚が重要です」
「バランス感覚……」
マルコのいうバランス感覚とは一体?
ジョルジュは、マルコからの言葉を待った。
「まずは長期的な展開を見据える事。チェスのように先々を読み、目先の小さな利益に振り回されない」
「長期的な展開……」
「それとジョルジュ様、もっと大事なのが他者との折り合いです」
「他者との折り合い?」
「分かり易く申し上げれば、ジョルジュ様が馬にお乗りになる時と一緒です」
「馬と?」
「はい! 馬がかかる……つまり乗り手のいう事をきかない場合、それは他者が足を引っ張る事に通じますね」
「…………」
「ジョルジュ様、どの世界でも妬み、そねみなどは当然あります。出る杭は打たれます。貴族、平民……関係なく」
「妬み、そねみ……出る杭は打たれる……」
「ええ、先ほどの話を思い出して下さい……商人でいえば、有力な顧客を取られた店はどう思うでしょう?」
「それは当然、不愉快に思うでしょうね」
「はい! そしてその恨みつらみの矛先は顧客当人ではなく、基本、扱いを頂いた商会に向きます」
「え? 何故!」
「はい! 実のところ、負けた店は理屈では分かるんです。商いの勝負に敗れたって……」
「ですよね?」
「しかし人間は悲しいものでして、感情が理屈より、心へ大きな影響を与える事が多いのです……負けた理由を他者に求めたがる、自分ではなく他人が悪いとね」
「自分ではなく他人が悪い……」
「ええ、あの店は絶対に悪辣な手を使ったとか、こっそりズルをしたとか、挙句の果てに酷い嘘をついて客を騙したとか……そう思い、考えたくなるものです。戦いに敗れた自分を無理やり納得させる為に」
「…………」
「ちなみに……このような反則行為を、ウチの店では絶対にやりません。もしも判明したら、一気に信頼を失いますから」
「…………」
ジョルジュは……先日の『事件』を思い出した。
信頼を失うどころではないと……
ブシェ商会を潰す為に、名門と言われたミラテゲール商会は陰で暗躍した。
しかし様々な悪事が明るみに出て、王家により、ミラテゲール商会は呆気なく潰されてしまった。
そんなジョルジュの気持ちを読むが如く、マルコは言う。
「但し……商人というのは、千差万別でして、そのように馬鹿な行為をする不埒者が確かにおります。しかし基本的に負けたのは己が至らなかった、経営努力が足りなかった。私個人はそう思います」
「…………」
「それで……話を戻しますと、先ほどお話したバランス感覚で申し上げれば、そのような妬みや曲解で足を引っ張られないよう上手く事を運ぶ……逆に相手から頼られ、助けたいと思われる……そういう事です」
「な、成る程!」
「はい! 例えば……相手の扱いを取っても、キングスレー商会が相手なら仕方がない、ブシェ商会には敵わない……競合相手にそう言わせ、自然に認めさせるような手法、そして経営……それがバランス感覚の最たるものなのです」
「成る程! マルコさん、とても勉強になります!」
「結局、私達は単独で商売は出来ませんからね」
「わ、分かります。父からも言われました! 所詮、ボッチでは駄目という事ですね」
「そうです! ボッチではいけません! 商人とは多くのライバルと助け合い、また競い合うものなのです」
「はいっ!」
「まあ、口でいうほど簡単ではありません。私も試行錯誤の日々です。でも商いの仕事は楽しいです。もしジョルジュ様が私達の商人仲間になって頂けるのなら、共に助け合い、戦うのがとても楽しみですよ」
マルコはそう言うと、ジョルジュを見た。
そしてにっこり笑う。
晴れやかなマルコの笑顔に、ルウとはまた違う温かみと優しさを感じ……
ジョルジュは再び、将来の夢と希望へ、胸が大きく高鳴ったのである。
東導 号作品、愛読者の皆様へ!
別作品も宜しくお願い致します。
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ぜひお楽しみ下さい。
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