第1,045話 「後を託して⑮」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻が発売中です!
【7月21日】に発売されたばかりの、ほやほやです。
ルウとモーラルの、涼し気な表紙をお見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。
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ジーモンとアモンが凄まじい雄叫びをあげ、睨み合ったのは、ほんのわずかな時間である。
両雄は思いっきり大地を蹴ると、怖ろしい速度でダッシュした。
究極まで鍛え抜かれた、逞しい肉体がぶつかり合う。
屋内闘技場に、鈍く重い音が響く。
ぶつかった衝撃で、身体を揺らして僅かに離れたふたりは、
「おおおおおりゃ!」
「くおおおおおっ!」
改めて睨み合い、より一層気合の入った声を出し、今度はがっちりと組み合った。
武器を持たずに戦うふたり。
実はこのエキシビションマッチも、ルウにアドバイスを受けたフランのアイディアが反映されていた。
そう……
ふたりは、相手をすぐ死に至らしめる技を使って戦ってはいない。
今回、試合を行う為にルウが選んだ『競技』は……
先日リーリャの祖国ロドニアへ旅行した際、フランやジゼルの記憶にまだ新しい……
強靭な肉体から生み出される膂力、体捌き、技の優劣で勝ちを争う格闘技、ロドニア式の『相撲』である。
更に……
突き技の禁止、急所への攻撃禁止等の追加ルールも加え、ジーモンとアモンは戦っていた。
剣や魔法を使う、いつもの戦いとは全く違っていたが……
『ロドニア式相撲』に対する物珍しさ、そして模擬試合とは思えぬ気合の入った戦いに……
ミシェルとオルガを含めた部員達は、どんどん引き込まれて行く。
アデライドも、シンディもカサンドラも、息を呑んで見守っていた。
審判役のジゼルとシモーヌも、例の『強者病』がお約束で発動。
つい夢中となってしまう。
当然、食入るように戦いを見つめていた。
静まり返った、魔法女子学園屋内闘技場。
気合の入ったふたりの男の声、激しい息遣い、肉体がぶつかる音が響いている。
そして……
こちらもわくわくしながら、試合を見つめるフランの予想通り……
戦うジーモンの表情は、大きな悦びに満ち溢れていた。
当初、試合形式が『相撲』と聞き、難色を示したジーモンであったが……
戦う相手がアモンだと聞き、すぐに態度を一変させた。
フランが、話をした際に分かったが……
普段はドゥメール邸で過ごす事が多いジーモンも、一流冒険者アーモンの『評判』を良く耳にしていたからだ。
フランの想像した通り……
実は、ジーモンはジーモンで、深い悩みを抱えていた。
持病である、『強者病』がうずくのだ。
主アデライドに、命を懸けるくらい忠実に仕えながらも……
戦いに明け暮れていた本能が、強烈な刺激を欲するのである。
自分より、遥かに強い相手と戦いたい!
否、それどころか「もう命を落とす!」という、絶体絶命の窮地に落ちたいという『歪んだ願望』がやまない。
だが、黒鋼と呼ばれた力を持つ自分を、そこまで追い込む者は滅多に居ない。
そんな時にルウが現れた……
最初の戦いで完敗した。
万全を期して臨んだ二度目の戦いも、ルウには全く歯が立たなかった。
無様な負けを喰らったが、力を出し尽くしたから、ショックも後悔もなかった。
だから、もう強者病も落ち着くかとホッとした。
だが、ジーモンの予想は外れた。
意外な事に、ルウと戦ってからは、ますます強者病が強くなったのである。
「許されるのならば、再びルウと戦いたい!」激しくそう思った。
しかし……
ルウがドゥメール家を出ると、彼と『練習』する機会もめっきり減ってしまった。
引っ越し先が隣とはいえ、用もないのにわざわざ訪ねるなど出来ない。
家令としての立場もあるし、日々仕事も忙しい。
少年の頃のように、やたら街中で喧嘩を売るわけにもいかない……
何気ない風を装いながら、ジーモンは日々悶々としていたのである。
そこへ!
フランからの『オファー』が来た。
最初は「女子に指導する」と聞いて、きっぱり断ろうと思ったが……
話をよくよく聞いたら、渡りに船……これを受けないわけがない。
そしていよいよ、願いが果たされる日がやって来たのだ。
内緒だが……
旅行が楽しみな子供のように、眠れない日もあった。
対戦相手のアモンと会ったのは、今日が初めてである。
でも、ジーモンはすぐに分かった。
目の前のアモンが、凄まじい力を持つ男だと。
第一印象も良かった。
自分同様、筋肉の鎧をまとっていた。
究極までと言って良い、アモンの鍛え抜かれた肉体は、いかに己に厳しかったかを物語っている。
寡黙で、感情をやたら表に出さないのも、自分と同じ。
すぐにアモンを気に入ったのである。
そして組んでみて、改めて分かった。
アモンは自分より、はるかに上の『器』であると……
あのルウの、『従士』というのも大いに納得した。
さてさて……
攻防は一進一退。
ジーモンが攻めて、アモンが守る。
アモンが仕掛けて、ジーモンがいなす。
しかし、
「うおおおおおおおりゃっ!」
僅かな隙を見つけたのか、突如アモンがひときわ気合の入った声を出した。
すると!
抱えて投げられたジーモンの身体は、呆気なく宙に舞い、闘技場の芝生に叩きつけられていたのである。
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東導 号の別作品もお願い致します。
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人外であるが故に、人間の両親から森に捨てられた美しい夢魔の少女ツェツィリア。
雪の日に孤児院に捨てられ……地味で不器用ながら、冒険者として懸命に生きて来た魔法使いの少年アルセーヌ。
縁もゆかりもなかった筈の、傷ついたふたつの魂は邂逅し、触れ合い、慈しみ……結ばれる。
「貴方が愛してくれれば……夢魔の私は……変われるかもしれない……」
ツェツィリアの謎めいた言葉を胸に秘め、アルセーヌは前を向いて生きる事を決めた。
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こちらも本日9月7日更新しております。
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