第1,055話 「息抜き①」
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フランの弟、ジョルジュは普段、魔法男子学園の学生寮で生活している。
当初は……
母と姉という、たぐいまれな魔法使いに囲まれる、息苦しい実家から逃れる為、ひとり暮らしを始めたのである。
肉親全てが素晴らしい才能を持ち、自分だけが、ただの凡才なのはとても苦しい。
とてつもない劣等感の、塊となってしまう。
ジョルジュも、例外ではなかった。
意地で、魔法使いへの道を選んだ結果……
極度のネガティブ状態となり、生活は荒れに荒れた。
挙句の果てに、素行不良を咎められ、学園から注意される事はしょっちゅうだった。
そんな時、いつも、庇ってくれたのは母アデライドであった。
だが、その代わり……
激怒した母には、いつも尻叩きを喰らったが……
しかし!
そのような心配を、もうアデライドへかける事はない。
自分の、才能に絶望していたジョルジュは、運命の出会いをしたのだ。
出会いとは、想い人のアンナ・ブシェ?
確かにそうだろう。
婚約したアンナとは、これからの人生を、ずっと共に歩いて行くのだから。
だが、その出会いの前にジョルジュは運命の出会いを遂げていた。
恋人ではない、魔法の師といえる人物に。
それが、義兄のルウである。
最初、ジョルジュはルウが大嫌いだった。
身分の差から来る嫌悪感を、散々、ぶつけていた。
しかし、暴漢から助けられ、母に諭され、思い切って歩み寄ると……
まるでルウは、実の兄のように、ジョルジュを温かく受け入れてくれた。
そしてジョルジュは……今迄持っていたコンプレックスもルウに解消して貰った。
彼の中に隠されていた鑑定魔法の才能を、ルウに見出して貰ったのだ。
更にルウは、ジョルジュの想い人アンナの危機も救ってくれた。
それも、彼の顔を最大限立てるように。
今や、ジョルジュは……
ルウが大好きであった。
まさに理想の兄貴なのだから。
付き合いだして、ジョルジュはルウの様々な面を知った。
気さくで、誰にでも優しい。
深謀遠慮の塊であり、面白い冗談は言うけれど……
人を傷つける嘘をつかない。
加えて、とんでもない物知りで魔法の達人。
……お約束ながら凄く強い。
困ったら、恥ずかしい事も含め、何でも気軽に相談に乗ってくれる。
ときたま……
一緒に馬鹿な事にも付き合ってくれる。
そんな面倒見の良い、男の先輩且つ友達みたいな兄貴。
だけど神様みたいに完璧かというと、そうでもなくて……
とっても不器用な、人間臭い面もある。
もしも、自分が女性だったら……と、思う。
考えると、姉フランがルウに惚れ込むのも、良く分かるというものだ。
……最近、ジョルジュは多忙になった。
鑑定魔法を本格的に学び出してから、魔法の習得は勿論、膨大な種類の商品知識を学ばねばならない。
友人達には、付き合いが悪くなったと責められたが、ひたすら謝るしかない。
学園の授業をまじめに受けるようになったのは勿論、寮での勉強、バルバトスの店での研修……
当然、婚約者となったアンナと、毎週デートもしていた。
結果、スケジュールが……毎日ぎっしりなのである。
以前は、ルウの下へ、毎週のように、魔法を学びに行っていたが……
その頻度も、著しく減った。
アンナの実家にも、良く遊びに行く。
彼女の両親からは、大いに気に入られ……
「週末は、ブシェ家へ遊びに来い」と、言われるようになったからだ。
暫くして、その「遊びに来い」は、「ただ遊ぶだけ」に留まらなくなった。
いろいろアンナの両親と話すうち、世界を股にかける商売に対し、大いに興味が湧いて来たのだ。
そして、ジョルジュは悩んだ挙句……決めた。
つまり……B級以上となる魔法鑑定士の資格を取得した上で、アンナの実家、ブシェ商会を、自分が継ごうという決意だ。
もし自分が、婿へ入ったら?
という話を、ジョルジュがしたら……
アンナの両親は、大いに驚き、且つ喜んでくれた。
その日以来……アンナの父親からは、『商人の心得』について、指導を受けるようになったのである。
だが、ジョルジュは、その決意をまだ母へ告げてはいない……
それには、理由があった。
まずは、ルウへ相談しようと考えていたのだ。
ある、提案をする為に。
さてさて……
どうやら、最近は、ルウも忙しいらしい。
お互いの都合が、合わない事も多くなった。
今日は久々に、調整が付き、ジョルジュはブランデル邸へ、訪問していた。
勿論、鑑定魔法を学ぶ為である。
修行が終わった後は、隣接する実家へ訪問の予定だ。
こちらも久々に、母アデライドへ顔を見せ、近況を報告。
そのまま、宿泊する事となっている。
いつも、ルウから貰う時間は、約2時間……
そのうち、魔法の教授と、実地訓練に1時間30分かける。
残りの30分は……とりとめのない話をする。
姉フランの事や、ルウの他の妻の事。
王都の噂話や、最近流行っている遊びや食べ物。
その一見、無駄のように思える時間が、ジョルジュは好きであった。
疲れた気持ちが、リフレッシュされるから。
しかし今日は、その30分の時間の中で、大事な話をしなければならない。
いつものように、暫し、歓談した後……
ジョルジュは、軽く息を吐いて、話を切り出した。
「兄上」
「ん?」
「単刀直入に言います。俺の代わりに、ドゥメール伯爵家を継いでください」
「ああ、分かるよ」
やはり!
と、ジョルジュは思う。
もうこの兄には、お見通しだと。
「兄上、俺がそう決めた理由が……分かりますか?」
「ああ、お前、アンナの両親に、とても可愛がられているのだろう?」
「そ、そうです!」
「分かった、お前の決意が固いのなら、引き受けよう」
「ありがとうございます。兄上が継いでくれるのなら、母上も凄く喜びます」
話した言葉は短い。
でも予想通り、ルウは快諾してくれた。
ジョルジュは、今日の最大の用件が済み、安堵した。
だが、まだ終わりではない。
ルウは更に、こまやかな気配りもしてくれたのだ。
「但し、条件があるぞ、ジョルジュ」
「じょ、条件?」
「そう、アデライド母さんにはな、ジョルジュ、お前から話すんだ。前向きに、お前とアンナの将来の夢と共に、熱い気持ちを籠めて、誠実に……真摯に」
「…………」
「良いか、ジョルジュ。俺とフランにはまだ……『その件』を話していない事にしておけ。アデライド母さんから、事前に了解を貰い、母さんとお前で、俺とフランを説得する。そして俺が謹んで受ける形にした方が良い。それで、母さんとフランの面目も立つ」
「あ、兄上……」
ルウはちょっと話を聞いただけで、先まで、見越していた。
ジョルジュは、心の底から嬉しくなり……
穏やかに微笑む兄を、熱く見つめていたのである。
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