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第1,019話 「叶わぬ恋に落ちて⑪」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻の発売日が、

7月21日予定となりました!

各書店様で、予約開始されているようです!


書籍版をまだお読みではない方は、新刊が出るまで第1巻~3巻を宜しくお願い致します。

皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

 世界の根幹を支える、高貴なる4界王のうち……

 火の精霊サラマンダーを統括する、火界王パイモン……

 

 南の神の眷属たる南の国の妖精(ニンフ)とて、エレナでも上級精霊パイモンの素性くらいは知っていた。


 火界王パイモンは、西の方角を治める事から、西界王とも呼ばれる上級精霊だ。

 しかし、最初から純粋な火の精霊だったわけではない。

 元々は創世神の使徒であり、天界で主天使ドミニオンズとしての役目に就いていた。


 そのつながりからパイモンは、当時天使長であったルシフェルとは、ずっと師弟関係にあった。

 ただ流されるだけであった人の子へ、自ら思考する為に必要な『知識』を与えよう……

 という、ルシフェルの革新的な考えを、パイモンは理解し、傾倒までしていた。

 その為、ルシフェルが創世神へ上申した際、迷わず行動を共にしたのだ。


 結果……ルシフェルが反逆の徒として天界を追われた際……

 創世神から命じられ、討伐に赴いた新たな天使長の軍勢とも戦った。

 何故かルシフェルが戦わず、自ら地の底へ堕ちた時も、自ら運命を共にしたのである。

 

 その火界王が……目の前に居る。


 エレナは、自分が助けられた時の事も思い出した。


 あの時……

 ルウは水の精霊ウンディーネを統括する水界王アリトン、そして風の精霊シルフを統括する空気界王オリエンスを召喚した。

 気難しい筈であるふたりの界王は、人間のルウへ進んで助力した。

 もしかして?

 全く同じ事が起こる?


 そんなエレナの予想は、まさに的中する事となる……


『パイモン、待っていたぞ』


 ルウの言葉を聞き、パイモンは「にやっ」と笑う。

 「我が意を得たり!」という表情だ。


 他の3界王は既に、ルウの為に直接尽力していた。

 

 だから、ここでどうして現れたとか? 

 何用?とか、くどくど言うのは愚の骨頂、

「ただ力を示せ」という主たる意思を、ルウが見せてくれれば良いと思っていたからである。


『御意!』


 最初は物静かな口調で話していたパイモンは一転、旧き書に記載され、伝えられるような大声で返事をした。


 そしてパイモンは、リゼッタを見て言う。


『そこな、南の国の妖精(ニンフ)!』


『は、は、はいっ!』


 いきなり話し掛けられたリゼッタは、少し怯えながらも、気丈に返事を戻した。

 リゼッタもエレナ同様、パイモンの素性は知っていた。


 そしてパイモンの真の性格も。

 普段はいたって理知的だが……

 出会ったり、召喚した者が、自分の意にそぐわぬ愚か者と見れば、全く容赦がない事も……


 しかし、今はルウが一緒に居る。

 同胞のエレナも落ち着いている。

 だから、怯えの感情は「すうっ」と潮が引くように消えて行った……


『守護者に命じられたお前は、愚かな女神が豪語するのを聞いたであろう? 火の魔法など、この蛇には一切通じぬとな』


『は、はいっ!』


『では……それが誠かどうか、しかと、見届けるが良い。そして心にとどめておけ。真の炎とは、いかなるものかと!』


 パイモンは、口元を僅かにほころばせると、手を高く掲げた

た。


 ぴんっ!

 鋭く指が鳴らされた瞬間!


 パイモンの全身は何と!

 紅蓮の炎に包まれたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ヒュドラは、今迄にはないくらい猛り狂っていた。

 並々ならぬ、殺気を感じたからだ。

 

 ごはあああっ!


 真ん中の首が大きな口を開け、咆哮する。

 すると、他の首達も続いて、


 かあああっ!

 かあああっ!

 かあああっ!


 ルウ達を認めたと時と同様、大きく開いたヒュドラの口からは、まるで霧のような、黒色をした液体を吐き散らかされる。


 いきなり現れ、炎に包まれた火界王パイモンが、自分に対して攻撃の意思を持つ事を認識したのだ。


 その9本の首の視線は、全て空中へ浮かんだ、『真っ赤に燃え盛る男』へ向けられている。

 それ以上の殺気で返そうと!


 そのパイモンは……

 毒が充満する中、全身を炎に包まれながら、相変わらず笑っていた。

 不死の怪物ヒュドラなど、まるで眼中にない。

 ルウの目の前で、自分の力を示せるのが、面白くてたまらないといった表情だ。


『悪魔であれ、人であれ、妖精であれ、何者であっても……理不尽な仕打ちを受ければ、創世神にさえも意見し、精一杯抗う』


 パイモンは感じる。

 ルシフェルの革新は、間違いなく進んでいると……


『たとえ圧倒的な力に蹂躙されようとも、正しき己を貫き通す事は……まさに真理だ』


 パイモンは「ふっ」と笑い、言霊の詠唱を開始した。

 大きな声で、朗々と、滑舌良く。


『我が魂より出でし、燃え盛るエシュよ! 更に猛きシャルヘベットとなれ!』


 まるで、呼び掛けるような言霊に反応し、

 ごう! とパイモンを包む炎が、数十mも立ち昇った。

 巨大な竜の如く。


『聖なる猛きシャルヘベットよ! 我に仇なす敵、全てを焼き尽くせ! 大いなる復活テヒヤーの為に!』


 ごおはあああああっ!!!


 パイモンと一体化した竜が、凄まじい声で咆哮した。


破壊(ヘレス、ハシュマダー)!』


 魔力が最高に高まったのであろう。

 パイモンの口から、決めの言霊が放たれた。


 すると、一瞬にして!

 ヒュドラもろとも!

 神殿の大広間、四方へ紅蓮の猛炎が吹き荒ぶ。


 リゼッタは見た。

 確かに、目の当たりにした。


 このヒュドラに、火の魔法など効かぬ……


 あの女神の言葉など、所詮、大言壮語に過ぎなかったと。


 何故ならばヒュドラは、パイモンの猛炎に焼かれ、断末魔の叫びさえあげられなかったのだから……

 女神の怨念により生まれた、不死である筈の巨大な大蛇は、あっという間に真っ黒な塵と化していたのである。

いつもお読み頂きありがとうございます!

東導の別作品もお願いします。


☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


『人生の分岐点編』連載開始!


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


※殺伐とした都会に疲れ、幼い頃に離れた故郷へ帰ろうとした青年ケンは謎の死を遂げる。15歳の少年として未知の異世界へ転生したケンは、出会った美しい少女達と辺境の田舎村で心の拠り所を探し続ける。


※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う、

ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。


本日6月15日朝に『更新』予定です。

何卒宜しくお願い致します。

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