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第1,033話 「後を託して③」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻が発売中です!

【7月21日】に発売されたばかりの、ほやほやです。


ルウとモーラルの、涼し気な表紙をお見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。


皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さいませ。

 思いがけない、シモーヌの突然の指摘にジゼルは慌てる。

 今迄、泰然自若としていたから尚更だ。


「な、何!? 脚色!?」


「うむ、都合の良い脚色だ。そもそもお前の話では……初めてルウ先生と出会った際、お互い何か感じるものがあって、戦おうという話になり……」


「あ、ああ! そうだ!」


「そして、狩場の森で試合をした結果、先生の桁違いな実力とさりげない優しさに対し、お前にほのかな好意が芽生え……」


「…………」


「遂には好きだと、お前から告白して、ルウ先生は、ああ、分かった、じゃあ嫁にしようという、シンプル且つストレートなやりとりだと聞いているが」


 シモーヌの話を聞き、ジゼルは無理やり首を動かすような不自然さで頷いた。


「そ、そ、その通り!」


「その通りだと? 馬鹿言え。私と同じで不器用なお前の恋愛が、そんなにあっさりしたものではないだろう? もっとベタだった筈だぞ」


「わ、私の恋愛が! ベ、ベタ!?」


「ああ、ベタに違いない。……そもそもジゼル。お前とルウ先生が出会った時は、ミシェルとオルガの不始末を叱った際だと、私は記憶しているが……」


「うむ、そ、そうだ」


 そう!

 愛するルウとの出会いは、ミシェルとオルガの尾行事件がきっかけ……

 ルウとフランの買い物を尾行したふたりを叱責、厳しく指導したのが発端だった……


 ジゼルは、改めて自分の記憶を手繰っているようだ。

 その慌てぶりは、何とかボロを出さぬように必死になっているように見える。

 シモーヌは苦笑し、更に追及する。


「その時、ある人から聞いた話だと……お前はルウ先生を激しく一方的に罵倒したと聞いたが……それも私が言ったように、貴族と平民という身分の差を持ち出して」


「い、いや! そ、そ、それは誤りだ! じ、事実と違う!」


 相変わらず、大慌てのジゼル。

 何故か、額からは汗が滝のように流れていた。


 但し、初対面の際、身分の事でルウを罵倒したのは、シモーヌも同じである。

 この部分で、あまり話が大きくなってもまずい。

 

「ふむ……まあ、良い。だがジゼル。ルウ先生へ告白した時も、お前が言った事は、事実と違うんじゃないのか?」


「い、いや! シモーヌ! お前に言った通りだ!」


「むう……ジゼル、さっきからお前の態度……その慌てぶり、凄く怪しいぞ」


「な、な、何を言う! あ、あ、あ、怪しくないっ!」


「おいおい、盛大に噛んでいるではないか?」


「くううううっ!」


「まあ私が思うに……多分、何とか愛を告白したお前が、感極まって大泣きしてだな、ルウ先生の名を大声で叫んで、彼へ、がばっと抱きついたとか?」


 シモーヌの指摘が、遂にピンポイントで、「どかん!」と、当たってしまった。

 まるで目の前に居て、ジゼルの告白を見ていたかの如く。


 こうなるとジゼルは、逃げ場がない。

 羞恥心と焦りで、大混乱に陥ってしまった。


「ええええ!? そ、そ、そ、そんな事は、な、な、ないっ! だ! 断じてない~~っ!」


「はは! 何だ、そのとんでもない噛み方と慌てぶりは? やはり、図星のようだな」


 まるで止めをさすような、シモーヌの物言い。

 もうジゼルは、ルウへ助けを求めるしかない。


「あう! 旦那様ぁ! 信じていたのにぃ! う、嘘だろう? な、な、何故シモーヌへ教えたのだぁ!」


 しかし……

 シモーヌは首を振った。

 「仕方がないな」という表情である。


「何言ってる。誤解するな、私はルウ先生から何も聞いていない。単なるあてずっぽうさ」


 これは……以前にナディアも使った手である。

 他の事はともかく、ジゼルはルウの事に関しては、とんでもなく脇が甘くなってしまうのだ。

 当然、本音をさらすのは相手が他人ではなく、『親友』であるからなのだが……


 少し落ち着きを取り戻したジゼルは……恐る恐る聞いてみる。


「シ、シモーヌ。そ、その! あ、あてずっぽうって?」


「はったりだよ、はったり。お前とは何年の付き合いだと思ってる? 見栄を張り隠しても丸わかりだ」


 戦いはジゼルの……完敗である。

 もう反撃の余地はない。


「う、ううう……」


 辛そうに涙ぐむジゼルを見て、シモーヌは可哀そうになってしまった。


 ジゼルとは、幼い子供の頃からの付き合いだ。

 ずっとお互いに、助け合ってやって来た。

 人生の、節目節目がそうだった……

 今後も……

 けして変わらないだろう。


 シモーヌは優しく微笑むと、ジゼルへ本当の事を告げる事にした。


「安心しろ、ジゼル。実はな、ルウ先生に何度お前とのなれそめを聞いても、私には絶対に真実を教えてくれなかった」


「へ?」


「大丈夫! ルウ先生は、夫婦の秘密を他人へ教えたりしない。お前を本当に大事にしているぞ」


 やはりルウは……ジゼルの告白等を、軽々しく口外していなかった。

 疑った自分は愚かだった……

 

 ジゼルの全身が、歓びに満ち溢れる。


「あう~!」


「良かったな、ジゼル。ルウ先生はお前にとって本当に最高の伴侶だ」


 シモーヌが、親友が改めて認めてくれた。

 そして祝福してくれた。

 ジゼルの掴んだ大きな幸せを。


 こうなるとジゼルの立ち直りは早い。


「あは! そうだ、旦那様は最高なんだ。しかし、シモーヌ!」


「何だ?」


「私はな、お前だからこそ、こんなに心配したのだ」


「何? 私だから?」


「そうだ! お前は単に親友というだけじゃない! 兄上の妻で大事な家族さ。それ故旦那様が、信頼するお前だからこそ、内緒で教えたと思ったのだぞ」


「あ、ああ、そうか! ジゼル、分かった! 私が悪かった!」


 今度は、謝罪するシモーヌの心に歓びが満ちる。

 お前は他人じゃない……家族だから……

 大事な秘密も共有出来る。

 すなわち、自分に対する厚い信頼のあかしたる言葉だ……

 

 そのひと言で、シモーヌは目の前に居る親友を一生大事にしよう、絶対に! 

 強く、強く、そう思ったのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!


東導 号の別作品もお願い致します。

本日27日も、


『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


『子供達と旅に出よう編』を更新しております。

こちらもぜひお楽しみ下さい!


応援宜しくお願い致します!

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