第1,032話 「後を託して②」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻が発売中です!
【7月21日】に発売されたばかりの、ほやほやです。
ルウが敵を見据え、モーラルが舞う……
涼し気な表紙をお見かけになったら、ぜひお手に取って下さい。
皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。
※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さいませ。
オープンキャンパスにおける説明会の際、来年度の入部希望者が多数出た。
こうなれば、もう大丈夫。
魔法武道部は廃部の危機どころか……
この魔法女子学園で一番、勢いがある『部』として復活するだろう。
否、復活どころではない。
面々と受け継がれて来た伝統と名声をより高め、栄えさせて行くに違いない。
ルウと知り合う前は……
自分が引退した後の事を考え、不安で一睡も出来なかったくらい悩んだジゼルだが……
最早、そのような不眠症になる事もない。
それどころか、すっきりとした雰囲気で満面の笑みを浮かべている。
「シモーヌ、ミシェルもオルガも、私達の良い後釜になるだろうな」
「ああ、大丈夫だ。彼女達なら安心して後を任せられる」
今だからこそ、このように言うジゼル達だが……
最初から、ミシェル達を後継にと決めていたわけではない。
実はミシェル達からの、ある提案が決め手となり、ジゼルとシモーヌは今回の決定を下したのだ。
何故なら、1年生の頃のミシェルとオルガは、魔法も武道もそこそこ……
そして、とても大人しく、主体性がなかった。
ジゼル達先輩に、言われるがままだった。
技量はともかく、リーダーとして他者を引っ張るなど想像もつかなかったのに。
しかしミシェル達は変わった。
2年生になってからは劇的に……
ルウがこの学園へ赴任してからは……
でも変わったのは、けしてミシェル達だけではない。
ジゼルもシモーヌも、180度というくらいに大きく変わったのだ……
何かを思い出すように、ジゼルが遠い目をする。
「シモーヌ。旦那様が……ルウ先生が来て、私達はとても変わったな」
「本当だ、ジゼル! 私は、ルウ先生へ足を向けて眠れない……何か、今の状態は夢を見ているようだ」
シモーヌはきっぱりと言い放ち、こちらも遠い目をした。
どうやら、過去の記憶を手繰っているようだ。
無理もない。
何かにつけてシモーヌは、ルウに助けて貰った。
学生生活から始まり、将来を共にする伴侶ジェロームの事まで……
ルウは、いろいろ面倒を見てくれたから……
「ふふふふふ……」
と、その時。
いきなりジゼルが笑った。
何やら、思い出し笑いをしたようだ。
「な、何だ?」
驚いたシモーヌが聞くと……
ジゼルは悪戯っぽく意味ありげに、笑う。
気になったシモーヌが見つめると……
「いやな、シモーヌ。初めて旦那様が、ウチの部へ来た時の事を思い出したのさ」
「初めて? ルウ先生が来た時?」
「ああ……あの時シモーヌは、従来の練習方法を変えるという旦那様に対して、猛反発。暴走し、学生寮へ逃亡しただろう? 挙句の果てに退部届けまで書いたではないか? ははははは」
※第99話「衝突」参照。
自分の中だけでは、懐かしい思い出と、言えなくもないが……
改めて他人から指摘されたくない、さらけ出してなど欲しくない、絶対に隠したい過去もある。
そう!
人はそれを『黒歴史』と呼ぶ。
ジゼルが言ったのは、まさにシモーヌの『黒歴史』そのものなのだ。
「あ~っ!!! ジゼルぅ! い、今更! そ、それを言うのかぁ? 試合なら、だ、大が付く反則負けじゃないかぁ!」
しかしシモーヌの怒りも、ジゼルはどこ吹く風という感じで、華麗にスルー。
「ふふふ、それだけではない。ウチの風呂に入った時に、頑なに服を脱がなかった事とか、モーラルに叱られた事とか……思い出すと可笑しくて、到底我慢出来ない」
※第443話「身体を張った教育」参照。
「ううう~っ、ジゼルっ! 親友の忌まわしい過去をむやみに掘り起こすなど、けして許されないのだぞっ」
「ははは、まあそうだな」
ジゼルは単に、シモーヌの『黒歴史』を思い起こし、懐かしんでいるのだろう。
しかしこのような場合……やられっ放しとはならない。
親友とは……お互いに、本音をさらけ出し合う間柄である。
相手の黒歴史を、熟知している事が多い。
ジゼルとシモーヌも、例外ではなかった。
当然、シモーヌの反撃が始まる。
「ジゼル、お前! そうやって、余裕をかましているが……人の事が言えるのか?」
黒歴史なら……シモーヌだけではなくジゼルにも。
否、ジゼルの方がたくさんあるのだ……
ジゼルは、常に成績トップの秀才である。
頭脳だけではない。
当然、魔法にも長けている。
剣技の達人で、とてつもなく強い。
誰もが憧れる美貌を持ち、スタイルも抜群だ。
但し、物言いが居丈高。
誇り高いところが、冷たく感じられて、何となく近寄り難い雰囲気もある。
だが、素のジゼルは義侠心に富んでいて、面倒見が良い。
優しくて不器用で、熱い性格。
その上、凄いおっちょこちょいなのだ。
シモーヌの問いかけに対し、ジゼルは全く心当たりがないという感じである。
「おい、シモーヌ、人の事が言えるとは何だ?」
「ふん! 私には分かるさ。以前お前から聞いた、ルウ先生との出会い、その後のコイバナは怪しい。どうせ、だいぶ脚色されているのに決まってる」
突然ともいえるシモーヌの指摘に、ジゼルはとても慌ててしまったのである。
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