第1,041話 「後を託して⑪」
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アデライドが、フランの『提案』を快諾した直後……
早速、ドゥメール邸内アデライドの書斎では、『当事者』であるジーモンが呼ばれ、彼に対しての『説得』が行われた。
今回の『企画立案者』フランが、ミシェル達の事情を説明した上……
魔法武道部臨時コーチ就任の要請をする。
「……というわけで、お願い、ジーモン。ウチの生徒達の将来、いえ人生がかかっているの。特別に『指導』をしてくれないかしら?」
フランが丁寧な言い方で懇願するが、ジーモンは目を閉じて答えない。
表情も硬い……
主筋のアデライドとフラン、ふたりから頼まれたから、はっきりと拒絶の言葉こそ出てはいないが……
『仕事』として、絶対に受けたくないのは、明らかである。
ちなみに、まだ『引き換え』の条件は提示していない。
単に要請しただけでは、ジーモンが簡単には承服しない。
当然、アデライドとフランの想定内である。
全てにおいて誇り高いジーモンが、彼から見たら年端も行かない女子と戦う事は、恥もしくは論外だと考えている事も明らかであった。
実はフランが行うジーモンへの説得も……
校長代理の、代理を取る『査定』の参考にするとアデライドからは言われていた。
そんな査定の話こそ、想定してはいなかったが……
アデライドに言われずとも、フランは最初から自身でジーモンを説得するつもりでもあった。
微笑むアデライドが見守る中、フランは第二の矢を放つ。
「実はジーモン、私達、お前の訓練にも協力したいの」
「私めの? 訓練……ですか? 今お聞きした内容では、全く意味がないと思いますが……」
不可解そうに首を傾げるジーモン。
フランも笑顔で頷いた。
「ええ、確かにウチの生徒の指導だけじゃ、お前の言う通りね」
含みのあるフランの言葉を聞き、ジーモンはピンと来たらしい。
「……フランシスカ様、一体、何を考えていらっしゃいますか?」
「ええ、ご心配なく。お前と互角か、それ以上に戦える者達を用意したわ」
「私と互角に? それ以上に戦える相手ですと?」
ジーモンは怪訝そうに尋ねた。
だが、フランの表情は変わらない。
徐々に笑顔が悪戯っぽくなって行く……
「ええ、旦那様が一目置く、彼の従士達が訓練の手合わせをすると言ったら?」
「むう……フランシスカ様……恐縮ですが、その従士の方々の名前をお聞きかせ願いたい」
ジーモンの質問は至極当然だ。
フランが、万事段取りを組んでいると感じたからである。
案の定、フランは打てば響くように、答えを戻す。
「ええ、良いわ。冒険者ギルド所属で、先日ランクAに上がったアーモン、そしてマルガリータよ」
フランから、『対戦相手』の名を聞き、ジーモンは小さく何度か頷いた。
どうやら、アーモンとマルガの名を知っているらしい。
「ふむ……その者達なら、私も噂は聞いています。とてつもない数の魔物討伐の依頼を受け、とんでもないペースで次々とクリア。どんなに強力な相手でもあっさり屠っているとか……」
フランの笑みは、ますます悪戯っぽくなる。
「うん、そうね。それにジーモン、他の凄い噂だって聞いているでしょ?」
「はい……アーモンは拳一発でオーガをバラバラに粉砕したとか、もうひとりのマルガリータは、女ながらに、単身オークの巣へ乗り込み、100匹を瞬殺したとか……最近は……不死者の巣食う廃城を、綺麗さっぱり掃除したとも聞いています」
ジゼルと同様、ジーモンも生来の強者病。
強者を語る時には、つい饒舌になる。
自身でも良く分かっている。
いつもの癖である。
フランは、ジーモンの熱の入った話を聞き、「くすり」と笑う。
「所詮、噂は噂だから……それらは大袈裟かもしれませんけど……」
「…………」
「旦那様が仰っていました……彼等は楽々、ランクSの力を持つ猛者ですって」
「ランクS! ふむむむ……」
ランクS!
それも……あのルウが認めた。
「どう? やる気になった?」
フランに問われ、ジーモンは考え込んだ。
昔の記憶も手繰っていた。
……歴戦の戦士、『黒鋼』と呼ばれた自分だって、今迄に負けた事もある。
昔エドモンと試合をした際は、僅差で敗れたし、ダレンと腕相撲をしたら互角だった。
しかしルウには2戦2敗。
それも圧倒的な完敗。
ルウには完全に負けたとは、心の底から、実力差を認めていたのだ。
そのルウが、従士であるふたりに太鼓判を押している。
ふたりの強さは……『本物』なのだろう。
ジーモンの戦闘欲が否が応でも高まって来る……
そんなジーモンを見て、フランは軽くブレーキをかけた。
「念の為、言っておきますけど、殺し合いは駄目よ。あくまでエキシビションマッチなんだから」
「…………」
「ジーモンは最近訓練不足でしょ? 戦いの勘が鈍ったらいけないわ」
「む、む……」
「もしもお前の腕がなまったら、お母様を護る事に支障が出ると、娘の私は危惧してしまうの」
フランの言葉がとどめとなった。
否、正当な理由付けとと言えるかもしれない。
自分の実力がさび付いては……アデライドの護衛を務められないから。
「わ……わ、分かりました。生徒様の指導の件、お、お受け致します」
ジーモンは……遂に魔法武道部特別コーチを受けると約束した。
しかし、フランは抜け目がない。
「うふふ、じゃあOKね。段取りはこちらで決めるけど、文句はなしよ。私の言う通りにしてね」
「…………」
最後に、服従の言質まで取られた。
完全に負けた……
降参だ……
頭をかく、ジーモンの瞳に映るフランの笑顔……
ジーモンはフランを見て、ふと思う。
お嬢様の、この笑顔……
昔の奥様に……
とても良く似ていらっしゃる……
声に出さず呟いたジーモンは、いつもの無愛想な彼には珍しく、つい微笑んでしまったのである。
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