第1,048話 「後を託して⑱」
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意外ともいえる、厳しく激しい言葉を聞き……
シンディは吃驚してフランを見る。
ずっと家族ぐるみの、付き合いをして来たからかもしれない。
だが、昔からシンディの中で、名門ドゥメ-ル伯爵家令嬢フランのイメージといえば……
『おっとりした優しい淑女』というものだったから。
大きく目を見開き、驚くシンディへ、フランは真剣な表情を向ける。
「シンディ先生! 今回はとても良い機会なのです」
「良い機会……」
「はい! 理由は3つ」
「え? り、理由が3つもあるの?」
フランは単なる気まぐれで、シンディを対戦相手に決めたのではないらしい。
いろいろな結果を想定し、考え抜いた結果なのだろう。
決定した理由が3つもあると聞き、シンディはとても気になった。
「はい! ひとつは部員達へ、きちんと最後の指導をして頂きたい事」
「私が? 最後の指導を? でも……」
『最後の指導』と言われ、シンディは首を傾げた。
自分は、確かに魔法女子学園を退職する。
但し、退職時期は再来年の3月であり、それまでは教師の仕事と共に、魔法武道部の指導も続ける予定なのである。
フランの言う事は、少し不可解だ。
そんなシンディの考えを読んだのか、フランは言う。
「はい! 確かに……来年一杯、先生は学園にいらっしゃいます。ですが……今年に比べて、部を指導する頻度はぐっと減りますよね?」
「…………」
フランの指摘に対し、シンディは言葉を返さなかった。
確かに納得、出来るからである。
多分、部の練習に顔を出す回数は大幅に減ると思われる。
楓村へ移住する、様々な準備がある為だ。
「ならば! このエキシビションマッチは部の生徒達へ、先生の貴重な指導としては、数少ないベストな機会です」
「数少ないベストな機会……」
「はい! 宜しいですか? 常に……これが最後の指導だという、背水の陣の気構えで臨んで下さい!」
「は、背水の陣…………」
今回は魔法武道部として、ルウが新しい練習方法を提案した時と同じく、とても大きな節目になるかもしれない……
そう、シンディは感じていた。
で、あればフランの言う、『貴重な機会』というのは尤もである。
シンディの様子を見て、フランは僅かに微笑んだ。
「どうやら、分かって頂けたようですね」
「…………」
「では、ふたつめ……シンディ先生の本気の戦いを見せる相手として……」
「…………」
「冒険者ギルドランクAの、マルガリータさんは理想的な相手です」
「私の本気を見せる?」
「ええ……失礼ですが、鉄姫と呼ばれたシンディ先生も、暫く実戦から遠ざかっています」
「…………」
「再来年からは……ライアン伯爵が管理官として赴任する、楓村の守り手として」
「…………」
「夫君、ご子息と共に、否応なく実戦の場に出るのでしょう?」
「…………」
「旦那様……いえ、ルウ先生からは聞いています。最近楓村近辺に出没する魔物は手ごわいと」
「…………」
どれもこれも……
フランの言う通りだ。
実戦から遠ざかっている事も、楓村周辺に出る魔物が手ごわいという事も。
シンディは記憶を手繰った。
……すっかり逞しくなった息子ジョナサンと共に、ルウは楓村の魔物と戦った。
結構な苦戦を強いられたと、ジョナサンは苦笑していた。
それに夫キャルヴィンからも、息子が戦ったゴブリンが、普通の魔物とは違うと聞いている。
結構な強敵となるのは、間違いないだろう……
シンディは納得し、ゆっくりと頷いた。
王国への手続き、引継ぎ、引っ越しの手配、楓村村民への挨拶等々……
無事に赴任する事ばかり考えて、少々気が緩んでいたかもしれない……
フランは微笑み、更に言う。
「で、あれば、シンディ先生は今のままではいけません、絶対に!」
「え?」
「少しでも早く! 本気モードへ戻って頂かなければなりません。ご自身の命は勿論、大切な家族と楓村の村民を守る為に!」
「ほ、本気モードって…………」
「言葉通りです! 本気になって下さい!」
「…………」
「そうでないと! 私は安心してシンディ先生のクラスを引き継げません。先生から後を託されても、心配でたまりません」
「フ、フラン……ちゃん!」
実は……
最近シンディは、自分の力の衰えを感じていた。
加えて、自信も徐々に喪失しつつあった……
鉄姫と呼ばれた、若い頃……全盛時代とはもう違うからと……
無理やり、自分を納得させていた。
確かに、年齢的に肉体的な衰えはあるだろう。
しかし、シンディが自信を失った本当の理由は……嫉妬、そして劣等感。
対象はルウ……
魔法武道部にずっとあった不和、新たな練習方法を用いた退部者続出の回避、ジゼルとシモーヌを始めとした部員の劇的な実力のアップ。
そして私生活でも……
悩みに悩んでいた、ジョナサンの命を救い、見事に立ち直らせた……
あらゆる面で、まだ若いルウの天才的な才能を見せつけられ……
生まれた僻みと、劣等感……そして『諦め』が原因の自信喪失なのだ。
それをフランは、しっかり見抜いていたのである。
一流冒険者マルガリータの相手にシンディを選んだのは、フランの深い思い遣りと優しさ……そして叱咤激励。
シンディは、胸が一杯になり……
思わずフランを、『愛称』で呼んだのであった。
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東導 号の別作品も、ぜひご愛読お願い致します。
『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』
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