第1,049話 「後を託して⑲」
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フランの叱咤激励を思い出し……
シンディは、改めて身が引き締まった。
フランは、はっきりと言っていた。
マルガリータが戦うエキシビションマッチの対戦相手が、シンディでなくてはならない理由が3つあると……
ひとつは、シンディの教師生活が残り少ないという事実。
具体的には……再来年の3月までである。
それ故、魔法武道部部員……
つまり、愛弟子の生徒達へ指導する、貴重な機会であるという事。
ひとつは、これから移住する楓村の貴重な守り手として、本気モードへ移行する必要がある事、つまり本来のシンディへ戻って貰う為である。
このふたつの理由に関しては、充分に納得した。
フランの優しい思い遣りが、とても嬉しかった。
しかし3つ目の理由に関しては……
シンディがいくら聞いても、フランは結局教えてはくれなかった。
「ねぇ、フランちゃん。私が出場する3つ目の理由って何?」
「今の時点では内緒です。実際にマルガリータさんと戦えば……分かります」
「え? 内緒? 実際にマルガリータさんと戦えばって? 一体どういう事?」
「ノーコメントです」
「何よ、ノーコメントって? 戦わないと分からないの?」
「そうです、シンディ先生が戦った後に分かるのです」
「私が戦った後に……」
きっぱりと言い切るフランを見たら、それ以上は聞けず、シンディも引き下がるしかなかった。
……つらつらと考えるシンディの耳へ、ジゼルの凛とした声が響く。
「マルガリータ殿、シンディ先生、宜しいか? この試合のルールを説明する」
「…………」
マルガリータことマルコシアスは黙って、僅かに頷いた。
続いて、シンディも頷く。
「お願いします」
ここでジゼルは、すぐにルールの説明に移らなかった。
どうやら部員達へ、話があるようだ。
ジーモンとアモンの試合を見学した、彼女達の態度が気になったらしい。
「申し訳ない、おふたかた、一瞬待ってくれ。部員達へ話がある」
マルガリータとシンディへ軽く頭を下げ、ジゼルは部員達へ向き直る。
「ちょっと聞いてくれ、お前達」
「…………」
「厳しい言い方かもしれないが、敢えて言おう」
「…………」
「先ほどの試合もそうだが、凄いとか言って、単に見ているだけでは駄目だ。エキシビションマッチに出るのを自分に置き換え、相手と、どのように戦うかイメージしなくてはいけないぞ。折角の機会が全くの無駄となる」
「…………」
「もう一度言う。己をマルガリータ殿、もしくはシンディ先生に置き換えて、試合を良~く見るのだ」
「…………」
「さて、ここで、ルウ先生から頂いた言葉を述べよう」
「…………」
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず……この言葉はな、古に書かれた、東方の軍事書にある言葉だそうだ」
「…………」
「彼を知りというのは、戦う相手を良く知るように心掛けよという意味である。そして己を知れというのは文字通り、……自分の実力を良く知り、踏まえて戦えという意味だ」
「…………」
「最後の、百戦殆うからずとは……何度戦っても負ける事はないという意味だが、この部分だけ私は異議がある」
「…………」
「所詮、常勝無敗など幻想で、どのような強者でも負ける事は……あると思うのだ」
「…………」
「だから私は、この言葉を広義に解釈した」
「…………」
「相手を知り己を知れば……常に冷静に、且つ様々な状況において、最適な戦い方が出来るという意味として理解した。攻める、守る、時には撤退する……つまり戦法、そして勝機を見極められる事だとな」
「…………」
「さて……前置きが、少し長くなった。改めてルールを説明する」
ジゼルは、部員達にしっかり念を押したのである。
今回のイベントの、真の意味を。
マルガリータも目を閉じ、黙って聞いていた。
そして、シンディも黙って聞いていた……
ルウが、そんな事を言ったのかと。
でも、納得出来る言葉だと思う。
自分も、楓村へ害為す敵を、しっかり熟知して戦わないといけない、そう思う……
だが、シンディは首を振った。
今は、そんな事を考えてはいけない。
目の前の強敵、マルガリータに集中すべきなのだと。
生徒達へジゼルは、この試合のルール説明を行った。
今回の試合は、ロドニア式の相撲ではない。
ジーモンVSアモンの試合とは、全く違う形式だ。
『武器』を……使うのである。
しかし部員達には、馴染みのある武器であった。
普段の練習でも使っている、『雷撃』が付呪された模擬剣なのだ。
この模擬剣を使い、シンディとマルコシアスは勝負を争う。
勝負はポイント制、模擬剣である程度のダメージを相手に与えると、『一本』となる。
攻撃が、有効かどうかは、雷撃に反応して光る特製の魔導水晶によって判定する。
試合時間は僅か3分。
この限られた時間の中で、先に3本先取するか……
満たなくても、試合終了までに本数の多い方が勝ちとなる。
審判役のジゼルとシモーヌは、実際の戦いとは違う危険行為も禁じた。
例えば急所への攻撃等である。
模擬も含め試合ならではの特別ルールだ。
最後にジゼルが言った事に、部員達はとても驚いた。
それは……この試合終了後、行われる部員達の特別訓練がこの模擬試合を取り入れた方法だったからである。
対戦相手は部員の希望により、ジーモン、アモン、そしてマルコシアスから選ぶ事も同時に告げられた。
最初からジーモンと戦うつもりだったミシェルとオルガは覚悟を決めていたが……
部員の中には、剣での戦いには不慣れな者も居る。
今迄とは全く違う、新たな緊張が……
魔法武道部部員達の間に、さざ波のように広がったのであった。
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