第1,022話 「叶わぬ恋に落ちて⑭」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻の発売日が、
7月21日予定となりました!
各書店様で、予約開始されているようです!
書籍版をまだお読みではない方は、新刊が出るまで既刊第1巻~3巻を宜しくお願い致します。
皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。
※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
『くう! 生意気な! それにさっきから何だ、その口の利き方は! ぶ、無礼者が! 神である私に向かって!』
不届き者! と、女神はとうとう切れた。
……ルウの、ぞんざいな言葉遣いに対して。
金切り声に近い大声で一喝する。
だが、ルウは動じず「ふっ」と笑う。
『無礼? そんな事をお前が言う資格はない。さしたる理由もなく、多くの弱き者達を傷つけ、貶め、殺しまくったお前のような女にはな』
『な、な、何!?』
怖れ敬うべき神である自分に対し、全く臆さない人間が居る
これまで経験した事がない、衝撃の事実に……女神は戸惑った。
とても不可解だという波動が、部屋に満ちる。
一方ルウは、女神を更にやり込めて行く。
『何故、移り気な夫と正面切って向き合わない? 貞淑なお前が、怒りの刃を向けるべき相手は大神だ』
『だ、黙れ! 人間如きに! な、何が分かるっ! 私の気持ちなど!』
夫の浮気相手には、徹底して苛烈な処罰をする女神自身は……
反面、どんなに魅力的な他の男から口説かれても、心を絶対に移さない、貞淑な女神として知られていた。
本当は……夫に問い質したい。
大神よ……
貴方が、一番愛しているのは誰だと?
妻である私だけを見て欲しいと……
女神の本音は、その筈である。
ルウに言われ、酷く狼狽したのは、図星だからだ。
ルウは頷き、言う。
『ああ、お前の言いたい事は分かるさ。残念ながら大神と自分は、神格が違う、だからこちらからは文句など申し入れられない……とでも言いたいのだろう? 所詮、神と人の論理は違うのだと?』
『そ、そうだっ!』
『ならば! ……人の子のように、醜い嫉妬などするな! 偉大な大神の妻らしく、泰然自若とすれば良い』
『言わせておけば! 神をも恐れぬ不届き者! 死ぬが良いっ!』
女神の残滓は、怖ろしい怨念を送って来た。
精神に働きかける特殊な攻撃である。
しかし!
ルウ達には効かなかった。
エレナを助けた時のように、魔法を使って、反射させもしない。
結局、怨念は、全てルウへと吸収されてしまう。
またも女神は驚く。
『な、何故、効かぬ! 単なる人の子が!? あ! ああああ! そ、その翼!』
『翼!?』
『え? また?』
ルウに翼!?
仰天する女神の声を聞き、エレナは目を丸くして驚き、リゼッタは再びルウの背を凝視した。
しかし、ニンフ達には何も見えない。
どうやら、『翼』は女神にしか見えていないらしい。
一方、ルウの『翼』を目の当たりにした、女神は怯え、叫ぶ。
張り裂けるような声で、絶叫する。
『そ、その! じゅ、純白の翼っ! お、お、お前は! ま、まるで!』
『…………』
『し、し、使徒だ! 創世神の使徒だぁぁぁ!』
しかし、ルウの口調は変わらない。
淡々と告げて行く。
『違う、俺は使徒ではない、人の子だ』
『ひ、ひ、人の子だと! う、嘘だぁ!』
絶叫する女神をスルー。
ルウは、話を結末へ導いて行く。
『……以前、お前の違う残滓を冥界へ送った。お前も同じように……送ってやろう』
『な!?』
『俺に、お前の未来は分からぬ』
『は?』
『だが……砕けた魂が永い時を経て、冥界でひとつとなり、罪を償い、復活すれば……お前は、再び大神と巡り合い、結ばれるやもしれぬ』
『な、何を! お前はぁ! 何を言っている!』
未来永劫、大神から愛されたい。
そして永遠に愛したい!
自分の願望をずばり言われ、女神は動揺した。
大神を、最も愛しているのは、誰よりも女神なのだ。
その深き愛故に、夫へ向けられない忸怩たる思いを、弱き者へ容赦なく振るってしまう。
ルウは、冷酷な女神の心の内も、しっかり理解していたのである。
『但し、約束ではない。単なる俺の……願いさ』
『ね、願い!?』
『そうさ! 冥界でひたすら、真摯に罪を償え……その時こそ、お前は夫へはっきり物を言える女になれる……そうなれるよう、祈ってやろう』
いつのまにか、ルウの魔力が極限まで高まっていた。
神速の呼吸法により、最高位クラスの魔法が、すぐにでも放てるように……
『ビナー、ゲブラー! 大いなる創世神よ、我は知る! 東方に涼風、南方に猛炎、西方に清流、そして北方に沃土! 貴方が示す創世の理を、4人の大天使に託し、我が光の剣として授けよ! 光の剣とはすなわち破邪なり! 破邪とはすなわち浄化なり!』
言霊の詠唱が進むにつれて、大量の魔力波が放出され、ルウの身体が輝きを増して行く。
『我が波動に宿れ! 浄化!』
ぼしゅっ!
ルウが言霊を詠唱し終わった瞬間、女神の魂の残滓は殆ど消え失せてしまった。
木霊谷の時に使ったのと同じ魔法だ。
更にルウは、残った残滓を冥界へ、完全に送る為の魔法を発動する。
『ビナー、ゲブラー、我は知る! 大いなる創世神よ! 冥界の監視者たる忠実な御使いに理を託し、現世に彷徨える魂の欠片に、新たなる旅の祝福を! 彼等に行くべき途を示したまえ!』
詠唱が終わり、更なる気合で決めの言霊が放たれる。
『昇天!』
ルウの鋭い声が、響き渡った瞬間!
『あああああああああ……………』
断末魔の長い悲鳴と共に……
神殿に巣食う、女神の魂の残滓は、以前と同じく……
遥か遠く……冥界へと、旅立ったのであった……
いつもお読み頂きありがとうございます!
東導の別作品もお願いします。
☆『隠れ勇者と押しかけエルフ』
※最強の隠れ勇者と、呪われたダークエルフの姫の『恋と冒険の物語』です。
https://ncode.syosetu.com/n2876dv/
本日6月25日朝に『更新』予定です。
何卒宜しくお願い致します。




