第1,044話 「後を託して⑭」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻が発売中です!
【7月21日】に発売されたばかりの、ほやほやです。
ルウとモーラルの、涼し気な表紙をお見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。
第1巻~3巻既刊も好評発売中!
皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。
※新刊、既刊、共に店頭にない場合は、恐縮ですが書店様にお問合せ下さいませ。
『サプライズゲスト』の後に、顧問のシンディと、コーチのカサンドラも続き、今回のメンツは全員揃った。
先に、屋内闘技場入りしていたアデライドとフランは、用意された椅子に座っている。
準備完了と見たジゼルは、部員全員を整列させ、話し始めた。
「今回、理事長と校長代理には多大なるご尽力をして頂き、特別な練習を企画した」
ミシェル達以上に、『事情』を全く知らない部員達は、ただただ黙って、真剣な表情で聞いている。
「夏季休暇故に、部員全員が集合出来なかったのは残念だが……」
「……………………」
「今回、参加出来る者はとても幸運である。何故ならば素晴らしい企画だからだ。趣旨は勇気を得る為の実戦的な練習、元々の発案者はミシェルとオルガだ」
「え?」
「わ、私達?」
いきなり自分達へ話をふられ、驚くミシェル達。
そんなふたりへ、さりげなく片目をつぶり、ジゼルは話を続ける。
「私達の練習相手は基本身内、今年に入ってからルウ先生とカサンドラ先生が加わったが……そろそろ新味を出したいと思った」
ここで、シモーヌがジゼルを補足する。
「私が補足しよう。ジゼル部長の仰る新味とはな……未知の相手と戦う事、つまりルウ先生以外の男性だ。そこで歴戦の勇士であるジーモン殿、アーモン殿、おふたりに来て頂いた」
だがこの場には、マルガこと悪魔従士マルコシアスも居る。
部員達の目は、当然『女性である』マルガに注がれた。
「だが、いきなり心の準備もなく、見ず知らずの男性と戦うのに臆する者も居るだろう。そこで女性のマルガリータ殿にも加わって頂いたのだ」
話し終わって、シモーヌは目でジゼルに合図をした。
バトンタッチというアイコンタクトだ。
「しかし……今回いらして頂いたお三方は、実戦経験豊富な一流の戦士達だ。私達がまともに戦っても、まず勝負にならない」
先程から部員達は、黙って話を聞いている。
全員納得しているらしく、特に異議を唱える者は居ない。
それどころか、イネス他数人の一年生は目を輝かせていた。
これから起こる事、体験する事に、とても期待しているようだ。
「そこで……戦い方を少し工夫した。簡単にいえばハンデ戦だ。詳しい事は後ほど説明しよう」
そうなのだ。
所詮、部員達は学生である。
それも狩場の森以外、実戦経験に乏しい。
超が付く一流の戦士、ジーモン達とまともに戦っても敵うはずがない。
だから、フランは一計を案じた。
その作戦の説明を、ジゼル達は受けていた。
約束通り、今日の進行と実務はジゼルとシモーヌが担っている。
「但し、まずは模擬試合を見学する。一流同士の戦いを見学すれば、私達には大いに得る物があるはずだ」
ジゼルの説明通り……
部員達は、自身が戦う前にエキシビションマッチを見る事となる。
戦いのプロ同士の模擬戦を見る事で、レベルの高さを認識して欲しいという趣旨である。
続いて……
今回のスペシャルゲスト……つまり『特別臨時コーチ』の3人が紹介された。
ジゼルが各自の名前を呼び、呼ばれた者が名乗り、所属先を告げる形だ。
「ジーモンだ。ドゥメール伯爵家で家令をしている」
「アーモンだ。冒険者ギルド所属」
「マルガリータだ、同じく冒険者ギルド所属」
全員寡黙で、あまり喜怒哀楽を表すタイプではない。
それぞれ無表情で、ぶっきらぼうに話す3人を……
ジゼルとシモーヌ以外の部員達は、呆然と見つめていた。
更に簡単な説明がされ、早速、模擬試合……
エキシビションマッチが始まった。
まずは黒鋼ジーモン対アーモンこと悪魔従士アモンの戦いである。
審判役は主審がジゼル、副審がシモーヌ。
フランとの打ち合わせの際、「後学の為にぜひ!」と志願した結果である。
……確かに一番間近で、『戦い』を見る事が出来る。
闘技場にジゼルの凛とした声が響く。
「ジーモン殿! アーモン殿! おふたりとも……あくまで今回は模擬試合、ルールにのっとった戦いを厳守だ」
「了解だ」
「……分かっている」
審判役ジゼルの注意に対し、ジーモンとアモンは相変わらず最低限の返事しかしない。
ジゼルはつい口元が緩む。
ルウは別格として……
このように寡黙で強い男は……好きだから。
「では……始めっ!」
ジゼルの合図で、いよいよ試合は始まった。
ジーモンとアモン。
革鎧をまとった両者は少し離れてにらみ合う。
お互いに鋭い眼光を飛ばして。
「目の前の敵を倒す!」という鋭い殺気が、ふたりからは放出されて行く。
そして、ふたりは吠える。
互いに、『強敵』の波動を感じ、戦いの開始ともいえる激しい雄叫びを。
「おおおおおおおおおおおっ!!!」
「うらあああああああああっ!!!」
「わ!」
「ひ!」
「きゃう!」
魔物の咆哮ともまた違う、人間の雄叫び。
戦う際の、騎士の『鬨の声』とも全く違う……
部員達数人が、思わず身をすくめ、悲鳴を上げた。
そして……
ミシェルとオルガも、改めて思い出している。
あの日を、ルウとジーモンが体術を駆使して戦った事を……
小さな拳を「ぎゅっ」と握り締め、目を見開いたミシェルとオルガは……
まるで身体全体が硬く固まったような感覚になっていた。
だが、目を背けず真っすぐに……
戦士ふたりを、食い入るように凝視していたのであった。
いつもお読み頂きありがとうございます!
東導 号の別作品もお願い致します。
『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』
https://ncode.syosetu.com/n4411ea/
新パート『奇跡の再会、奇跡の邂逅編』を連載開始致しました。
申し訳ありませんが、今回は週2回~3回ペースで不定期更新の予定です。
本日9月3日に、第1話を更新しております。
ぜひお楽しみ下さい。
応援宜しくお願い致します!




