第1,051話 「後を託して㉑」
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冒険者ギルドの女戦士マルガリータこと、悪魔従士マルコシアス……
彼女の強さと技量を見抜いたシンディは……
3本取る、『完全勝利』をきっぱりと諦めた。
この思い切りの良さは、シンディの長所のひとつだ。
与えられた試合時間の3分間を目一杯使い、1本だけ取って勝つ事!
を、瞬時に判断し、決めたのである。
シンディは、ひたすらマルガリータへ、小刻みに剣を振り込む。
上下左右、様々な角度から。
戦う相手を、より詳しく知る為に。
しかし、マルガリータは何故か反撃して来ない。
シンディの剣先を、巧みに躱すだけである。
それも最小限の動きしかしない。
攻撃を続けながら、シンディは思う。
マルガリータほどの戦士なら、自分の意図を容易く見抜くと。
本気で攻めていない、偽りの攻撃なのだと。
間違いない。
確信出来る。
マルガリータは、自分の間合いへ、シンディが入って来ない事を認識している。
だが、この攻撃も無駄ではない。
シンディは徐々に、マルガリータの戦法が分かって来たからだ。
そして、殆ど目立たない小さな癖も……
このようなタイプの剣士、戦士と、シンディは数回戦った事がある。
相手が強敵だと認めた場合のみ、特殊な戦法をとる。
一撃必殺を信条とする者達だ。
シンディは確信した。
例に漏れず、マルガリータもシンディを一発で仕留めようとしていると。
相手も間違いなく、シンディを強敵だと認めたといえよう。
そう……マルガリータは、待っている。
シンディが、自分の必殺の間合いに入る事を。
数少ない攻撃機会を、狙っているのが分かる。
殆どの武道が、攻撃の直後に大きな隙を生む。
その時こそ、相手を沈める最大のチャンス。
マルガリータは、カウンターを狙っている。
こうなると……
シンディの目的は、手段は決まって来る。
マルガリータの『間合い』を見切るのだ。
相手の間合いに入らない、ギリギリの位置から攻撃する。
いわば肉を斬らせて骨を断つ戦法で行く。
身体を動かす際の癖を掴む以外に、別の奥の手も使う。
でも……
その奥の手を使う為には、まだまだ相手の『情報』が足らない。
シンディは、更に手数の速さを上げ、回数を増やしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
シンディVSマルガリータ……
エキシビションマッチの開始から、2分間が過ぎた。
魔導懐中時計を見た副審のシモーヌが、大きな声を張り上げる。
「試合時間! 残り! 1分を切りましたぁ!!!」
相変わらず、攻めるのはシンディのみである。
対するマルガリータは、防戦一方に見える。
しかし勝負はまだまだ。
本当の戦いは、始まってはいない。
シンディは、今の状況とは全く違う、様々な展開も想定していた。
ひとつの考えに固執し過ぎると命を落とす。
戦場は千変万化。
いろいろな可能性があり、状況は目まぐるしく変わる。
例えば……
『本気』で攻め込まないシンディに、痺れを切らしたマルガリータが強引に打ち込んで来るとか……
しかしその時こそ、シンディが勝つチャンスでもある。
マルガリータだけではない。
実はシンディも……
カウンター攻撃は、大の得意なのである。
相手の剣速がとんでもない化け物レベルでなければ……勝つ自信はそこそこある。
しかし冷静沈着というか、我慢強いというか……
マルガリータは攻めては来ない。
剣を振りながら、シンディは「ふっ」と笑う。
こうして真剣に戦うのは……暫くぶりだ。
気が付けば、戦いに夢中となっている。
自分を見守る部員達の事さえ、失念していた。
もてはやされた若い頃とは違う。
身体を動かすと、少し軋むような気がする。
練習はしていたのに、こんなになまっていたのかとも思う。
持久力も落ちた?
疲れが出て来た気もする。
しかし、もし誰かが……
戦うシンディへ「今、楽しい?」と聞いたら、
間違いなく彼女は、「楽しい!」と断言するであろう。
ここでまたシモーヌが声を張り上げる。
「試合時間! 残り! 30秒!!!」
さあ!
残り時間も僅かだ。
そろそろ勝負。
大丈夫!
もうマルガリータの癖は掴んだ。
彼女の僅かな身体捌きで、次の動作が見える。
相手の攻防が予想出来る。
別の、『奥の手』も……ばっちり使えた。
少々心配だったが……錆びついてなどいなかった。
相手は強敵だが、勝機はある!
僅かな隙を衝き、渾身の力を込め、必殺の剣を叩き込むのだ。
「うおおおおおおおおおおおっ!!!」
多分、先ほどのジーモンとアモンの戦いに刺激されたのだろう。
シンディは雄叫びをあげ、剣を振りかざす。
そして、思い切り大地を蹴ると、マルガリータめがけて突っ込んだのであった。
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