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第1,052話 「後を託して㉒」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第1~4巻が発売中です!


7月21日発売の、最新第4巻はルウとモーラルの表紙です。

第1巻~3巻の既刊共々、お見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。


皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※新刊、既刊、共に店頭にない場合は、恐縮ですが書店様にお問合せ下さいませ。

 凄まじい速度で、突っ込むシンディ。

 長年に渡って、鍛え抜かれた足腰からは、見事な脚力と瞬発力が繰り出されている。

 

 対して、素早く剣を構え直すマルガリータ。


「おおおおおおっ!」


 固唾を飲んで試合を見守る、部員達のどよめきが起こった。

 誰もが……

 遂に! ふたりが決着をつける時だと、確信したからである。


 瞬く間に、ふたりの身体が交錯し、ほぼ同時に、剣が革鎧を打つ音が響いた。


「ぐ!」「くう!」


 剣に付呪エンチャントされた、雷撃が身体を走ったのだろう。

 マルガリータ、シンディ両名共、小さな悲鳴があがった。


 結局……考えに考え抜いて、シンディが選んだ攻撃は『突き』である。


 剣による様々な攻撃の中で、突きは最も速く、最短距離で敵を捉える事が出来る。

 一撃に、勝負を賭けたシンディとしては、最善な手と言えるだろう。

 

 だが、驚いた事に、マルガリータも同じ『突き』を放っていた。

 こちらも、瞬時に相手の攻撃を判断し、一番のカウンターを狙ったのだ。


 ほぼ同時に放った、ふたりの一撃は、どちらも有効であった。

 判定役の魔導水晶が雷撃に反応し、間を置かず二度、美しく点灯したのである。


「おおおおおおおおっ!」


 再び、部員達のどよめきが起こった。

 シンディとマルガリータが、たった一撃に勝負を賭けた事を、はっきり認識した感動の叫びである。


 果たして、勝者は?

 主審のジゼルが、副審のシモーヌが、目を凝らし見極めようとした。


 しかし!

 驚くべき事が起こった。


「審判! 私の負けだ」


 何と!

 マルガリータが、すぐに手を挙げ、自らの負けを宣言したのである。


「改めて判定する必要などない! シンディ殿の突きが、私より一瞬早く入っていた」


 ジゼルとシモーヌに向かって、マルガリータはきっぱりと言い放った。

 あまりにも堂々とした態度、その潔さに……

 ジゼルとシモーヌは息を呑む。


「シンディ殿も……分かっている筈だ」


 マルガリータは、そう言うと、にっこり笑った。

 普段、彼女が滅多に見せない笑顔に、アモンも苦笑している。


 一方のシンディも……

 打ち合った瞬間、自身の勝利を確信していたらしい。

 勢いよく、剣を持つ手を突き上げた。


 ジゼルとシモーヌが、顔を見合わせて頷き合う。


「勝者! シンディ・ライアンっ!!!」


 尊敬出来る師匠として、愛すべき先輩として…… 

 シンディが見せてくれたのは、素晴らしい戦いだった……

 

 心が震えるような感動と、嬉しさも込め……

 ひときわ大きな声で、ジゼルは主審として、試合の決着を告げた。


「おおおおおおおおおおおお~~っ!!!」


 感極まるジゼルの声に応えるように、部員達の大歓声と熱い拍手の音が、屋内闘技場を満たしたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ジーモンVSアーモン、シンディVSマルガリータ。

 エキシビションマッチは、魔法武道部の部員達に、新たな刺激と感動を与えて終わった。


 まだ興奮冷めやらぬ中、ジゼルとシモーヌからは、新たな説明が為されていた。

 それは、ここからが本番ともいえる、部員達の『練習方法』である。


 説明を聞きながら、部員達は認識した。

 行われたエキシビションマッチは、それぞれ深い意味を持っていたと。


 まずジーモンとアモンの試合は、逞しい男性戦士同士の、激しい戦いを見せる事で……

 ルウ以外の男性と戦う、未知の経験をする覚悟を持たせる為。


 そしてシンディとマルガリータの試合は、『本気』になったシンディの真剣勝負を見せ、緊迫感を持たせるのは勿論……

 大先輩のひたむきさを見せ、後輩である部員達のモチベーションを大幅に上げる為である。


 ちなみに、具体的な練習方法はシンディとマルガリータの試合に倣う。

 部員達は革兜に革鎧を装着、練習用の剣を使い、3分間の間に3本相手へ打ち込めば勝ちだと告げられたのである。


 そして、戦う相手は特別講師役の3人。

 ジーモン、アモン、マルガリータである。

 

 男性のジーモンとアモンだけではなく、女性のマルガリータが相手をするのは……

 ジゼルが説明した通りである。

 エキシビションマッチを見ても、やはり男性には、臆して戦えない……

 という部員にも配慮、対応する為だ。


 ここで、誰もが思うだろう。

 超が付く、一流剣士のシンディでさえ、『本気』を出して戦った相手である。

 半人前に行くか行かないかの部員達が、練習試合とはいえ、勝てる確率はゼロに近い。


 しかしそんな心配は無用。

 この練習試合は、『ハンデ戦』であると、ジゼルは前もって告げている。

 生徒達が臆さぬよう、戦うモチベーションを保てるよう、ジーモン達にハンデを付けたのだ。


 改めて、ジゼルとシモーヌから、訓練方法の説明があった。


「おおおおおおおおおおっ」


 説明を聞いた部員達は……

 大きな声でどよめき、安堵……全員の表情が晴れやかになる。

 お互いに嬉しそうな笑顔で、朝、元気にさえずる小鳥のように、囁き合ったのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!


東導 号の別作品も、ぜひご愛読お願い致します。


『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


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謎の死を遂げた青年ケンは、異世界の辺境村へ少年として転生。数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せをつかんだケンは、愛する家族を守ろうと奮闘する。

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本日10月1日更新しております。

ぜひお楽しみ下さい。

応援宜しくお願い致します!

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