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第1,042話 「後を託して⑫」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻が発売中です!


【7月21日】に発売されたばかりの、ほやほやです。

ルウとモーラルの、涼し気な表紙をお見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。


第1巻~3巻既刊も好評発売中!

皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※新刊、既刊、共に店頭にない場合は、恐縮ですが書店様にお問合せ下さいませ。

 翌日、魔法女子学園……


 フランは、アデライドとふたりきりで屋内闘技場に立っていた。

 そう……

 闘技場には、ふたり以外は誰も居ない。

 一切の人払いをしているのだ。

 

 ミシェル達の悩みを解消するという案件から派生した、フランの『校長昇進』の査定をする為である。


 具体的には、フランがアデライドの前で、自由課題という形による魔法のデモンストレーションを行う。

 先日行われた、魔法女子学園オープンキャンパスのデモンストレーションとほぼ同じといえよう。


 ふたりきりなのも、当然の理由があった。


 アデライドがフランの上席で、『査定』の担当者なのは勿論ではあるが……

 そもそも魔法使いは、自分の手の内をやたらに他者へはさらさない。

 武芸の達人が、奥の手である必殺技を見せないのと一緒だ。


 さてさて、フランが行うデモンストレーションだが……

 アデライドへ、新たに習得した召喚魔法を見せる事となっている。


「じゃあ、フラン……準備が出来たら、早速お願い」


「了解!」


 フランは元気良く返事をすると、まず呼吸法を行う。

 自身の体内魔力を高め、精神を集中、安定させる為だ。


「あ……」


 アデライドは思わず声が出た。


 すぐに気付いた。

 フランの使う呼吸法が、自分とは全く違うと。

 

 そう……何故ならば、フランの使う魔法は全て、アデライドが一から教え込んだものだから。

 

 しかし今フランは、全く違う呼吸法で魔法を発動しようとしている。

 これは、見覚えが、聞き覚えがある……ルウの使うアールヴの呼吸法だ。


 魔眼を持つアデライドには分かる。

 魔力波オーラでも感じる。

 フランの体内魔力が、あっという間に高まって行く事を。

 そしてフランの心は、さざ波ひとつたてない水面のように、ぴたりと安定しているのだ。


 と、同時に。

 形の良い、フランの口が開かれ、朗々と言霊が詠唱される。


現世うつしよ常世とこよを繋ぐ異界の門よ、我の願いにてその鍵を開錠し、見栄え良く堂々と開き給え! 我が呼ぶ者が冥界の途を通り、我が下へ馳せ参じられるように! さあ開け、異界への門よ!」


 アデライドは、事前に聞いてはいる。

 一体、フランが何者を召喚するのかを。


 しかし、ただ聞くのと、実際に見るのとでは大違い。

 期待と不安で……

 アデライドの喉は、「ごくり」と鳴った。


召喚サモン!」


 鋭い声で発せられた、決めの言霊と共に、フランから大量の魔力波が放出された。


 ぴいいいいいん!


 同時に!

 屋内闘技場の大気が、異音を立てて打ち震える。


 ハッとしたアデライドが見やれば……

 フランの立つ、少し前の地面が眩く輝いていた。


「がああああっ!」


 どこからともなく、怖ろしい咆哮が聞えて来る。

 遂にフランが召喚した者が現れる。


 びしししっ!


 再度大気が鳴り響くと、輝いていた地より、巨大な影が現れた。


「ごああああああああっ!」


 現れたのは巨大な双頭の怪物。

 漆黒の巨体を持ち、たてがみと尾は大きな蛇。

 ルウの従士ケルベロスの弟。


 アデライドは初めて見るが……

 言わずと知れた冥界の魔獣……オルトロスだ。


 オルトロスは、己の存在を誇示するかのように凄まじい声で咆哮した。


 ご、がはああああああああああ!


 大気がびりびりと震える。


 殺気はなくとも、アデライドは思わず身構える。

 異形の者に対する人の本能的な防御本能が働くから。


 しかしフランは、全く臆した様子がない。


「オルトロス!」


 気合の入った声で、召喚したオルトロスを自在に使役したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「フラン、貴女凄いわ……本当に」


 愛娘を称えるアデライドの言葉に嘘偽りはない。

 全くと言って良いほどない……


 魔獣オルトロスを異界へ帰した後……

 フランは、火の精霊(サラマンダー)の大群まで召喚したからである。

 

「いいえ、私はまだまだ。お母様にも、旦那様にも及ばない……もっともっと切磋琢磨しなければ……」


 謙遜しながらも……

 フランの目は、自信に満ち溢れていた。


 そしてフランの言葉が本心なのも分かる。

 目には心が映ると言う……

 彼女の目には、学びたい、更に魔法使いとして向上したいという気持ちが満ち溢れている。


「とりあえずフラン、……貴女の『代理』が取れる確率はぐっと大きくなったわ」


「ありがとう……ございます、理事長」


「うふふ、ここまで実力を見せられれば当然です、フランシスカ・ドゥメール校長代理」


「でもお母様、いえ理事長……ケリー、いえケルトゥリ・エイルトヴァーラ教頭にも、校長昇格に必要な、査定の機会を与えるのよね?」


「当然! 貴女だけでは、不公平になりますからね。本人の希望を聞いた上だけど、後でしっかりテストしますよ」


「うふふ、お願いします」


 まるで、敵へ塩を送るような、フランの誠実な言葉を聞き、気持ちを感じ……

 アデライドは少し吃驚し、そして思う。

 本当に……フランは変わったと。


 たおやかな大人の女性になっている。

 否、まだまだ成長し続けている……


「でも、うふふ」


 とアデライドは悪戯っぽく笑う。


「貴女、私に及ばないなんて……上司へのお世辞でしょ? ルウならばともかく」


「分かる?」 


 対してフランは、同意するような素振りを見せながら、


「何てね、違うわ」


 と、きっぱり否定した。


「何故?」


 と、アデライドが聞けば、フランはきっぱりと言い放つ。


「お母様には……まだまだ私の知らない引き出しがある。だから学ぶ事、そして超えなくてはならない部分がたくさんあると思うの」


「成る程……」


 確かにアデライドも、愛娘にも公にしていない部分が多々ある。


 相手を見抜く魔眼がそうだし、数多の魔法も、伝授どころか、話してもいない……

 それらはやはり、魔法使い独特の、やたらと奥義をさらさない本能なのだろう。

 でもフランにも……自分に言わない、秘密の部分がまだまだありそうだ……


 つらつら考えるアデライドへ、フランが更に言う。


「お母様……」


「何?」


「今回の魔法武道部の件で、私もはっきり認識したわ。私はお母様の跡を継ぐって……これからも頑張るから安心して後を託してね」


「そう! 頼もしいわ。でも……私もまだまだ学ぶわ、師匠として、母として……貴女には簡単に乗り越えられたくないから」


「うふふ、それでこそ……アデライド・ドゥメール伯爵、ヴァレンタイン王国の舞姫よ」


 懐かしい渾名を、愛娘から言われたアデライドは……

 晴れ晴れとした表情で、大きく頷いたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!


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本日8月27日に更新しております。

ぜひお楽しみ下さい。

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