第1,033話 「後を託して③」
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思いがけない、シモーヌの突然の指摘にジゼルは慌てる。
今迄、泰然自若としていたから尚更だ。
「な、何!? 脚色!?」
「うむ、都合の良い脚色だ。そもそもお前の話では……初めてルウ先生と出会った際、お互い何か感じるものがあって、戦おうという話になり……」
「あ、ああ! そうだ!」
「そして、狩場の森で試合をした結果、先生の桁違いな実力とさりげない優しさに対し、お前にほのかな好意が芽生え……」
「…………」
「遂には好きだと、お前から告白して、ルウ先生は、ああ、分かった、じゃあ嫁にしようという、シンプル且つストレートなやりとりだと聞いているが」
シモーヌの話を聞き、ジゼルは無理やり首を動かすような不自然さで頷いた。
「そ、そ、その通り!」
「その通りだと? 馬鹿言え。私と同じで不器用なお前の恋愛が、そんなにあっさりしたものではないだろう? もっとベタだった筈だぞ」
「わ、私の恋愛が! ベ、ベタ!?」
「ああ、ベタに違いない。……そもそもジゼル。お前とルウ先生が出会った時は、ミシェルとオルガの不始末を叱った際だと、私は記憶しているが……」
「うむ、そ、そうだ」
そう!
愛するルウとの出会いは、ミシェルとオルガの尾行事件がきっかけ……
ルウとフランの買い物を尾行したふたりを叱責、厳しく指導したのが発端だった……
ジゼルは、改めて自分の記憶を手繰っているようだ。
その慌てぶりは、何とかボロを出さぬように必死になっているように見える。
シモーヌは苦笑し、更に追及する。
「その時、ある人から聞いた話だと……お前はルウ先生を激しく一方的に罵倒したと聞いたが……それも私が言ったように、貴族と平民という身分の差を持ち出して」
「い、いや! そ、そ、それは誤りだ! じ、事実と違う!」
相変わらず、大慌てのジゼル。
何故か、額からは汗が滝のように流れていた。
但し、初対面の際、身分の事でルウを罵倒したのは、シモーヌも同じである。
この部分で、あまり話が大きくなってもまずい。
「ふむ……まあ、良い。だがジゼル。ルウ先生へ告白した時も、お前が言った事は、事実と違うんじゃないのか?」
「い、いや! シモーヌ! お前に言った通りだ!」
「むう……ジゼル、さっきからお前の態度……その慌てぶり、凄く怪しいぞ」
「な、な、何を言う! あ、あ、あ、怪しくないっ!」
「おいおい、盛大に噛んでいるではないか?」
「くううううっ!」
「まあ私が思うに……多分、何とか愛を告白したお前が、感極まって大泣きしてだな、ルウ先生の名を大声で叫んで、彼へ、がばっと抱きついたとか?」
シモーヌの指摘が、遂にピンポイントで、「どかん!」と、当たってしまった。
まるで目の前に居て、ジゼルの告白を見ていたかの如く。
こうなるとジゼルは、逃げ場がない。
羞恥心と焦りで、大混乱に陥ってしまった。
「ええええ!? そ、そ、そ、そんな事は、な、な、ないっ! だ! 断じてない~~っ!」
「はは! 何だ、そのとんでもない噛み方と慌てぶりは? やはり、図星のようだな」
まるで止めをさすような、シモーヌの物言い。
もうジゼルは、ルウへ助けを求めるしかない。
「あう! 旦那様ぁ! 信じていたのにぃ! う、嘘だろう? な、な、何故シモーヌへ教えたのだぁ!」
しかし……
シモーヌは首を振った。
「仕方がないな」という表情である。
「何言ってる。誤解するな、私はルウ先生から何も聞いていない。単なるあてずっぽうさ」
これは……以前にナディアも使った手である。
他の事はともかく、ジゼルはルウの事に関しては、とんでもなく脇が甘くなってしまうのだ。
当然、本音をさらすのは相手が他人ではなく、『親友』であるからなのだが……
少し落ち着きを取り戻したジゼルは……恐る恐る聞いてみる。
「シ、シモーヌ。そ、その! あ、あてずっぽうって?」
「はったりだよ、はったり。お前とは何年の付き合いだと思ってる? 見栄を張り隠しても丸わかりだ」
戦いはジゼルの……完敗である。
もう反撃の余地はない。
「う、ううう……」
辛そうに涙ぐむジゼルを見て、シモーヌは可哀そうになってしまった。
ジゼルとは、幼い子供の頃からの付き合いだ。
ずっとお互いに、助け合ってやって来た。
人生の、節目節目がそうだった……
今後も……
けして変わらないだろう。
シモーヌは優しく微笑むと、ジゼルへ本当の事を告げる事にした。
「安心しろ、ジゼル。実はな、ルウ先生に何度お前とのなれそめを聞いても、私には絶対に真実を教えてくれなかった」
「へ?」
「大丈夫! ルウ先生は、夫婦の秘密を他人へ教えたりしない。お前を本当に大事にしているぞ」
やはりルウは……ジゼルの告白等を、軽々しく口外していなかった。
疑った自分は愚かだった……
ジゼルの全身が、歓びに満ち溢れる。
「あう~!」
「良かったな、ジゼル。ルウ先生はお前にとって本当に最高の伴侶だ」
シモーヌが、親友が改めて認めてくれた。
そして祝福してくれた。
ジゼルの掴んだ大きな幸せを。
こうなるとジゼルの立ち直りは早い。
「あは! そうだ、旦那様は最高なんだ。しかし、シモーヌ!」
「何だ?」
「私はな、お前だからこそ、こんなに心配したのだ」
「何? 私だから?」
「そうだ! お前は単に親友というだけじゃない! 兄上の妻で大事な家族さ。それ故旦那様が、信頼するお前だからこそ、内緒で教えたと思ったのだぞ」
「あ、ああ、そうか! ジゼル、分かった! 私が悪かった!」
今度は、謝罪するシモーヌの心に歓びが満ちる。
お前は他人じゃない……家族だから……
大事な秘密も共有出来る。
すなわち、自分に対する厚い信頼の証たる言葉だ……
そのひと言で、シモーヌは目の前に居る親友を一生大事にしよう、絶対に!
強く、強く、そう思ったのであった。
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