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第1,041話 「後を託して⑪」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻が発売中です!


【7月21日】に発売されたばかりの、ほやほやです。

ルウとモーラルの、涼し気な表紙をお見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。


第1巻~3巻既刊も好評発売中!

皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※新刊、既刊、共に店頭にない場合は、恐縮ですが書店様にお問合せ下さいませ。

 アデライドが、フランの『提案』を快諾した直後……


 早速、ドゥメール邸内アデライドの書斎では、『当事者』であるジーモンが呼ばれ、彼に対しての『説得』が行われた。

 

 今回の『企画立案者』フランが、ミシェル達の事情を説明した上……

 魔法武道部臨時コーチ就任の要請をする。


「……というわけで、お願い、ジーモン。ウチの生徒達の将来、いえ人生がかかっているの。特別に『指導』をしてくれないかしら?」


 フランが丁寧な言い方で懇願するが、ジーモンは目を閉じて答えない。

 表情も硬い……

 

 主筋のアデライドとフラン、ふたりから頼まれたから、はっきりと拒絶の言葉こそ出てはいないが……

 『仕事』として、絶対に受けたくないのは、明らかである。


 ちなみに、まだ『引き換え』の条件は提示していない。

 

 単に要請しただけでは、ジーモンが簡単には承服しない。

 当然、アデライドとフランの想定内である。


 全てにおいて誇り高いジーモンが、彼から見たら年端も行かない女子と戦う事は、恥もしくは論外だと考えている事も明らかであった。


 実はフランが行うジーモンへの説得も……

 校長代理の、代理を取る『査定』の参考にするとアデライドからは言われていた。


 そんな査定の話こそ、想定してはいなかったが……

 アデライドに言われずとも、フランは最初から自身でジーモンを説得するつもりでもあった。


 微笑むアデライドが見守る中、フランは第二の矢を放つ。


「実はジーモン、私達、お前の訓練にも協力したいの」


「私めの? 訓練……ですか? 今お聞きした内容では、全く意味がないと思いますが……」


 不可解そうに首を傾げるジーモン。

 フランも笑顔で頷いた。


「ええ、確かにウチの生徒の指導だけじゃ、お前の言う通りね」


 含みのあるフランの言葉を聞き、ジーモンはピンと来たらしい。


「……フランシスカ様、一体、何を考えていらっしゃいますか?」


「ええ、ご心配なく。お前と互角か、それ以上に戦える者達を用意したわ」


「私と互角に? それ以上に戦える相手ですと?」


 ジーモンは怪訝そうに尋ねた。

 だが、フランの表情は変わらない。

 徐々に笑顔が悪戯っぽくなって行く……


「ええ、旦那様が一目置く、彼の従士達が訓練の手合わせをすると言ったら?」


「むう……フランシスカ様……恐縮ですが、その従士の方々の名前をお聞きかせ願いたい」


 ジーモンの質問は至極当然だ。

 フランが、万事段取りを組んでいると感じたからである。


 案の定、フランは打てば響くように、答えを戻す。


「ええ、良いわ。冒険者ギルド所属で、先日ランクAに上がったアーモン、そしてマルガリータよ」


 フランから、『対戦相手』の名を聞き、ジーモンは小さく何度か頷いた。

 どうやら、アーモンとマルガの名を知っているらしい。


「ふむ……その者達なら、私も噂は聞いています。とてつもない数の魔物討伐の依頼を受け、とんでもないペースで次々とクリア。どんなに強力な相手でもあっさり屠っているとか……」


 フランの笑みは、ますます悪戯っぽくなる。


「うん、そうね。それにジーモン、他の凄い噂だって聞いているでしょ?」


「はい……アーモンは拳一発でオーガをバラバラに粉砕したとか、もうひとりのマルガリータは、女ながらに、単身オークの巣へ乗り込み、100匹を瞬殺したとか……最近は……不死者アンデッドの巣食う廃城を、綺麗さっぱり掃除したとも聞いています」


 ジゼルと同様、ジーモンも生来の強者病。

 強者を語る時には、つい饒舌になる。

 自身でも良く分かっている。

 いつもの癖である。


 フランは、ジーモンの熱の入った話を聞き、「くすり」と笑う。


「所詮、噂は噂だから……それらは大袈裟かもしれませんけど……」


「…………」


「旦那様が仰っていました……彼等は楽々、ランクSの力を持つ猛者ですって」


「ランクS! ふむむむ……」


 ランクS!

 それも……あのルウが認めた。


「どう? やる気になった?」


 フランに問われ、ジーモンは考え込んだ。

 昔の記憶も手繰っていた。


 ……歴戦の戦士、『黒鋼』と呼ばれた自分だって、今迄に負けた事もある。

 昔エドモンと試合をした際は、僅差で敗れたし、ダレンと腕相撲をしたら互角だった。


 しかしルウには2戦2敗。

 それも圧倒的な完敗。

 ルウには完全に負けたとは、心の底から、実力差を認めていたのだ。


 そのルウが、従士であるふたりに太鼓判を押している。

 ふたりの強さは……『本物』なのだろう。


 ジーモンの戦闘欲が否が応でも高まって来る……

 そんなジーモンを見て、フランは軽くブレーキをかけた。


「念の為、言っておきますけど、殺し合いは駄目よ。あくまでエキシビションマッチなんだから」


「…………」


「ジーモンは最近訓練不足でしょ? 戦いの勘が鈍ったらいけないわ」


「む、む……」


「もしもお前の腕がなまったら、お母様を護る事に支障が出ると、娘の私は危惧してしまうの」


 フランの言葉がとどめとなった。

 否、正当な理由付けとと言えるかもしれない。

 自分の実力がさび付いては……アデライドの護衛を務められないから。


「わ……わ、分かりました。生徒様の指導の件、お、お受け致します」


 ジーモンは……遂に魔法武道部特別コーチを受けると約束した。

 しかし、フランは抜け目がない。


「うふふ、じゃあOKね。段取りはこちらで決めるけど、文句はなしよ。私の言う通りにしてね」


「…………」


 最後に、服従の言質まで取られた。

 完全に負けた……

 降参だ……


 頭をかく、ジーモンの瞳に映るフランの笑顔……

 ジーモンはフランを見て、ふと思う。


 お嬢様の、この笑顔……

 昔の奥様に……

 とても良く似ていらっしゃる……


 声に出さず呟いたジーモンは、いつもの無愛想な彼には珍しく、つい微笑んでしまったのである。

いつもお読み頂きありがとうございます!


東導 号の別作品もお願い致します。


『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


『子供達と旅に出よう編』


そして、


『最強魔族の私を……あなたの愛で人間にしてくれますか?』


https://ncode.syosetu.com/n9802ex/


人外であるが故に、人間の両親から森に捨てられた幼い夢魔の美少女ツェツィリア。

雪の日に孤児院に捨てられ…地味で不器用ながら、…懸命に冒険者として生きて来た魔法使いの少年アルセーヌ。

縁もゆかりもなかった筈の、傷ついたふたつの魂は邂逅し、触れ合い、慈しみ……結ばれる。

「貴方が愛してくれれば……私は……変われるかもしれない……」

ツェツィリアの謎めいた言葉を胸に秘め、アルセーヌは前を向いて生きる事を決めた。


というお話です。

両作品とも、本日8月24日に更新しております。

ぜひお楽しみ下さい。

応援宜しくお願い致します!

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