第1,038話 「後を託して⑧」
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ミシェルとオルガの切なる願いとは……
何と!
自分達の心に刻まれた恐怖の原因、ドゥメール家の家令、黒鋼の ジーモンと戦う事であった。
それも自分達だけではなく……
魔法武道部全員が、同じように恐怖に囚われない為、ジーモンと対峙するというとんでもないものであった。
魔法武道部の将来の為と……熱く語り続けたミシェルとオルガ。
ふたりはジゼルとシモーヌへ、自分達の想いをぶつけ、散々頼み込むと……
平身低頭で学生寮へと戻って行った。
一方、部室に残されたジゼルとシモーヌは……
何とも言えない微妙な表情をした。
そして顔を見合わせると、お互いに苦笑した。
ミシェル達は、ジーモンの殺気に恐怖を覚えたその日から、ず~っと悩んでいたという。
最初は誰の助けも借りず……自力で何とかしたいと考えたらしい。
でも、どう考えても無理だった……
当然であろう。
ジーモンは……
自分達が通う、魔法女子学園理事長アデライドの雇う家令。
凄腕の元戦士とはいえ、現在は単なる一般人である。
直接知り合いでもなく、会ったのもその日が初めてであった。
そのような者と、さしたる理由もなくいきなり戦う……
単なる生徒のミシェル達には手立てがある筈もない。
じゃあ……
手っ取り早く、間をすっ飛ばして、理事長に直訴する?
とんでもない!
理事長など、雲の上の存在。
そんな畏れ多い行為は、いち生徒の分際で出来るわけがない。
それに、ミシェル達はアデライドが納得出来る正当な理由だって持っていない。
もしも男性と戦うのに、臆するというのなら……
相手はジーモンではなくても良い。
提携している魔法男子学園、または騎士学校の同世代、無理を言っても王都騎士隊の若手男性騎士と戦うという方法が、まだ自然だろうから。
ただ「戦わせて下さい、立派な騎士になる為に」と、ミシェル達が正面からぶつかって懇願したとしても……
冷静なアデライドから、あっさり却下されるのは目に見えていた。
その上、理事長へ直訴するという行為はミシェル達を指導、管理監督する人間、 ジゼル、シモーヌ、カサンドラ、ルウ、そしてシンディの立場を無視し、顔を潰す事にもなる。
それ故、ジゼル達に相談して賛同を得たので、自分達の代わりに交渉を託したという事だ。
「もし成功しなくても構わない」という前提付きで……
ミシェル達が出て行ってから、暫し苦笑していたジゼルではあったが、既に気持ちは決まっていたようだ。
「聞いてくれ、シモーヌ。私にはな、ミシェルの気持ちが良く理解出来る。実際、本気のジーモン殿と戦ったら、果たしてどうなるか分からない」
「うむ、ジゼル……私もだ。相手が修羅場をくぐり抜けた歴戦の勇士だけに恐怖を感じるやもしれぬ……いや、きっとミシェル達のように臆するだろう」
即座にシモーヌも同意した。
親友の賛同を得て、ジゼルはとても嬉しそうである。
そして、何か思うところがあるらしい。
「ならば……出来る限り手を尽くしてみよう。この件は、今後の魔法武道部の為になるような気がする」
「全くもって同感だ。あいにくルウ先生は不在だから、まずはシンディ先生とカサンドラ先生の了解を取ろう。今日はまだ職員室にいらっしゃる筈だぞ」
「おう、シモーヌ、了解だ」
ふたりは頷くと、立ち上がった。
善は急げと、早速行動に移るようだ。
手早く身支度を整えたジゼルとシモーヌは、急ぎ職員室へと向かったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
4時間後……ブランデル邸ルウ書斎。
室内には3人の人物が居た。
帰宅したジゼル、そして同行して今夜はお泊りのシモーヌ。
そして既に帰宅していたフランである。
あれから……
ジゼルとシモーヌは、シンディとカサンドラへ話し、一任して貰った。
但し条件があった。
条件というより、シンディからのアドバイスである。
校長代理で、アデライドの実の娘であるフランと相談し、アデライドを納得させるような理由を考えて、交渉するというものだ。
同じ話を何度もするのは大変で骨が折れる。
しかし可愛い後輩達の為、ひいてはジゼルとシモーヌが青春を奉げた魔法武道部繁栄発展の為である。
労を、惜しんでなどいられない。
ジゼル達から話を聞いたフランは遠い目をした。
ルウとジーモンが二度目に戦った日は、記念すべき日である。
ナディアと一緒に婚約のお披露目をした日だ。
そんな大事な日を、忘れるわけがない。
「成る程……話は概ね分かったわ。生徒の為だし、何とか協力したいわね」
フランが頷き微笑むと、ジゼルとシモーヌはホッとして頭を下げた。
対アデライド&ジーモン説得作戦。
まずは第一関門突破。
強力な味方を得た事になるから。
「フラン姉、ありがとう!」
「フランさん、ありがとうございます」
「いえいえ……確かに、本気の戦闘モードになったジーモンは、凄く怖ろしいかもしれないわね。でも男ならともかく……女子とは理由もなく戦わないと思う」
「確かに! フラン姉の言う通りかもしれない」
「むうう……という事は、理事長がOKしてもジーモン殿が断る可能性もあるのですか……」
フランが幼い頃からジーモンは身近な存在であった。
強面で慇懃だが、普段は穏やかである。
人にもよるが……
殆どの者はジーモンが好漢だとも言う。
そんなジーモンが最も本気になったのは、怖ろしい殺気をまとったのは……
あの大破壊の日であった。
ルウとの戦いの時より、ずっと『本気』だった気がする……
魔法大学防衛の為、アデライドが不在のドゥメール邸を……
12歳の少女だったフラン共々、守ろうとした時に見せた、怖ろしいまでの気迫に満ちた顔付きである。
この日は……かつての婚約者ラインハルトが戦死した日でもある……
最早遠い日の、ほろ苦い思い出を噛み締めながら……
フランはどのように、母と家令を説得しようかと考え始めたのであった。
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