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第1,050話 「後を託して⑳」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第1~4巻が発売中です!


7月21日発売の、最新第4巻はルウとモーラルの表紙です。

第1巻~3巻の既刊共々、お見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。


皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※新刊、既刊、共に店頭にない場合は、恐縮ですが書店様にお問合せ下さいませ。

 ここは、魔法女子学園屋内闘技場。


 エキシビションマッチが終われば、次は自分達が戦う……

 心に大きな不安を抱いた、魔法武道部部員達が一斉に見つめる中……

 シンディは、マルガリータこと悪魔マルコシアスと対峙していた。


 マルガリータとは、今日初めて会った。

 彼女は、あまりしゃべらず無愛想だったが……

 けして、シンディの嫌いなタイプではない。

 ぽつぽつと話す口調に、少しだが、温かさも感じていた。

 

 だが今は、完全に変貌していた。

 戦闘態勢に入り、凄まじい気合を発している。


 マルガリータの発する気合は……

 先ほど戦っていた男達とは全く違う……

  

 シンディはそう感じた。


 触れる者全てを破壊しようとする、ジーモンの荒ぶる気合……

 普段は静かな活火山が、いきなり大爆発するような、アーモンの気合とも違う。


 例えれば……

 絶える事無く、ごうごうと、天に向かって激しく吹き上げる猛炎。

 少しでも気を抜けば、すぐ燃やし尽くされ、塵にされてしまいそうな気合なのだ。


 そんな怖ろしい気合を発しながら、対面のシンディを、眼光鋭く睨む……

 戦士マルガリータは、とても美しい女だ。


 極端に短く刈った髪は、まるで若武者のように凛々しい。

 切れ長の眼を持ち、鼻筋は真っすぐに通っている。

 

 特に目立つのは、美しく煌く瞳の色。

 鮮やかな金色アンバーで、ふたつ名である『天狼』の名の通り、彼女を獰猛な狼のように見せている。


 身長は190cm近くあり、女子では大柄な部類に入るシンディより僅かに大きい。


 だが、マルガリータの体躯は単に大きいだけではない。

 全身がバランス良く鍛え抜かれており、贅肉が全くない。

 秘めたバネが凄まじい事も、容易に想像出来る。


 強者は強者を知る。


 先ほどのジーモン同様、シンディにもマルガリータの力量はすぐに分かった。

 絶対に、ただ者ではないと。

 少なくとも、暫く実戦から遠ざかった、今の自分よりは遥かに強者である事を。


 更にいえば、シンディにとって、マルガリータは初見の相手。

 どんな戦法をとるのか、全く分からない。


 そんな未知の相手と戦う時、シンディはある戦法を取る。

 相手の必殺の間合いにはけして入らず、絶対に致命傷を受けない位置で、軽く手数を出す。


 攻められた相手は、何らかの反応をするだろう。

 シンディと同じく攻めるのか、防ぐのか、避けるのか……


 その際、必ず身体を動かす。

 身体を捻り、腕を振って、足をいずれかへと運ぶ……


 そもそも武道の達人は、無駄な動きをしないものだが……

 僅かな動きでも、シンディは相手の癖をしっかり読み取る事が出来た。


 そのうち機を見て、本格的な攻めに転じ、最後には打ち倒す。

 先ほどジゼルが告げた、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という、戦いの心得を自然と実践していたのだ。

 シンディの持つ『強み』のひとつである。


 シンディは魔法騎士……ミンミと同じく火の魔法剣士である。

 

 馬に騎乗していても、地上に立つ時でも……

 敵と戦い、葬る際には、強力な属性魔法は勿論、補助的な魔法も使い、戦いを有利に進めながら、相手を確実に倒す。


 スピード、パワー、スタミナ、剣技、体さばき、そして短い時間で効率良く発動させる種々の魔法。

 更に、シンディのふたつ名、『鉄姫』は、彼女の打たれ強さからも来ていた。

 つまり肉体のタフさでも、抜きんでていたのである。


 しかし、今から戦うのは、様々なルールに縛られた試合……

 魔法は使えず、剣技だけで戦うしかない。

 

 いろいろと考えて、シンディは苦笑した。

 こんなに真剣な気持ちで、戦いの事を考えたのは、果たして何年ぶりだろうと。


 そんなシンディへ、相変わらずマルガリータは鋭い視線を投げかけていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 シンディがいろいろと思考を巡らせていたら、すぐに試合開始の時は来た。


「始めっ!」


 ジゼルの発する合図で、いよいよエキシビションマッチが開始された。

 『訓話』もあったせいで、ミシェル、オルガ達部員の食い入るような視線も注がれていた。


 シンディは迷わずに、ダッシュして、マルガリータへ迫った。


 昔に帰る。

 原点へ戻る。

 フランの言う『本気モード』になる為には、自身の眠っている力を呼び覚ますしかない。


 細かく、手数を出し、相手の力を見極める。

 そして勝機が見えたら、一気に攻め、勝利を収める。


 だが、もしも実力に開きがあったら……

 守りに徹し、数少ない機会チャンスを掴む。

 そうも考えている。


 まだ……

 シンディには奥の手が、いくつかあった。


 日々、生徒達へ指導をしても……

 『真の実力』は、自分の力で身につけるしかないと、シンディは考えている。


 その真の実力とは……

 個々の使う最も適した戦法、戦うスタイルの事。


 教師として、『基本的な指導』『アドバイス』は出来る。

 だが、生徒各自へ、個々に適したスタイルは教えきれない。

 自らが、努力と研鑽の中で掴むしかないのだ。


 中でも、自分が使える特別な技、つまり奥の手は簡単にはさらさない。

 いつまみえるやもしれぬ、未知の強敵に対し、勝利を収める為に。

 これは、魔法使いが自分の使う、究極の魔法を秘匿するのと全く同じ理屈である。


 相手の体捌きで、僅かな癖を見抜き、そこを衝いて攻撃するという技も公にはしていない。

 そして、これから使う技も……

 シンディが戦い始めてから、ずっと使ってはいるが、誰にも告げた事がないのだ。


 但し、才ある者は……

 他者の戦いを見て、その本質を見抜く事も出来る。


 この私の使う技を見抜き、己が使いこなせるのなら……

 貴女達、遠慮なく持っていきなさいっ!


 シンディは、心の中で大きく叫び、マルガリータへ向かって突進して行った。

いつもお読み頂きありがとうございます!


東導 号の別作品も、ぜひご愛読お願い致します。


『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


謎の死を遂げた青年ケンは、異世界の辺境村へ少年として転生。数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せをつかんだケンは、愛する家族を守ろうと奮闘する。

『奇跡の再会、奇跡の邂逅編』を連載中です。


そして、


『最強魔族の私を……あなたの愛で人間にしてくれますか?』


https://ncode.syosetu.com/n9802ex/


人間から魔族が生まれる……

哀しい運命を背負った幼い少女ツェツィリアは、実の両親から不気味な森へ捨てられた。

それから10年の月日が流れ……名もない王都の冒険者アルセーヌは、不器用だがひたすら懸命に、生きていた。美しく成長したツェツィリアと、天涯孤独のアルセーヌは、運命の出会いを遂げる。愛を確かめ合うふたり……しかし、謎めいた魔法使いルイは、ツェツィリアが、まもなく完全な夢魔となり、魔界へ堕ちると告げる。アルセーヌは決意する。ツェツィリアを救う為に、苦難の道を踏み出す事を。

……と、いうお話です。


両作品とも、本日9月24日更新しております。

ぜひお楽しみ下さい。

応援宜しくお願い致します!

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