第1,047話 「後を託して⑰」
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ジーモンとアモンの模擬試合が終わり、ふたりは指定された控え場所へ引き下がった。
無言で、用意された椅子に座る。
だがふたりは、敢えて語り合ったりはしない。
いくら気持ちが通じ合っても、べらべらと喋らないのは、性格的に当然ともいえる。
一方……
進行内容を、具体的に知らされていない、魔法武道部の部員達は半信半疑だ。
この後は一体、どうなるのかと。
とりあえず、エキシビションマッチは終わった。
誰もが文句なく、息を呑むような、凄い内容だった。
確かに闘技場のように、互いの命を懸けた、血みどろの殺し合いではない。
だが、とんでもない迫力だった。
不思議と怖くはなかった。
部員全員が、ジーモンとアモンの戦いに刺激されて、気持ちが高揚していた。
相手が男性では、少し怖い気もするが……戦える。
真剣に、気合を籠めて。
ならば、すぐ自分達の訓練に入るのか、それとも……
と、部員達が考えた、その時。
ジゼルとシモーヌが前に出て来て、さっと手を挙げた。
主審役のジゼルが言う。
「さて、みんな、聞いてくれ。……今の試合でまだ興奮冷めやらぬだろうが……エキシビションマッチは、もうひと試合ある」
エキシビションマッチが、もうひと試合?
一体、どういう組み合わせ?
部員達の視線は、一斉にジーモン達3人へと注がれた。
今回呼ばれた、特別講師は3名だ。
そのうち男性ふたり、ジーモンとアーモンこと悪魔アモンの試合は終わった。
残る講師は……女性戦士のマルガリータこと悪魔マルコシアスである。
マルガリータの相手はジーモン? それともアモンなのか……
男性であっても、これだけ激しい戦いをして、ろくに休みも取らずで、万全の状態で戦えるのか?
……という、部員達の心配は杞憂に終わった。
ジゼルは大きな声で呼びかける。
戦う者のひとりは、部員達の予想通りだ。
「宜しく! マルガリータ殿!」
「おう!」
マルガリータは「すっすっ」と音も立てず、しなやかに歩いて行く。
まるで、猫科の猛獣が獲物へ忍び寄るように。
生徒達は、またもやシーンとなった。
いかに半人前とはいえ、マルガリータがただ者ではない事が、ひと目で見て取れたからだ。
マルガリータは先ほど、アモンが立っていた場所へ立ち、腕組みをした。
では!
彼女の対戦相手は!?
生徒達の視線は一旦ジーモン達へ向けられたが……
意外にも、ジゼルの声は全く違う名を呼んだのである。
「では! シンディ先生! お願いしたい!」
「はいっ!」
呼び出すジゼルの声に応え……
凛々しい声で返事をしたのは、何と!
部の顧問シンディ・ライアンである。
え?
シンディ先生!?
「「「「「「おおおおおおおっ!」」」」」」
驚いた部員達は、思わずどよめいた。
いきなりシンディが出るとは、誰も考えていなかった。
特別講師のジーモンとアモンでなければ、コーチのカサンドラかも?
もしくは、部長ジゼルと副部長シモーヌのどちらかが、マルガリータの相手をすると予想していたのだ。
椅子から立ち上がり、ゆっくりと前へ歩むシンディを見て、生徒達は更に驚いた。
彼女が、いつものように、穏やかな優しい表情をしていなかった。
眼光は鋭く、口は「きゅっ」と引き締められている。
マルガリータの対面……
ジーモンが立っていた場所まで、シンディは歩いて行った。
やがて到着し、大きく息を吐くと、マルガリータに向かって、深々と礼をしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時間は、少しさかのぼる……
3日前の事である。
魔法女子学園校長室で、ふたりの女性が向き合っていた。
フランとシンディである。
お互いに真剣な表情であった。
先にOKを貰った『特別指導』の概要を、フランが関係者に対し、簡単に説明した後……
シンディひとりだけ、部屋に残って貰ったのだ。
理由は、シンディの気持ちと立場を汲んだ事……
これからする話は、他者の前ではしない方が良いというフランの気配り。
「校長代理。先ほどの説明では、私がマルガリータさんと戦うという事ですか?」
と、シンディが尋ねると、フランは笑顔で頷く。
「はい、そうです。私が決めました、頑張って下さいねっ」
フランの笑顔と柔らかい言葉遣いに釣られ、シンディの口調も砕けて行く。
「そんな特別なエキシビションマッチに私が出るの? ……もしルウ先生が居ればねぇ……他にあてはなかったの?」
「……他に、あてですか?」
「そうよ! 例えば……ほら! 冒険者ギルド繋がりで、ミンミさんとか、どうかしら」
マルガリータの対戦相手は、『炎の飛燕』と称されるS級ランカーのミンミが良い。
シンディは遠回しに断る言い方をした。
どうやら参戦に、乗り気ではないらしい。
その理由を……フランは知っているようだ。
きっぱりと言い放つ。
「いいえ、シンディ先生が戦うから良いのです」
「でも……私なんかで……「いけません!」……」
「え?」
いかにも自信がなさそうなシンディの声を、ぴしりと!
フランは、厳しくさえぎったのであった。
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