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第1,056話 「息抜き②」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第1~4巻が発売中です!


7月21日発売の、最新第4巻はルウとモーラルの表紙です。

第1巻~3巻の既刊共々、お見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。


皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※新刊、既刊、共に店頭にない場合は、恐縮ですが書店様にお問合せ下さいませ。

 先が見えず、果てしない、鑑定魔法の修行以上に……

 大変な難事だと、思っていたのだろう。


 兄ルウへ、『ドゥメール伯爵家跡目相続』の申し入れが上手く行き、ジョルジュはとても安堵したようだ。

 大きく息を吐き、ルウの顔を見て、にっこり笑った。


 だが、ルウは苦笑して、対面に座ったジョルジュを戒める。


「おいおい、ジョルジュ、勝って兜の緒を締めよと、いう諺があるぞ」


「勝って、兜の? 何ですか?」


「緒を締めよさ。物事が、成功したり、上手く運んだ直後に限って、トラブルが起きやすいから、常に注意を怠るな! という、たとえだな。そうそう、油断大敵という言葉もほぼ同じだ」


「な、成る程!」


 ジョルジュは「兄の言う事は、尤もだ!」と、納得した。

 物事が上手く運び、あまり有頂天になっていたら、ろくな事がないと、ルウは戒めてくれたのだろうと。


「フランへも、納得出来るよう、しっかり話さないといけない。彼女には俺が話すが……お前はまだ、何も伝えていないのだろう?」


「え、ええ……」


 ジョルジュは、言葉少なに肯定した。

 血は繋がっていないが、同性の気安さから、まずルウへ話したのだ。


 姉のフランにはまだ、『自分の決意』を告げてはいない。

 ……普段の姉は温厚で、滅多には怒らないが……

 その数少ない怒った時は、「とても怖かった!」という印象がある……

 母が怒った時に……そっくりだとも、思った。

 だから……まずは姉と仲の良い『兄』へ伝えてからだと思った……


 ルウは、更に言う。


「それに最大の難関である、アデライド母さんの説得が、残っているじゃないか」


「……はい、兄上の仰る通りです」


「お前が自身で決めた事だし、アデライド母さんは最終的に、快くOKをしてくれるとは思うが……」


「…………」


「ドゥメール伯爵家の跡を継がせたいのは、けして俺じゃない。ジョルジュ、お前さ。それが、アデライド母さんの本音なんだ」


「…………」


「母さんには、告げる言葉をしっかり考え、焦らずに説得し、良く理解して貰う事……分かったか?」


「は、はい!」


「それと、お前が翻意しても俺は全く構わない。だから、もう一度、じっくり考えてみてくれ。フランには、そのタイミングも含め、俺から上手く伝えておく」


「わ、分かりましたっ!」


 ジョルジュの気合の入った返事を聞き、ルウは満足そうに頷いた。

 これで話は終わりの筈である。

 しかしルウは、何故か悪戯っぽく笑っている。


「ところで、ジョルジュ」


「は、はい!」


「お前、まだ俺に話したい事があるのだろう?」


「へ? 兄上に? は、話したい……事ですか?」


 ジョルジュの目が、泳いでいた。

 何か、隠しているようである。

 彼には珍しい事だ。

 相手がルウならば、もう素直に、全てを本音で言えるのに。


 動揺するジョルジュへ、ルウは更に突っ込んで来る。


「ああ、そうだ。隠しても、お前の顔に、しっかり書いてある」


「か、隠しても? お、俺の? 顔に? しっかり書いてあるのですか?」


「おお、こう書いてある。……最近は予定が、ぎっしりだ。身体も気持ちも疲れた……でも、休む暇も、遊ぶ時間もない」


「え?」


「たまには……アンナ抜き、男だけで遊びたい。だけど……遊び仲間の、魔法男子学園の友人とは、スケジュールが全く合わない」


「あ、あう!」


「かといって、もしもクラスの遊び仲間と時間が合っても、アンナにひどく怒られるから、女性の居る酒場などには行けない……そうだ、ルウを誘おう! 兄と一緒ならば、アンナも怒らないだろう……って所だな」


「げ! な、何故、分かるのですか?」


「ははっ、分かるよ、考えている事は。お前の兄……だからな」


 兄だから?

