表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1053/1391

第1,053話 「後を託して㉓」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第1~4巻が発売中です!


7月21日発売の、最新第4巻はルウとモーラルの表紙です。

第1巻~3巻の既刊共々、お見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。


皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※新刊、既刊、共に店頭にない場合は、恐縮ですが書店様にお問合せ下さいませ。

 部員達の表情は、すっかり明るくなった。

 『先輩』シンディの奮闘と見事な勝利に励まされた上……

 訓練に際しての、特別なハンデを聞いたからだ。

 

 ジゼル達が告げた、ハンデとは……

 何と!

 特別講師役の3人は……

 挑戦者である部員へ、一切手出しをしないという、驚愕の内容だった。


 部員達には、ジーモン達特別講師と、どう戦うのか、しっかりイメージ出来ている。

 そう……

 たった今、終わったばかりの、シンディのエキシビションマッチで……

 

 特別講師のひとり、マルガリータは序盤、シンディの攻撃を全て避けていた。

 あのように、全く無抵抗で、自分達とも戦ってくれるのだと。


 で、あれば。

 さすがに、部員達は臆さなかった。

 

 男性の、超一流戦士と戦えるなど、滅多にない機会である!

 どうせなら!

 と、部員全員が男性のジーモン、アモンとの対戦を希望したのである。


 さあ、練習だ!

 大いに意気込み、部員達は早速準備に取り掛かった。

 

 驚いた事に、ミシェルとオルガは、イネスとフルールを連れ、ジーモンとアモンに挨拶をしていた。


 これから、ジーモンとの戦いに臨むミシェルとオルガは、昨日までとは全く違う。

 丁寧に挨拶をしながら、不敵な笑みを浮かべ、気合をみなぎらせていた。

 長年に渡って苦しめられていた『悩み』は、もう払拭されたと言って良いかもしれない。


 そして、他の部員達も、楽しそうに語り合っている。

 

 そもそも……

 魔法武道部は、訓練の際に、無駄な私語は厳禁とされている。

 だが、今回の訓練に限ってはジゼルもシモーヌも注意しない。

 敢えて許していた。

 

 後で行われるミーティングの際、改めて注意しようと。

 折角生じた、部員達の前向きな気持ちを、壊さないようにとの配慮である。

 

 一方……

 部員達から少し離れた場所で、シンディとマルガリータは話をしていた。

 ふたりだけで話をしたいと、マルガリータからシンディを誘ったのである。

 改めて、マルガリータと話をしてみたいと思ったシンディには、渡りに船であった。


 果たして……

 この寡黙な女戦士は、一体どのような話をして来るのか?

 シンディには興味津々であった。


 少し身構えて、シンディが待っていると……

 

 マルガリータはまず、深くお辞儀をした。

 彼女なりに、シンディが戦ってくれた感謝の意であった。

 そして真剣な表情で、名を呼ぶ。


「シンディ殿」


「はい!」


「さすがだ。私の体さばきから、先の動きを予測するとは……貴女の奥義、見せて頂いた」


「…………」


 少しだけ吃驚した。

 お辞儀はしたが……

 お疲れ様という、ねぎらいもない。

 勝者を称える言葉もない。

 それどころか、いきなりシンディの戦法を見抜いたと告げて来た。

 

 マルガリータは、今迄、シンディが出会った事のないタイプだ。

 敢えて言えば、教え子のジゼルとシモーヌが少しだけ似ている。

 だが、ジゼル達は騎士の作法を身に着けていて、もっと礼儀正しい。

 

 しかし……シンディは、マルガリータの言動が不快ではなかった。


 次は、何を話すのだろう?

