第1,039話 「後を託して⑨」
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暫し考えた末に……
フランは、ひとつの提案をする事にした。
だが、いきなり具体的な話はしない。
魂から放つ波動で分かるが……
ジゼルとシモーヌのふたりには、まだ良いアイディアが浮かばないらしい。
誰もが……
子供の頃の悲しい記憶を思い出し、感傷的になった後は……
とても人恋しくなるものだ。
フランも、愛するルウが旅へ出て不在だから、尚更である。
ストレートに真面目な話をする前に、目の前のジゼル、シモーヌと、つい「遊びたく」なった。
「ねぇ、シモーヌ。ジーモンはね、ジゼルと似ているのよ」
ブランデルの屋敷で何回も過ごし、学園でもフランと良く話すようになったシモーヌ。
フランが学園でシモーヌを呼ぶときは『さん付け』、
対してシモーヌも当然敬語を使い、校長と呼ぶ。
しかしプライべートで呼ぶ時は、ジゼル同様に妹ノリで、ファーストネームの呼び捨て、シモーヌも愛称に『さん付け』で、『フランさん』と呼ぶのである。
「え? ジゼルがジーモン殿に?」
「ええ、そうなの」
一方のシモーヌも、先程ジゼルをいじった余韻が残っていたのか、すぐにボケをかます。
「ふむふむ……それはジゼルのいかつい顔? それとも逞しい身体ですか? うんうん、どちらも大いに納得ですね」
ジゼルとジーモンの共通項。
いかつい顔に、逞しい身体。
意外にもと言ったら失礼だが、普段は超真面目なシモーヌの、ノリが良い言葉を聞き、フランが面白そうに笑う。
「うふふ、両方よね、私も激しく同意」
「はぁ!? ふたりとも一体何を言っている! フラン姉、悪い冗談はやめてくれ」
遊びは……これくらいで良いだろう。
ふと見ればシモーヌがウインクしている。
これ以上やると、「ジゼルが湯気を出して怒る」というアイコンタクトらしい。
その為、フランは少しジゼルをフォロー。
当然、言う事は真実なのだが、
「うふ、ジゼル、了解! なら真面目な話に戻るわね。敢えていえばジゼルだけでなく、シモーヌにも似てるのよ、ジーモンは」
「私にも?」
矛先が自分へも向き、目を丸くするシモーヌ。
ここでフランは、「ふたりがジーモンに似ている」という理由を説明する。
「ええ、ジーモンはね、強さの求道者なの。自分と同じか、より強い者に挑みたくなる……いわゆる強者病ね」
フランが指摘した強者病。
……反論はない。
何故ならば、ジゼルが自ら認めているから。
「う……強者病か、ならば確かに反論出来ない……」
そしてシモーヌも、
「そ、そうだな。納得します……私とジゼルにとっては強さこそが憧れですから」
と歯切れが悪いながら、認めた。
となれば、話が早い。
ジーモンと自分達を置き換えれば、すぐに未知の家令の性格が理解出来るに違いない。
「強者病なら、ジーモンの攻略は簡単。ウチに仕えるようになって、戦う機会が大幅に減っているから。ルウ先生、つまり旦那様と戦ったのもそのせいなのよ」
「うむ、ジーモン殿の気持ちはよ~く分かる。私も旦那様と思い切り戦いたいっ!」
「わ、私もジェローム様と。い、いえ! だ、だ、旦那様と戦いたい!」
フランの指摘した通り……
ジゼルとシモーヌはやはり強者病である。
ジゼルは勿論、シモーヌも愛する婚約者ジェロームと戦うのが最高の幸せらしい。
目をキラキラさせていた。
可愛い妹分ふたりの初々しさに、フランはくすりと笑い、
「だから、ジーモンより強い人にお願いして、生徒の指導の前か後にエキシビションマッチを組むの。所詮は模擬試合だけど、生徒の実技、メンタル、いろいろな面でプラスになると思う」
フランの『提案』が見えて来た。
ジゼルもシモーヌは当然納得である。
出来れば、自分がその『強者』と、戦いたいみたいな顔付きだ。
「ああ、な、成る程! その条件なら、私でも生徒への指導を文句なくOKする」
「強者との対戦を引き換えに、魔法武道部の特別臨時指導を頼むのですね」
「ええ、その通り。相手には……心当たりがあるからバッチリよ」
ジーモンの対戦相手まで、想定済み。
ジゼルとシモーヌの表情が安堵と喜びに満ちる。
「よし! さすがフラン姉、心強い」
「素晴らしいです!」
だが、ジゼルがさっと手を挙げ、
「フラン姉、アデライド母さんの、否! 理事長の説得は?」
そう……
問題は最後の砦ともいえる、理事長アデライド。
ジーモンがOKでも、主が強硬に反対すれば戦いの許可は下りないだろう。
シモーヌも少し心配そうである。
「フランさん、気になります。もしかして説得の難易度は、ジーモン殿より理事長の方が高いのではないですか?」
しかし、フランは胸を張る。
ジーモン以上に母の気性はバッチリ把握しているから。
実は作戦も、同時に立案済みなのである
「当然! そっちも大丈夫。理事長の説得は私が何とかするから」
良く言えば、全てフランへ一任。
悪く言えば、丸投げ。
さすがにジゼルとシモーヌは、ばつが悪そうである。
「でも……フラン姉に頼ってばかりで、私は心苦しい」
「全くです。フランさん、申し訳ありません」
しかしフランは首を振る。
「いいえ、段取りは任せて。その代わり当日の進行とか実務はお願い。それと私も見学しますから」
現場での進行の委託、そして立ち合いの希望は必須条件として、フランから提示された。
しかし一番難しいのが交渉を含めた段取りなので、ジゼル達も快諾する。
「「了解!」」
妹分の元気な返事を聞き、フランはますますやる気になる。
「後はスケジュールの調整だけね。なるべく早く、場所は魔法女子学園の屋内闘技場が良いわ」
着々とフランの中で進む計画案……
ジゼルとシモーヌは、改めて感謝を籠め、フランへ深々と頭を下げたのであった。
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