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第1,034話 「後を託して④」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻が発売中です!

【7月21日】に発売されたばかりの、ほやほやです。


ルウとモーラルの、涼し気な表紙をお見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。


皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※新刊、既刊が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さいませ。

 時間は、少しさかのぼる……

 夏期休暇も8月に入って半ばを過ぎた、ある日の事だ。


 ヴァレンタイン王立魔法女子学園2年C組生徒、ミシェル・エストレとオルガ・フラヴィニーは、いきつけのカフェの片隅で、暗い顔をして向き合っていた。

 幸い店内は空いており、周囲に他の客は居ない。

 誰にも言えない内緒の悩みを、ふたりきりで相談するには、最適といえるシチュエーションである。


 ミシェルとオルガは悩んでいた。

 そもそも……

 多感な17歳のふたりは、公私に渡り悩みは数多い。


 まず公では……

 魔法を学ぶ学生ゆえ、一人前の魔法使いになる為のプレッシャーが重く重くのしかかる。

 毎回出される大量の課題に四苦八苦し、魔法習得に追われる日々……

 自分の才能の限界を感じたり、思うように行かない事も多く、溜まるストレスも相当だ。


 そして私、つまりプライベートでは……

 まだ男性と付き合った事のないふたりは……

 「私達、素敵な彼氏が欲しいの!」

 年頃の女子なら持つ、そんな悩みも当然あった。


 しかし……

 女子にとっては、極めて重要な恋の悩みでさえ……

 今、直面している悩みを考えれば、後回しとなってしまう。

 ミシェルとオルガの悩みは、自分のアイデンティティに関わると言って、過言ではないから……


 春先に生まれた、とんでもなく大きな悩みを心の中に溜め、ふたりはず~っと悩んでいた……

 誰にも言えないまま……


「はぁ……ミシェル、私……今のままじゃ駄目」


 と、オルガがため息をつけば、


「ええ……私もそう……自分自身がどうしようもなくイヤ……本当に許せなくなるわ」


 と顔をしかめた。


 深い悩みを持ちながら、更にふたりには気になっていた事があった。

 

 部員なら誰もが気にする、魔法武道部の次期部長、副部長について、である。

 最近は部員だけではなく、クラスメート達から聞かれる時もあった。


 ジゼル・カルパンティエ、シモーヌ・カンテという傑出した実力者の跡を継ぐのは一体誰なのだろうかと……


 夏期休暇が始まるくらいから、部員達の口に上がらぬ日はなかった。

 これまで……

 いろいろな話を聞いた限り、大が付く本命は……不在である。

 無論、指名権のあるジゼルとシモーヌは一切何も言わないが……


 そもそも……

 過去において、魔法武道部の部長は基本年功序列であった。

 その慣習を一気に覆したのが、ジゼルである。


 ジゼルは1年生ですぐ副部長になると、間を置かず当時の部長から後継者に指名された。

 抜きんでた実力とリーダーシップ、そして美しい容姿、カリスマ性……

 どこにもけちをつけようがない完璧なジゼルに、部員達は誰も反対せず、顧問のシンディも了解し、異例の1年生部長就任が実現したのだ。


 シモーヌも同様である。

 もしジゼルが居なければ……

 問題なく、1年生で副部長に就任していたくらいの逸材だったのだ。


 閑話休題。


 ジゼル達3年生は、夏季休暇前に、もう将来の進路を公言していた。


 ある日……

 部室で、ジゼルの話を聞き、シモーヌ以外の部員全員が吃驚した。

 

 ジゼルの父と兄は著名な騎士である。

 騎士の一族に生まれたジゼルも当然王都騎士になるという、彼女達の予想を、大幅に裏切ったからだ。


 何と!

 ジゼルは、教師になるという。

 「魔法大学に進学して、教職課程をとり、母校魔法女子学園の教師になる!」と嬉しそうに宣言したのだ。


 片やシモーヌは、予想通り順当に? 王都騎士隊への入隊を宣言した。

 もう数回、騎士隊へ体験入隊も済ませ、面接もして、高い評価を得ているという。


 婚約者ジェローム・カルパンティエの父レオナールが、騎士隊を統括する将軍という有利さを差し引いても、実力で入隊間違いなしと言われている。


 学生生活は長いようで、短い……

 ミシェル達も、来年の今頃はもう進路を決め、就職活動をしているであろう。


 ちなみに、ふたりの未来への希望は変わっていない。

 ルウとフランへ進路相談をした際も、はっきり告げた。

 シモーヌ同様、王都騎士隊所属の……誰もが認める、誉れ高き女性魔法騎士になりたいと。

 

 かつて鉄姫と称された、魔法武道部顧問シンディ・ライアンのように。

 シンディの名声は、幼い時からミシェルとオルガの憧れだったのである。


 だが……

 今、直面している悩みを解決しない限り、絶対王都騎士にはなれない……

 ふたりはそうも考えていた。


 ここで先ほどの、部長後継問題も絡んで来る。

 もしもこの状況のまま、ミシェルとオルガのどちらかが、部長もしくは副部長に指名されたら……

 いっそ退部まで……考えてしまうかも。

 

 責任感の強くなったミシェルとオルガは、自分達の悩みが解消しない限り……

 魔法武道部で後輩の指導すら出来ないと考えていたのである。


 ルウに出会ってから、ミシェル達も著しく変わって来ていた。

 

 自らの成長は勿論、オレリー、ジョゼフィーヌ、エステル、ルイーズ、アンナ……

 次々に前向きとなる、クラスメート達の姿を見て影響された事もある。

 今迄の、言われるがまま、流されるだけの自分達を変えようともがいていた。


 それ故、騎士になる事を諦めたりせず、投げやりにならず……

 悩みの解決方法もず~っと、考えている。

 但し、そう簡単には行きそうもない。


 しかしこのまま悩んでいても絶対に解決しないのも確かだ。

 遂に……

 意を決したように、ミシェルが言う。


「ねぇ……例の事、部長と副部長に相談しよう」


 親友の提案を聞いたオルガも、覚悟を決めたらしい……


「ええ、通らないかもしれないけど、駄目で元々だもの……今のままじゃ、何の解決にもならないわ」


 ミシェルとオルガは顔を見合わせると、大きく頷いたのである。

いつもお読み頂きありがとうございます!


東導 号の別作品もお願い致します。

本日30日も、


『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


『子供達と旅に出よう編』を更新しております。

こちらもぜひお楽しみ下さい!


応援宜しくお願い致します!

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