 期待して待ってしまう。


 シンディが無言で、マルガリータを見つめると、彼女は軽く息を吐く。

 そして納得したように、小さく頷いた。

 負けた理由が明確だというように……


「体さばきから生じる癖だけではなく、視点の死角をも衝くとは……私の完敗だ」


「…………」


 シンディは苦笑した。

 ジゼルを含め、部員達には見抜かれなかっただろうが……

 やはり、マルガリータには、『自分の奥の手』が全て見抜かれていたのだ。


 体さばきに以外に、シンディが使った奥の手とは……

 マルガリータの言う通り、『視点における死角』である。


 そもそも人間の視覚の範囲は、ほぼ180度と言われている。

 だが個々によって、見えやすい、見えにくい位置が存在すると、若き日のシンディは仮説を立てたのだ。

 人間の、視覚の中には必ず『死角』があると……

 

 『死角』の存在は、未知の、そして不確かな事もあり……

 以来、けして他者へは明かさず、シンディは研究と実地訓練を続けて来た。

 

 その結果……

 相手の動きにより、死角ははっきり現れるとシンディは戦いの経験から、確信した。

 同じ攻撃をしても、角度により、相手が反応する時間に差が出て来るのだ。


 その差は『上級者』になればなるほど、ほんの僅かでしかない……

 だがマルガリータにも、やはり死角による隙があった。

 体さばきによる動きの予想に加え、その僅かな差に、シンディは勝負をかけたのである。


 つらつらと考えるシンディへ、マルガリータは告げる。

 前振りなく、唐突に。


「シンディ殿、何かあればギルドへ、連絡を入れてくれ」


「え? 何かあれば?」


 何かあれば、ギルドへ連絡?

 一体、どういう事だろう。

 シンディは呆気に取られた。


 そんなシンディにおかまいなく、マルガリータは話をどんどん進めて行く。


「うむ! 連絡先は、ギルドマスターのミンミ様宛にな。もしも緊急を要するなら、連絡は直接ルウ様か、フランシスカ様でも構わない」


「…………」


「今後、貴女が難儀した時……私は、出来る限り力になろう……当然、楓村にも赴く」


「…………」


「……また、戦おう」


 そう言うとマルガリータは僅かに微笑み、くるっと踵を返し、自分の席へ歩いて行ってしまった。


 残されたシンディは、暫し呆然とした後、ハッとした。

 フランの告げた言葉を思い出し、理解したのだ。


 ……シンディがマルガリータと戦う理由。

 フランが明かさなかった、3つ目の理由を。


 それは……

 王都を去り、見知らぬ者ばかりの楓村へ旅立つシンディが、心強い新たな友を得る為である。

 同じくマルガリータも……

 シンディの実力を体感して、好意を持ち、友と認めるきっかけを作る為でもある。

 

 確かに、シンディは、戦ってみて感じた。

 マルガリータは、素敵な女だと。


 まず、男性顔負けの体躯で、とんでもなく強い。

 誇り高いが、潔く嘘をつかない、清廉潔白な戦士でもある。

 勝負の決着の際の、態度を見ても明白である。


 改めて、話してみて分かった。

 強面で、とっつきにくそうだったが、意外にも話しやすい。

 無口でぶっきらぼうだが、それなりに礼儀正しい。

 

 そして何よりも、マルガリータは戦う事が好きだ。

 生粋の騎士であるシンディは、武骨なマルガリータが自分に似ている気がして、とても好ましい。

 絶対に、気が合いそうだとも思う。


 もっとお互いに分かり合えば、マルガリータとは素晴らしい友になれる。

 そんな予感がするのだ。


「フランちゃん……ありがとう」


 少し離れた場所で、母アデライドと談笑するフランを見て……

 シンディはそっと呟いたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!


東導 号の別作品も、ぜひご愛読お願い致します。


『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


謎の死を遂げた青年ケンは、異世界の辺境村へ少年として転生。数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せをつかんだケンは、愛する家族を守ろうと奮闘する。

『奇跡の再会、奇跡の邂逅編』を連載中です。


本日10月5日更新しております。

ぜひお楽しみ下さい。

応援宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