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第1,054話 「後を託して㉔」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第1~4巻が発売中です!


7月21日発売の、最新第4巻はルウとモーラルの表紙です。

第1巻~3巻の既刊共々、お見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。


皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※新刊、既刊、共に店頭にない場合は、恐縮ですが書店様にお問合せ下さいませ。

 魔法武道部にとって、いろいろな意味があった、大きなターニングポイントともいえる特別な訓練。

 部員なら誰もが、忘れられない、あの夏の日から……月日は流れた。

 

 夏季休暇が終わって、9月へ入り、新学期が始まると……

 魔法武道部の生徒達は、日々、勉強に部活に充実した日々を送っていた。


 そんなある日……

 遂に、魔法武道部恒例の行事、『追い出し』が行われた。

 「追い出す」とは、人聞きが悪いが、簡単に言えば3年生の引退記念試合である。


 この『追い出し』は特に、試合の形が決まっていない。

 なので今回は、ミシェルとオルガが積極的に意見を出した。


 まずは、基本になる試合方法だが……

 ミシェルとオルガは、シンディが戦った、記念すべき、あのエキシビションマッチと同じ形式が良い……

 練習用の雷撃剣を使った、3分間形式の試合にしたいと提案した。

 

 当然、全員賛成で採用された。


 更に……

 1対1のシングルマッチは勿論、ルウの副顧問就任後は戦い慣れたチーム対抗戦、果ては全員参加の学年混合バトルロイヤルまで……

 様々な形で、楽しく試合をしようという提案が為されたのだ。


 結局、ミシェル達の提案は全て採用された。

 部長のジゼルを始めとした、3年生4名へ胸を借りる形で、後を託される2年生、1年生は思う存分戦ったのである。


 バトルロイヤルは、見た目が派手で、全員が一度に楽しめたが……

 やはり、一番盛り上がったのは、シングルマッチである。

 ミシェルはジゼルを指名、オルガも希望してシモーヌと戦った。


 何故か、勝敗は全て時間切れの引き分けであった。

 

 これも、今迄の『追い出し』とは全く異なっていた。

 言葉とは裏腹に、追い出される先輩が後輩を容赦なく、徹底的に打ち負かすのが慣例であったから。


 しかし勝敗に拘らず、全員がこの特別なイベントを楽しんでいた。


 やはりあの日から、魔法武道部は変わった。

 不幸にも、あの日王都に居らず、不参加の部員達も数人居たが……

 そんなハンデをものともせず、すぐに新たな部の雰囲気に馴染み、あっという間に溶け込んでいたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 『追い出し』終了後……


 試合会場であった屋内闘技場は、教師と部員達の奮闘により、一転、懇親会の会場に早変わりした。


 真っ白なクロスを掛けられた長机がいくつか置かれ……

 その上には、学生食堂へ依頼したテイクアウトの、美味そうな料理が盛大に並んでいた。


 ここでも、いつもと違う光景が展開されていた。

 通常なら出席者は、魔法武道部に直接関係する者のみ……なのに。

 つまりシンディ、ルウ、カサンドラの指導担当教師、そしてジゼル達部員だけの筈だ。


 しかし!

 アデライドが、艶やかに微笑んでいる。

 笑顔のフランが、嬉しそうにルウと話している。


 そしてむっつりしたジーモン、同じような表情のアーモンことアモンまでが居て、黙々と料理を食べていたのだ。


 こうなると当然!

 マルガリータことマルコシアスも居た。

 今回の試合で親しくなった、シンディと談笑していたのである。


 懇親会に先立ち、部員達が最も気になっていた、部長と副部長の後継人事も発表されていた。

 以前、ジゼルとシモーヌが話していた通りの人事案である。


 ジゼルとシモーヌから告げられたのは……

 新部長にミシェル、新副部長にオルガである。

 更に、副部長補佐という形で、イネスとフルールのふたりも指名された。


 当然、この人事案は指導教師達の了解も取っていた。

 反対は全く無かった。

 それどころか、『適任』だと全員が一致して、文句なくOKが出たのである。


 一方、指名を受けたミシェル達も全く臆したところはない。


 あの特別訓練の日……

 ミシェルとオルガはジーモンと戦った。

 何度も何度も。

 しかしジーモンだけではない。

 アモンにも、そしてマルコシアスにも、躊躇なく挑んだのである。


 「特別講師側からは、手出しなし」という特殊なハンデ戦ではあったが……

 全身が震えるほど、恐怖心を持った相手に思う存分に、戦いを挑み、悩みは完全に吹っ切れたのである。


 他の部員達も、この人事案に異存はなかった。

 日々裏方として、ジゼルとシモーヌを支え、廃部の危機にあった魔法武道部を一生懸命に盛り上げていたのは……ミシェルとオルガなのだから。

 加えて、『特別訓練』の元々の発案者でもある。


 あの特別訓練以降、ミシェルとオルガは変わった。

 ジーモンに、臆する事もなくなった。

 それどころか、敵わないのを承知でも、剣を交える正式な試合をしたいと言うようになった。

 どっしりとした風格が出て、堂々たる変貌を遂げたミシェル達へ、不満を見せる者は誰も居なかったのだ。


 そして、イネスとフルールの副部長補佐就任も、不満よりも大きな期待が寄せられていた。


 魔法武道部にとって、あとふたつの大きな転機があり、イネス達は目覚ましい活躍を見せたからである。


 ルウが副顧問に就任した際、チーム戦で見せた戦いぶり。

 そして、ロドニアとの対抗戦での奮闘……

 次代の魔法武道部を支えるに相応しい人材だと、誰もが納得していたのである。


 今迄にないくらい、盛り上がる懇親会を、少し離れた場所で見ながら……

 「無事に後を託せた」ジゼルとシモーヌは満足そうに微笑んでいた。


 あの特別な訓練が終わってから、ふたりは全てを聞いていた。

 企画を段取りしたフラン、そして旅先からフォローしたルウから……


 そもそもミシェルとオルガが抱いた恐怖心をなくし、自信を取り戻すというのが、特別訓練の趣旨であった。

 ジゼルとシモーヌが安心して、魔法武道部の後を託すために。


 しかし、「後を託せた」のはジゼル達だけではなかった。


 顧問のシンディも……「後を託す事が出来た」のだ。

 ルウとカサンドラへ、魔法武道部を……

 そして、担任クラスの現1年A組も、フランへ、安心して託す事が出来る……

 また、シンディは『新たな友』も得る事が出来た。


 ジゼルは思う。

 

 よくよく考えれば……

 シンディとマルコシアスは似た者同士かもしれないと。

 唯一違うのは、『口数』だけかもしれない。


 だが……

 そんな事を言ったら、絶対、シンディ先生に怒られる……

 私は、『おしゃべり』じゃないって……

 だから、余計な事を言わない方が良い。

 沈黙は金……だな。

 ふふ…… 


 シンディの学園を去る日が、少しずつ近づくのを感じ、寂しくなるジゼルではあった。

 

 だが……

 

 からかわれて、頬を膨らませ、少女のように怒るシンディを想像し……

 つい可笑しくなって、「ふっ」と笑ったのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!

長くなりましたが、『後を託して』はこの話で終了です。

次話からは、新たなパートが始まります。


東導 号の別作品も、ぜひご愛読お願い致します。


『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


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本日10月8日更新しております。

ぜひお楽しみ下さい。

応援宜しくお願い致します!

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