第1,046話 「後を託して⑯」
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熱闘の末……
ジーモンとアモンが戦った『相撲』の試合、エキシビションマッチが終わった。
勝負は、アモンの勝ち。
闘技場に居る、誰が見ても明らかであった。
見事にアモンに投げられ、仰向けで地に伏したジーモン。
それまでの緊張が解けたせいなのか、四肢を思いっきり伸ばした。
漲っていた力が、自然と抜けて行く……
いつもの癖で、とっさに『受け身』をとったから、ダメージは殆ど無い。
いくら負けず嫌いのジーモンであっても、衆人環視の中、ここまで派手に投げられては反論出来ない。
潔く、負けを認めるしかない。
苦笑したジーモンは、ゆっくり起き上がると……
腕組みをして、立ち続けていたアモンと、再び向き合った。
「これまで! アーモン殿の勝利!」
ふたりに対し、主審ジゼルの声が響く。
傍らでは副審シモーヌが軽く頷いていた。
『強者病女子』のふたりにとって今の試合は、素晴らしい『ご馳走』であった。
だから、ふたりとも興奮で、顔が鮮やかに上気していた。
ジーモンとアモンは、お互いに『試合終了』の礼をする。
と、その時。
顔をあげたアモンが、ぼそりと呟いた。
「ジーモン殿、ぜひ、またお手合わせを」
何と!
信じられない事に、勝った相手から再戦の誘いである。
「な? 手合わせ!? ぜ、ぜひだと!?」
ジーモンは驚いた。
自分から見て、アモンと自分の力の差は歴然としている。
それも、数段くらい格上なのに……
相手から再戦の申し入れをして来るとは?
理由が分からない……
ジーモンは改めて、アモンを見た。
驚いた事に!
アモンは笑っていた……それも邪心のない笑顔なのである。
先ほどまでは、猛禽類のようなアーモンの鋭い眼差しが極端に優しくなり、いかつい顔が、まるで無邪気な子供のようにほころんでいるのだ。
ジーモンは直感した。
相手には全く『悪意』がないと。
けして『弱い者』をからかおう、いたぶろうとする、邪な心で言っているのではないのだ。
アモンは更に言う。
「うむ! 貴方はまだ、全然本気を出しておらぬ」
本気を出していない?
まさか?
いや……もしかしたら、そうかもしれない。
この場には、主のアデライドが居る。
主の娘フランも居る。
只今、この場、この時間はふたりとも業務の最中だ。
公式の場と言って良い。
今回、命じられたジーモンの任務とは……
アモンとの戦い、エキシビションマッチはあっても、一番の趣旨は魔法女子学園生徒への『指導協力』である。
で、あれば……
形振り構わず、『野生の獣』になるわけにはいかない。
アモンは……ジーモンの気配りを見抜いているのだろう。
笑顔のアモンへ、返す言葉が思い浮かばず、ジーモンは黙り込む。
そんなジーモンへ言ったのか、それとも独り言なのか、アモンは……
「俺はもっと……戦いたい」
もっと……戦いたい?
それはジーモンだって同じだ。
すぐにでも、アモンと再戦したい!
自分より強い相手であれば、尚更燃えるのだから。
ジーモンの『強者病』たる由縁である。
「…………」
唇を噛み締めるジーモンへ、アモンはまたも言う。
笑顔のままで。
「だが、後がつかえておる。残念だが、このまま貴方と戦うわけにはいかぬ……」
確かに!
この後は……
マルガこと悪魔従士マルコシアスが戦う、別取り組みのエキシビションマッチが控えていた。
きっちり時間は決まっているのだ。
「…………」
「さあ! ジーモン殿……いかが?」
「こ、こちらこそだ! アーモン殿! き、貴殿とはまた! ぜ、ぜひ戦いたいっ!」
珍しく興奮するジーモン。
こんな気持ちは、ルウと戦って以来である。
「よし、話は決まったな。但し……」
「但し?」
アモンの言葉を聞き、ジーモンは首を傾げた。
但しとは?
何か、戦うに際し、特別な条件が付けられるのだろうか?
このような場合、勝者が自分に都合の良い内容にするのは、珍しくない。
しかし、アモンの口から出た話は違っていた。
「ふむ、ルウ様から、きつく釘を刺されている。ジーモン殿と命のやりとりは禁止だとな……」
「な?」
命のやりとりは禁止!?
ルウが指示を?
驚くジーモンに、アモンは笑う。
今度は苦笑いだ。
「ふふふ……読まれているのだ。あの方には……我々の全てがな……」
「我々の全てが……読まれている……か。うむ、確かに!」
驚いたジーモンの顔にも、笑みが浮かんで来ていた。
分かったのだ。
今回の件は、フランの指示だが、ルウの意思もしっかり反映されていると。
万が一、ジーモンが命を落とせば、アデライドやフランが悲しむ……
アデライドの護衛役、そしてドゥメール家家令としての任務を、途中で放棄する事になる。
だがアモンとこのように戦えば、ジーモンの強者病から生じる欲求は満たされる。
それに、もしかしたら……アモンも同じ強者病?
全てが読めた!
こうなると、アモンもジーモンも、もう遠慮しない。
思いっきり笑いだす。
「はは、はははははっ!」
「わはははははははっ!」
いつもは……殆ど笑わない寡黙なふたり。
滅多に聞けない、渋い大きな笑い声が、屋内闘技場に響いていた。
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東導 号の別作品もお願い致します。
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