第1,043話 「後を託して⑬」
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フランが自身の『成長』を……
思う存分母アデライドへ披露してから、数日後の事……
同じ魔法女子学園屋内闘技場では、いよいよミシェルとオルガの『願いが叶う日』がやって来た。
悩みが解消する。
トラウマが治る。
精神的に……
瀬戸際まで、追いつめられた感のあるミシェルとオルガが、狂喜乱舞したのは言うまでもない。
だが……
現在、屋内闘技場に居るのは、ミシェルとオルガだけではなかった。
他の魔法武道部部員達も大勢居た。
ジゼルとシモーヌの指示により……
ミシェルとオルガが、夏季休暇最大の『特別練習』が行われると呼び掛け、王都に居た部員を出来る限り参集させたのである。
しかし、この特別練習、一体何が行われるのか……
ジゼルもシモーヌも、ミシェル達へは勿論、他の部員達にも……はっきりとは伝えてはいなかった。
フランと話し合った結果、趣旨と概要については一切をサプライズにしようと決めたからである。
ジゼルとシモーヌが聞く限り、フランの企画は素晴らしかった。
ルウの提案で、魔法武道部の雰囲気が大きく変わった時に匹敵するかも……
そう思ったくらいである。
結果……
単に「頼まれた件は、万事上手く行った」としか、ミシェル達へ伝えていない。
しかし……
事前の詳しい説明がないので、ミシェルとオルガは少々不安そうだ。
「部長、副部長……上手く行ったとお聞きしましたが……今日は一体、何がどうなるのでしょうか?」
「とても無理な事をお願いしてしまったとは、重々承知していますが……」
ミシェル達から、切ない眼差しで見つめられ、ジゼルとシモーヌは顔を見合わせた。
頷き合うと、ジゼルが口を開く。
「ふむ、実はな……今回は私とシモーヌが詳しい事情を説明し、全てフランシスカ校長代理に一任した」
「え?」
「な、何故?」
フランに一任?
どうして? とばかりにミシェルとオルガは身を乗り出した。
ジゼルとシモーヌへ迫って来る。
しかしジゼルは動じず、笑顔で返した。
「ジーモン殿の主である、アデライド理事長の説得、ジーモン殿本人の説得は、全て私に任せて欲しいと仰られてな」
「…………」
「…………」
ジト目で見るミシェル達……
ジゼルは苦笑し、
「心配しなくても大丈夫だ! 校長代理からは、今回の企画内容を全てお聞きしている。期待してくれ」
「期待……」
「上手く行きますか?」
ミシェルとオルガは、まだジト目だ。
いくら校長代理とはいえ……
魔法武道部とは直接かかわっていない、『部外者』であるフランが立案した企画……
ミシェル達には、一抹の不安があるようだった。
果たして『悩み』が解決するのかと?
仕方なく、ジゼルは『奥の手』を使う。
今回のスペシャルゲストふたりは、ルウの従士達だ。
話をするにあたり、フランがルウへ、了解を得ないわけがない。
ジゼルも気になったので……
一応フランへ聞いたら……
「大丈夫」と返された。
だから、はっきりと言い切れる。
「ミシェル、オルガ。校長代理の企画にはな……ルウ先生の意見も反映されているぞ」
「え? で、ですが……ルウ先生は旅行中では?」
「そうですよ」
今日も……ルウは不在。
さすがにアドリーヌと共にとは、伝えられていないが……
王都には居らず、旅行中という事になっているから。
フランがルウへ連絡した手立て……
魂と魂の会話、念話で話したに違いない。
だが念話の存在は、家族以外一応秘密となっており、ミシェル達へ説明は出来ない。
会話を、適当に聞き流さない……
つまり、ミシェル達の注意力が上がったと、喜びながら……
ジゼルは曖昧に言葉を濁す。
「う、うむ……私も詳しくは知らぬが、多分、魔法鳩か何かでやりとりしたのだろう」
「は、はあ……」
「そうなんですか……」
微妙なジゼルの物言いに、ミシェル達はいまいち納得がいかないようだ。
そこで、ジゼルは強気に押し通す事を決めた。
更なる『奥の手』も使って……
「だから安心しろ。それどころか、特別なサプライズもあると聞いているぞ」
「特別なサプライズ……」
「サプライズって……」
半信半疑のミシェル達が、首を傾げていると……
ジゼルが声をあげる。
「おお、いらっしゃったぞ」
ハッとしたミシェルとオルガが、ジゼルの指さす方向を見れば……
アデライドとフランが屋内闘技場の入り口に立っていた。
傍らには……お目当てのジーモンも居る。
あの日から少々時間は経ってしまったが……記憶はまだ生々しい。
ふたりにとっては、怖ろしい殺気をまとった人間離れした巨大な戦士……それがジーモンなのである。
遠目から見てもジーモンは、アデライドとフランが子供に見えてしまう大柄な体躯である。
距離があるので、表情までは分からない。
だが、ミシェルとオルガはジーモンを見ると、身体が強張り始めた。
やはり恐怖は、ふたりの心に深く深く刻まれているのだ。
「おお、サプライズが……見えるぞ。ほうら、理事長達の後ろを見ろ」
「サプライズが見える?」
「後ろって? あ!」
ジゼルに促され、ミシェルとオルガは慌てて目を凝らした。
見れば、ジゼルの言う通りである。
フランの傍らに、ジーモンとは違う、ふたりの人影があった。
……ひとりはジーモンと同じくらい逞しい体躯の男。
そしてもうひとりも、男よりは若干小柄だが……
これまた、逞しい体躯をした女である。
ジーモン以外、他にも人が来るとは、一体どういう事だろう?
今日はジーモンとだけ、戦うのではないのか?
ミシェル達の頭には?マークが飛び交っている。
「え? 部長、あ、あのふたりは?」
「凄く強そう! だ、誰ですか?」
「ジーモン殿も含め、改めて自己紹介して貰おう、なあ、シモーヌ」
「ああ、そうだな、ジゼル!」
「…………」
「…………」
顔を見合わせ、微笑みながら頷くジゼルとシモーヌを……
ミシェルとオルガは、呆然と見つめていたのである。
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