 いや……違うだろう。

 ルウは絶対に、魔法で確かめたのに違いない。

 もしくは……やはりとんでもない、洞察力なのだ……


 ジョルジュはそう思ったが、もし聞いても、変に揉めそうなのでやめた。

 なので、もう……自分に対し、正直になる事に決めたのである。


「で、ではっ! 兄上には、素敵な企画があるのですか!?」


「ああ、俺に考えがある。ちょっとした息抜きだな」


「ちょっとした息抜き……それ、凄く嬉しいのですが……」


 何か、ジョルジュには、まだ躊躇いがあるらしい。

 ルウは、笑顔のまま、問いかける。


「ですが? って、どうした?」


「あ、あの……息抜きは問題なしですが……さっき兄上が仰った通り、変な店へ、行くのは駄目なんですよ」


「変な店?」


「そ、その……俺、本当は凄く行きたい! アンナが言うほど、そんなに変な店じゃないと思うんです」


「アンナが言うほどって、何だ、それは?」


「もう! 兄上なら、分かるでしょう! ほら! 恋人アマータとか、雌猫フェーレースとか、あるじゃないですかっ!」


「ああ、その店なら、俺も噂は聞いたぞ」


 ルウはそう言ったが、噂で聞いたどころではない。

 

 恋人アマータ雌猫フェーレースは、あの鋼商会カリュプスが経営する飲食店である。

 たくさんの美しい女性が所属し、店に行った客は、対価を払い、店内で彼女達と一緒に飲食が出来る。

 会頭のリベルト・アルディーニが、悪魔従士アスモデウスに仕切りを任せている筈なのだ。※第673話参照。


 人間の女性に魅了された、アスモデウスには天職らしく、一段と気合を入れて仕事をしているらしい。

 

 結果、スタッフの女子が張り合いを持って、生き生きして……

 とても美しく可愛いのは勿論、店は健全で楽しい。

 加えて、料理も酒も最高に上手い

 と、最近、王都では大評判なのだ。

 

 先日あった、リベルトからの報告によれば……

 常に客足が絶えず、ふたつの店の経営は、絶好調だという……


「兄上!」 


「おう!」


「何ですか? 噂で聞いたって? 噂じゃなく、もはや常識ですよ! このふたつの店は今、王都では大人気の店ですっ!」


「ほう、そうか」


 ルウがあまりにも冷静なので、ジョルジュは少し、声のトーンを落とした。


「ま、まあ、超が付くリア充の兄上には、全然関係ない店かもしれませんが……連日大盛況だって話です。一緒に、お酒を飲める女の子が、凄く可愛い子ばっかりで天国状態だって、クラスの友達が嬉しそうに言ってました」 


「成る程、それは、素敵な店だろうな。しかし、残念ながら、今回、俺が考えた企画とは、それらの店に行く事じゃない」


「え? そうなんですか? 俺はてっきり……」


「いやいや、お互いに……後が、怖いだろう? それに逆も困る」


 ルウがそう言って、意味ありげに笑ったので、ジョルジュはハッと我に返った。


「後が怖い? それと、逆も? え? ま、まあ、確かにそうですね……」


 数日前、ジョルジュはアンナと、ほんの小さな喧嘩をした。

 ジョルジュが、『幼馴染みの貴族の女の子』と、街中でたまたま会い、買い物に付き合ったのを……

 偶然、アンナに、見られてしまったのだ。

 

 翌日、デートの時……

 いつもは優しいアンナが、激しくジョルジュを責めた。

 

 怒られたジョルジュは……平謝りだった。

 「もしも逆の事があれば、貴方は平静でいられるの?」と、アンナから聞かれ、大いに納得したからである。


 その時に、口が滑って、余計な事を言い、更に怒られた。

 

 「じゃあ恋人アマータ雌猫フェーレースへ行くのはOK?」

 と、ジョルジュがつい言ったら……

 アンナからは、「そんな、変な店へ行くのは、絶対に駄目!」ときっぱり言われてしまったのだ。


 この兄も、もし自分と同じ事を言ったら……

 姉や他の妻達から……激しく叱られるのだろうか?

 そう考えたジョルジュは、何となくルウへ親近感を覚えて、苦笑したのである。

いつもお読み頂きありがとうございます!


東導 号の別作品も、ぜひご愛読お願い致します。


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応援宜しくお願い致します!

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