第1,035話 「後を託して⑤」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻が発売中です!
【7月21日】に発売されたばかりの、ほやほやです。
ルウとモーラルの、涼し気な表紙をお見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。
皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。
※新刊、既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さいませ。
8月16日……
ルウがアドリーヌと共に、遥か南のコレット家へ旅立った日……
魔法女子学園では、いつもと変わらず魔法武道部の練習が行われ、そして終了時刻の午後2時が来た。
今日は、監督指導担当の教師が居ない。
バートランドへ向かった副顧問のルウは勿論、顧問のシンディもコーチのカサンドラも別件があって学園に不在である。
その為、練習の仕切りは部長のジゼルと副部長のシモーヌへ任せられていた。
元々、自主性を重んじる魔法武道部。
ルウが副顧問となる前は……
顧問のシンディが不在でも、ジゼルとシモーヌが指導し、問題なく練習をして来た。
なので、全く支障はない。
今日もタフさを要求される基礎訓練、そしてクラン形式の練習試合を行った。
ジゼルとて、体力は減っている筈である。
しかしというか、ルウに鍛えられているジゼルは全く堪えていない。
その証拠に、疲れを全く感じさせない、ジゼルの凛とした声が屋内闘技場に響く。
「では、本日の練習を終了する!」
「「「「「「「「「「お疲れ様でしたっ!!!」」」」」」」」」」
負けじと元気に、部員達の声も響いた。
そして今度はシモーヌが、
「では解散、また明日」
『練習解放のセリフ』を聞き、部員達は部室へ向かって行く。
シャワーで汗を流してから、ロッカールームで着替える為である。
その後は、寮へ戻る者、帰宅する者、様々だ。
今日も練習はきつかったが……
上手く行き、充実した時間を過ごす事が出来た。
全員、結構な疲れを感じながらも、とても明るい表情である。
しかし……ミシェルとオルガだけは動かない。
ふたりは、ひどく真剣な表情である。
緊張しているのがひと目で分かった。
その視線はジゼルとシモーヌへ、強く注がれていた。
当然、ジゼルとシモーヌは訝しがる。
「どうした?」
「ミシェル、オルガ、私達に何か用事か?」
ジゼル達から尋ねられ、ミシェルとオルガは大きく息を吐いた。
そして、
「はい、おふたりにご相談です」
「話を聞いて頂けませんか? お忙しいところ申し訳ありません」
やはり……話したいのは深刻なものらしい。
ジゼルが優しく微笑み、問う。
「今すぐここでは話せない……そんな感じだな?」
「はい!」
「そうです」
即座に返すミシェルとオルガ。
身を乗り出し、今にも喰い付きそうな雰囲気を醸し出していた。
ジゼルは頷き、
「……分かった。シモーヌ、お前は都合、大丈夫か?」
「ああ、OKだ」
大事な後輩の悩みを聞く。
幸い今日は特に用事がない。
婚約者ジェロームとのデートも数日後だ。
当然、シモーヌも頷き、すぐ同意した。
悩みを相談する場所は……部室が良いだろう。
ジゼルの意見に同意した4人は、暫しその場で時間を潰す。
いかにも、練習後の雑談をしている風を装いながら。
やがて……
先に部室に向かった部員達はシャワーと着替えを終え、屋内闘技場を後にして行く。
残ったジゼル達へ不思議そうな視線を向けるが、幸い何も言わなかった。
これで……ミシェル達の話が聞ける。
ジゼルは再び四方を見て、自分達以外屋内闘技場に居ない事を確かめると……
他の3人へ合図し、部室へと歩き出したのある。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
話が終わったら、すぐ帰れるようにと、ジゼル達4人はシャワーを浴び、汗を流した。
そして私服に着替えたのである。
シモーヌが人数分の飲み物を用意し、全員椅子に座った。
これでミシェル達の話を聞く態勢は整った。
時間はまだ午後3時だが、話しが長引けば、あっという間に日が暮れてしまう。
「では、話してくれ」
「おお、存分に聞こう」
ジゼルとシモーヌが促すが……
「…………」
「…………」
対面に座ったミシェルとオルガは俯いたまま、黙っていた。
こんな時……
以前のジゼル達ならば、叱咤し、無理やり話すよう強制していた筈である。
しかし、今のふたりは違っていた。
「だいぶ込み入った話のようだ。宜しい、話す気になったら、言ってくれ」
と、ジゼルが言えば、シモーヌも、
「そうだな……待とう」
と言い、両名とも、静かに目を閉じてしまったのである。
だが、このように先輩が譲歩しても、
「…………」
「…………」
ミシェル達は相変わらず無言であった。
暫し、沈黙が部室を支配した。
だが、そんな静けさに耐えられなくなったのは……
ミシェルでもあった。
「も、申し訳ありません。お話します……」
頭を下げて言い、続いてオルガも……
「こちらからお願いしておいて……申し訳ありません」
「大丈夫だ、よほどの事だろう? 気持ちが落ち着いてから、じっくり話してみると良い」
「そうだぞ、無理をするな」
先輩達の思い遣りに、ミシェルととオルガの目には涙が光っていた。
優しく背中を押して貰ったという、嬉し涙であろう。
ミシェルとオルガは顔を見合わせ、頷く。
そして口を開いたのが、ミシェルである。
どうやら彼女が話をするらしい。
「ではお話します。あの時、シモーヌ先輩はいらっしゃいませんでしたが……」
「あの時?」
何か、以前あった時の事を、ミシェルは話すらしい。
でも、その場にシモーヌは不在だった。
「はい! ルウ先生とドゥメール伯爵家の家令が、試合をした時の事です」
「成る程! ミシェル、……ルウ先生が勝ったあの時か?」
「は、はい!」
ミシェルの言葉を聞き、ジゼルの記憶が甦って来る。
けして忘れはしない。
その日はジゼルにとって、人生が決定したともいえる運命の日であったから。
少し遠い目をしたジゼルは、懐かしそうに思いを馳せたのであった。
いつもお読み頂きありがとうございます!
東導 号の別作品もお願い致します。
本日8月3日も、
『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』
https://ncode.syosetu.com/n4411ea/
『子供達と旅に出よう編』を更新しております。
こちらもぜひお楽しみ下さい!
応援宜しくお願い致します!




