第1,021話 「叶わぬ恋に落ちて⑬」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻の発売日が、
7月21日予定となりました!
各書店様で、予約開始されているようです!
書籍版をまだお読みではない方は、新刊が出るまで既刊第1巻~3巻を宜しくお願い致します。
皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。
※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
高貴なる4界王のひとり、火界王パイモン。
彼の凄まじい魔法の助けを借り、ヒュドラを倒したルウ達。
……いよいよ、最後の大広間へと向かう。
相変わらずルウは、一見、まるで無防備のように見える。
顔付きも仕草も飄々として、全然緊張感が感じられないのだ。
『ルウ様、まだ安全ではありませんよ、女神の魂が残っています』
と、リゼッタが言えば、エレナも、
『そ、そうですよ。油断は出来ません、ルウ様』
と、ルウへ注意を促す。
『ああ、ふたりとも、ありがとう。充分気をつけるよ』
ニンフふたりの注意に対し、ルウも笑顔で答え、3人は最後の大広間への通路を進んで行く。
最後の大広間には……
姿を蛇に変えられたラミアが、幽閉されている筈だ。
ちなみに3人は今、普通に歩いていた。
これまではリゼッタ、エレナがそれぞれルウの腕に座っていたが、降りているのだ。
これに関してだけ、ふたりは……とても残念そうな表情である。
通路が安全になった事は、先ほど同様、精霊が事前に告げてくれていた。
更にルウも魔法で調べ、裏付けを取っている。
行く手にはもう、えぐい魔法の仕掛けや危険な罠はなかったのである。
何故なら、無敵と豪語したヒュドラに、女神は重き信頼を置いていた。
不死の怪物を倒すなど、誰もが絶対に不可能だと、彼女は確信していたに違いない。
敢えて、無防備にしたのは、その証だろう。
ゆったりと通路を歩いて来たルウ達の目の前に……
いきなり「ぱあっ」と空間が広がった。
先ほど、ヒュドラが居た大空間に比べれば多少狭いが、結構な広さである。
遂に来た。
ここが、女神が造り上げた異界の神殿最奥、『神の座』だ。
しかし、そこには居る筈の神など居ない。
呪いの魔法で強化された、頑丈な鎖により両手を繋がれた……
半身が蛇と化した、ひとりの異形が居るだけであった。
3人が異形を見る。
……異形は女だ。
大広間へ来た、ルウ達に気が付いてはいるようだが、うつろな目を向けていた。
この異形こそが、ラミアなのである。
南の大神に愛されたという、人間の女の、哀れな末路であった……
と、その時。
ルウ達へ一斉に、世の中の全てといっても良い、様々な『悪意』が襲い掛かった。
あの木霊谷の波動と全く同じものが。
ニンフふたりの、大いなる懸念が的中したのだ。
嫌悪! 憎悪! 嫉妬! 焦燥! 羨望!
そして殺意!
ルウ達に対して、叩きつけるような凄まじい怨念の魔力波の数々。
神殿に残った、女神の魂の残滓である。
木霊谷の時同様、ルウ達を侵入者=敵とみなし、攻撃を仕掛けて来る。
遥か昔、女神の本体はとうに滅びている……
異界にある、この神殿に存在するのは、意思を持たない、魂の残滓に過ぎない。
その為、囚われた者を解放しようとするルウに対して、全く同じ反応をしたのである。
ちなみに、この残滓、木霊谷の残滓とは意思の疎通もない。
全く別個の存在であり、ルウの事は知らない……
『ルウ様! やはり女神が出ましたっ!』
『気を付けて下さいっ!』
リゼッタとエレナが警告を発した。
『了解!』
ルウは頷くと、ふたりの前に「ずいっ」と出て、大きく両手を広げた。
一方、女神の残滓はすぐルウ達を認識したらしく、探るような波動を放って来る。
『むうう、そこに居るふたりはニンフだな? 男! 貴様は……人の子か?』
『そうだ!』
ルウが肯定し、大声で返すと、女神は少し驚いたらしい。
『むう! やはり人間か? それにしてもおかしい! そのニンフには、スフィンクスの呪いを掛けた筈……何故、元の姿に戻っておる? 誰が解呪したのだ!?』
このセリフも、エレナを助けた時と全く一緒だ。
当然ルウは、即座に言葉を返す。
『俺さ! お前のくだらない呪いなど、すぐ解いた』
『むむむ、途中にヒュドラが居た筈! ヒュドラはどうした?』
ヒュドラはと問われ、ルウは首を振る。
『ああ、もう居ない。塵にした』
塵!?
無敵と信じた、忠実な眷属の呆気ない死……
女神は驚き、問う。
『塵!? ば、馬鹿な! あ奴は不死の筈、な、何故だぁ!』
『いや、不死じゃない。間違いなくやっつけた。……まあ、俺がやったわけじゃないけどな』
確かにルウの言う通りだ。
実際にヒュドラを倒したのは、パイモンであり、ルウではない。
『お前じゃない? ……では誰だ?』
『俺の従士さ、ヒュドラを殺ったのは。火属性の最高位魔法でな』
『火? あ奴に火は効かぬぞ! 私がしっかり、防御の魔法を掛けた』
このまま、女神と話しても、ず~っと平行線になりそうだ。
なので、ルウは首を横に振る。
『ははは、これ以上言い合っても、お前には理解出来ないだろう。俺も説明が面倒だ』
『な!?』
『だから! 今、お前の前に、俺達が居るのが証拠さ? だろう?』
ルウはそう言うと、面白そうに笑って片眼をつぶったのであった。
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