表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1046/1391

第1,046話 「後を託して⑯」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第1~4巻が発売中です!


7月21日発売の、最新第4巻はルウとモーラルの表紙です。

第1巻~3巻の既刊共々、お見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。


皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※新刊、既刊、共に店頭にない場合は、恐縮ですが書店様にお問合せ下さいませ。

 熱闘の末……

 ジーモンとアモンが戦った『相撲』の試合、エキシビションマッチが終わった。

 勝負は、アモンの勝ち。

 闘技場に居る、誰が見ても明らかであった。


 見事にアモンに投げられ、仰向けで地に伏したジーモン。

 それまでの緊張が解けたせいなのか、四肢を思いっきり伸ばした。

 みなぎっていた力が、自然と抜けて行く……

 いつもの癖で、とっさに『受け身』をとったから、ダメージは殆ど無い。


 いくら負けず嫌いのジーモンであっても、衆人環視の中、ここまで派手に投げられては反論出来ない。

 潔く、負けを認めるしかない。


 苦笑したジーモンは、ゆっくり起き上がると……

 腕組みをして、立ち続けていたアモンと、再び向き合った。


「これまで! アーモン殿の勝利!」


 ふたりに対し、主審ジゼルの声が響く。

 傍らでは副審シモーヌが軽く頷いていた。

 『強者病女子』のふたりにとって今の試合は、素晴らしい『ご馳走』であった。

 だから、ふたりとも興奮で、顔が鮮やかに上気していた。


 ジーモンとアモンは、お互いに『試合終了』の礼をする。

 と、その時。


 顔をあげたアモンが、ぼそりと呟いた。


「ジーモン殿、ぜひ、またお手合わせを」


 何と!

 信じられない事に、勝った相手から再戦の誘いである。


「な? 手合わせ!? ぜ、ぜひだと!?」


 ジーモンは驚いた。

 

 自分から見て、アモンと自分の力の差は歴然としている。

 それも、数段くらい格上なのに……

 相手から再戦の申し入れをして来るとは?

 理由が分からない……


 ジーモンは改めて、アモンを見た。

 

 驚いた事に!

 アモンは笑っていた……それも邪心のない笑顔なのである。

 先ほどまでは、猛禽類のようなアーモンの鋭い眼差しが極端に優しくなり、いかつい顔が、まるで無邪気な子供のようにほころんでいるのだ。


 ジーモンは直感した。

 相手には全く『悪意』がないと。

 けして『弱い者』をからかおう、いたぶろうとする、邪な心で言っているのではないのだ。


 アモンは更に言う。


「うむ! 貴方はまだ、全然本気を出しておらぬ」


 本気を出していない?

 まさか?

 いや……もしかしたら、そうかもしれない。


 この場には、あるじのアデライドが居る。

 主の娘フランも居る。

 只今、この場、この時間はふたりとも業務の最中だ。

 公式の場と言って良い。


 今回、命じられたジーモンの任務とは……

 アモンとの戦い、エキシビションマッチはあっても、一番の趣旨は魔法女子学園生徒への『指導協力』である。


 で、あれば……

 形振なりふり構わず、『野生の獣』になるわけにはいかない。

 アモンは……ジーモンの気配りを見抜いているのだろう。


 笑顔のアモンへ、返す言葉が思い浮かばず、ジーモンは黙り込む。

 そんなジーモンへ言ったのか、それとも独り言なのか、アモンは…… 


「俺はもっと……戦いたい」


 もっと……戦いたい?

 それはジーモンだって同じだ。

 すぐにでも、アモンと再戦したい!


 自分より強い相手であれば、尚更燃えるのだから。

 ジーモンの『強者病』たる由縁である。


「…………」


 唇を噛み締めるジーモンへ、アモンはまたも言う。

 笑顔のままで。


「だが、後がつかえておる。残念だが、このまま貴方と戦うわけにはいかぬ……」


 確かに!

 この後は……

 マルガこと悪魔従士マルコシアスが戦う、別取り組みのエキシビションマッチが控えていた。

 きっちり時間は決まっているのだ。


「…………」


「さあ! ジーモン殿……いかが?」


「こ、こちらこそだ! アーモン殿! き、貴殿とはまた! ぜ、ぜひ戦いたいっ!」


 珍しく興奮するジーモン。

 こんな気持ちは、ルウと戦って以来である。


「よし、話は決まったな。但し……」


「但し?」


 アモンの言葉を聞き、ジーモンは首を傾げた。


 但しとは?

 何か、戦うに際し、特別な条件が付けられるのだろうか?

 このような場合、勝者が自分に都合の良い内容にするのは、珍しくない。


 しかし、アモンの口から出た話は違っていた。


「ふむ、ルウ様から、きつく釘を刺されている。ジーモン殿と命のやりとりは禁止だとな……」


「な?」


 命のやりとりは禁止!?

 ルウが指示を?


 驚くジーモンに、アモンは笑う。

 今度は苦笑いだ。


「ふふふ……読まれているのだ。あの方には……我々の全てがな……」


「我々の全てが……読まれている……か。うむ、確かに!」


 驚いたジーモンの顔にも、笑みが浮かんで来ていた。

 分かったのだ。

 今回の件は、フランの指示だが、ルウの意思もしっかり反映されていると。


 万が一、ジーモンが命を落とせば、アデライドやフランが悲しむ……

 アデライドの護衛役、そしてドゥメール家家令としての任務を、途中で放棄する事になる。


 だがアモンとこのように戦えば、ジーモンの強者病から生じる欲求は満たされる。

 それに、もしかしたら……アモンも同じ強者病?


 全てが読めた!


 こうなると、アモンもジーモンも、もう遠慮しない。

 思いっきり笑いだす。


「はは、はははははっ!」


「わはははははははっ!」


 いつもは……殆ど笑わない寡黙なふたり。

 滅多に聞けない、渋い大きな笑い声が、屋内闘技場に響いていた。

いつもお読み頂きありがとうございます!


東導 号の別作品もお願い致します。


『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


新パート『奇跡の再会、奇跡の邂逅編』を連載開始致しました。

申し訳ありませんが、今回は週2回~3回ペースで不定期更新の予定です。


そして、


『最強魔族の私を……あなたの愛で人間にしてくれますか?』


https://ncode.syosetu.com/n9802ex/


人間から魔族が生まれる……

哀しい運命を背負った幼い少女ツェツィリアは、実の両親から不気味な森へ捨てられた。

それから10年の月日が流れ……名もない王都の冒険者アルセーヌは、不器用だがひたすら懸命に、生きていた。美しく成長したツェツィリアと、天涯孤独のアルセーヌは、運命の出会いを遂げる。愛を確かめ合うふたり……しかし、謎めいた魔法使いルイは、ツェツィリアが、まもなく完全な夢魔となり、魔界へ堕ちると告げる。アルセーヌは決意する。ツェツィリアを救う為に、苦難の道を踏み出す事を。

……と、いうお話です。


両作品とも、本日9月10日更新しております。

ぜひお楽しみ下さい。

応援宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