第1,052話 「後を託して㉒」
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凄まじい速度で、突っ込むシンディ。
長年に渡って、鍛え抜かれた足腰からは、見事な脚力と瞬発力が繰り出されている。
対して、素早く剣を構え直すマルガリータ。
「おおおおおおっ!」
固唾を飲んで試合を見守る、部員達のどよめきが起こった。
誰もが……
遂に! ふたりが決着をつける時だと、確信したからである。
瞬く間に、ふたりの身体が交錯し、ほぼ同時に、剣が革鎧を打つ音が響いた。
「ぐ!」「くう!」
剣に付呪された、雷撃が身体を走ったのだろう。
マルガリータ、シンディ両名共、小さな悲鳴があがった。
結局……考えに考え抜いて、シンディが選んだ攻撃は『突き』である。
剣による様々な攻撃の中で、突きは最も速く、最短距離で敵を捉える事が出来る。
一撃に、勝負を賭けたシンディとしては、最善な手と言えるだろう。
だが、驚いた事に、マルガリータも同じ『突き』を放っていた。
こちらも、瞬時に相手の攻撃を判断し、一番のカウンターを狙ったのだ。
ほぼ同時に放った、ふたりの一撃は、どちらも有効であった。
判定役の魔導水晶が雷撃に反応し、間を置かず二度、美しく点灯したのである。
「おおおおおおおおっ!」
再び、部員達のどよめきが起こった。
シンディとマルガリータが、たった一撃に勝負を賭けた事を、はっきり認識した感動の叫びである。
果たして、勝者は?
主審のジゼルが、副審のシモーヌが、目を凝らし見極めようとした。
しかし!
驚くべき事が起こった。
「審判! 私の負けだ」
何と!
マルガリータが、すぐに手を挙げ、自らの負けを宣言したのである。
「改めて判定する必要などない! シンディ殿の突きが、私より一瞬早く入っていた」
ジゼルとシモーヌに向かって、マルガリータはきっぱりと言い放った。
あまりにも堂々とした態度、その潔さに……
ジゼルとシモーヌは息を呑む。
「シンディ殿も……分かっている筈だ」
マルガリータは、そう言うと、にっこり笑った。
普段、彼女が滅多に見せない笑顔に、アモンも苦笑している。
一方のシンディも……
打ち合った瞬間、自身の勝利を確信していたらしい。
勢いよく、剣を持つ手を突き上げた。
ジゼルとシモーヌが、顔を見合わせて頷き合う。
「勝者! シンディ・ライアンっ!!!」
尊敬出来る師匠として、愛すべき先輩として……
シンディが見せてくれたのは、素晴らしい戦いだった……
心が震えるような感動と、嬉しさも込め……
ひときわ大きな声で、ジゼルは主審として、試合の決着を告げた。
「おおおおおおおおおおおお~~っ!!!」
感極まるジゼルの声に応えるように、部員達の大歓声と熱い拍手の音が、屋内闘技場を満たしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ジーモンVSアーモン、シンディVSマルガリータ。
エキシビションマッチは、魔法武道部の部員達に、新たな刺激と感動を与えて終わった。
まだ興奮冷めやらぬ中、ジゼルとシモーヌからは、新たな説明が為されていた。
それは、ここからが本番ともいえる、部員達の『練習方法』である。
説明を聞きながら、部員達は認識した。
行われたエキシビションマッチは、それぞれ深い意味を持っていたと。
まずジーモンとアモンの試合は、逞しい男性戦士同士の、激しい戦いを見せる事で……
ルウ以外の男性と戦う、未知の経験をする覚悟を持たせる為。
そしてシンディとマルガリータの試合は、『本気』になったシンディの真剣勝負を見せ、緊迫感を持たせるのは勿論……
大先輩のひたむきさを見せ、後輩である部員達のモチベーションを大幅に上げる為である。
ちなみに、具体的な練習方法はシンディとマルガリータの試合に倣う。
部員達は革兜に革鎧を装着、練習用の剣を使い、3分間の間に3本相手へ打ち込めば勝ちだと告げられたのである。
そして、戦う相手は特別講師役の3人。
ジーモン、アモン、マルガリータである。
男性のジーモンとアモンだけではなく、女性のマルガリータが相手をするのは……
ジゼルが説明した通りである。
エキシビションマッチを見ても、やはり男性には、臆して戦えない……
という部員にも配慮、対応する為だ。
ここで、誰もが思うだろう。
超が付く、一流剣士のシンディでさえ、『本気』を出して戦った相手である。
半人前に行くか行かないかの部員達が、練習試合とはいえ、勝てる確率はゼロに近い。
しかしそんな心配は無用。
この練習試合は、『ハンデ戦』であると、ジゼルは前もって告げている。
生徒達が臆さぬよう、戦うモチベーションを保てるよう、ジーモン達にハンデを付けたのだ。
改めて、ジゼルとシモーヌから、訓練方法の説明があった。
「おおおおおおおおおおっ」
説明を聞いた部員達は……
大きな声でどよめき、安堵……全員の表情が晴れやかになる。
お互いに嬉しそうな笑顔で、朝、元気にさえずる小鳥のように、囁き合ったのであった。
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